健康・医療・環境分野

日本の平均寿命は世界でも上位に入り、日本は世界の誰もが経験したことのない高齢化社会を迎えようとしています。一方で、世界では小さな子ども達が地域紛争、飢餓などの厳しい状況下で健康を害されているのが現状です。世界中どの地域でも等しく適切な保健衛生の維持あるいは医薬治療の提供を可能とするためには未だ国内、国外を問わず大きな課題があります。このような状況のなか、最先端の生命科学、空間情報科学が異なる分野と融合することで新たな課題解決技術が生み出されています。

越阪部 奈緒美 教授(生命科学科)

食品成分によるアンチエイジング

地球に誕生して以来、狩猟や農耕によって食糧を調達してきた人類は少ない食物で活動ができるように進化してきました。食生活が豊かになり交通機関の発達した現在、私達は豊富なエネルギーに適応ができず恒常性を維持することが難しくなっています。
その結果、先進国においてはメタボリックシンドローム・ロコモーティブシンドローム・認知症・うつといった疾患が増加の一途をたどっています。私達の研究室では、食品に含まれる成分、特にポリフェノールに着目し、これらの物質が恒常性を維持しアンチエイジングに寄与すること、また前に挙げた疾患を予防・改善することを様々な手法を用いて解明しています。
また得られた研究成果を利用して、新たな予防・改善法を構築することを目標に、企業と連携した具現化にも取り組んでいます。食品成分の機能性開発を健康寿命の延伸・医療費の削減といった社会的問題の解決に役立てることが私達の最終的な目標です。
恒常性の維持が期待される食品群恒常性の維持が期待される食品群
未来の女性研究者へのメッセージ
周囲の雑音に踊らされることなく、一歩一歩着実に足を進めることが将来の貴方を作ると思います。
越阪部 奈緒美 教授越阪部 奈緒美 教授

磐田 朋子 教授(環境システム学科)

高効率かつ低炭素な未来のエネルギーシステムを設計する

【未来のエネルギーシステム】

持続可能なエネルギーシステムを構築するためには、エネルギーの供給側と需要側の双方の努力が不可欠です。供給側は、化石燃料から再生可能エネルギーにシフトさせる必要がありますが、再生可能エネルギーは出力が不安定なため、導入に向けた技術的・社会的課題が山積しています。また、需要側においても省エネ努力やエネルギー供給状況に応じた需要制御が求められています。

【機器によるエネルギー需要制御】

再生可能エネルギーが大量に導入される社会を見据えて、蓄電池やヒートポンプ給湯器などを活用したエネルギー需要制御システムの設計に取り組んでいます。数理計画手法に基づくエネルギー需要制御シミュレーションモデルの開発や、実証実験によるモデルの検証を行っています。

【行動変容によるエネルギー需要制御】

頭ではわかっていても、行動には移さないという経験はありませんか?社会心理学や人間行動学の観点から、エネルギー需要制御に資する行動変容を促すために有効な手段を検討しています。
住民向けに住宅のエネルギーモニタリング結果を報告住民向けに住宅のエネルギーモニタリング結果を報告
未来の女性研究者へのメッセージ
仕事もライフイベントも、マルチタスクで頑張れるのが女性のいいところだと思います。全てを完璧にこなす必要なんてありません。ただ、自分のやりたいことを思う存分やりましょう!
磐田 朋子 准教授磐田 朋子 教授

中村 奈緒子 准教授(生命科学科)

材料を使って臓器や組織の再生を導く

医療現場では様々な材料が使われています。皆さんはどんなものを思い浮かべますでしょうか?医療用の材料と一言で言っても、材料自体も構造や硬さ、表面の滑らかさなど様々ですし、その用途も様々で注射器や手術器具から、人工心臓など多くの場面で用いられています。本研究室では、バイオマテリアル、組織工学、再生医療をキーワードに、材料と細胞や生体との関係性について明らかにしたいと考えています。例えば、ある材料を身体の中に移植したとき、身体の中の細胞はどのような反応を示すでしょうか。ある材料は敵とみなされ攻撃されて排除されますが、ある材料は身体の中に留まることができます。このような材料に対する細胞の認識の違いに注目して研究を進めています。また、基礎的な研究から得られた知見をもとに、身体の中や外で細胞の機能を制御できるような材料を用いて、臓器や組織の再生を目指します。
材料を使って臓器や組織の再生を導く
未来の女性研究者へのメッセージ
何事にも目標を持って誠実に取り組みましょう。一生懸命やればやるほど研究は楽しくなります。
中村 奈緒子 助教中村 奈緒子准教授

袖野 玲子 教授(環境システム学科)

環境問題から社会の幸せを考える

【持続可能な社会を目指した社会システムの変革】

「宇宙船地球号」といわれるように、地球の環境容量には限りがあり、私たちは今のような資源大量消費生活を永遠に続けることはできません。深刻な環境問題を前に、資源・エネルギー、経済、まちづくり、地方創生、社会保障など、社会の仕組みを変革し、将来世代に健全な環境を引き継げるよう、持続可能な社会づくりが求められます。

【誰一人とりのこされない社会(No one will be left behind)】

環境問題は、様々な要因による複合的な問題であると同時に、多様な関係者の利害が絡み合うことから、単純な解はなく、粘り強く、分野横断的なアプローチが求められます。例えば、気候変動問題は、生物多様性など他の環境問題と関連するだけでなく、資源・エネルギー政策、技術革新等の経済の課題、水や食料不足、異常気象による被害など社会的な課題とも密接に関ります。2015年には、国連で持続可能な開発目標(SDGs)が採択されました。環境問題は、特に社会的弱者に大きな影響を与えることから、多様な関係者を考慮した包括的な政策を検討しています。
国連環境計画(UNEP)のワークショップにて水俣条約とSDGsについて発表国連環境計画(UNEP)のワークショップにて水俣条約とSDGsについて発表。
未来の女性研究者へのメッセージ
育児真っ最中の私にとって、ワークライフバランスは大切です。バリバリ研究するもよし、少しペースを落としてもよし、自分のライフステージに合わせて研究スタイルを柔軟に変えながらも、研究を通じて社会に貢献できるのが研究者の醍醐味だと思います。
袖野 玲子 教授袖野 玲子 教授

深野 真子 准教授(機械工学科)

ヒトの運動を科学する

スポーツを行うと身体に様々な変化が生じます。その変化が好ましいものである場合は、体力向上や生活習慣病予防に効果があります。一方で、生理的限界を超える負荷が身体にかかると、強い疲労やケガがおこる要因ともなります。そういったことから、身体の動きや活動による身体機能の応答を分析し、健康増進や外傷・障害の発生メカニズム解明・予防法について研究しています。
医用画像を用いた関節運動の解析の例医用画像を用いた関節運動の解析の例
未来の女性研究者へのメッセージ
よく学び・よく遊び、自由な発想で研究に取り組もう。
深野 真子 准教授深野 真子 准教授