2024年度事業計画

2024年度 学校法人芝浦工業大学 事業計画

学校法人 芝浦工業大学
理事長 鈴見 健夫

はじめに

建学の精神『社会に学び、社会に貢献する技術者の育成』
  教育の理念『世界に学び、世界に貢献するグローバル理工系人材の育成』

~日本・アジアを代表する私立理工系大学の雄をめざす~


 学校法人芝浦工業大学(以下、本法人)は、将来にわたり我が国の持続的発展を担う理工系人材の育成を責務として、設置校を代表する芝浦工業大学を中心に学生・生徒のための学校経営を堅持し、建学の精神に基づく教育研究活動の展開に努めます。具体的には長期ビジョンであるCentennial SIT Actionに基づき、創立100周年を迎える2027年には『我が国の理工系私学としてトップの社会的評価を得る』という本法人の長期目標の実現をめざし、教職員一丸となり、全力で取り組む所存です。
 創立100周年を見据えた2024年度の重点施策テーマは、改革路線の継続による組織運営体制の見直し・強化、学校法人の発展を持続可能とする盤石な財政基盤の確立、各学部における改組・定員増等の実現に向けた具体的な実施の継続、教育研究改革及び学生支援、大宮キャンパス整備事業の遂行、更に駅伝プロジェクトに代表される創立100周年記念事業の推進などであり、これらの実現に向け経営資源の戦略的な選択と集中を進めます。
 我が国の大学進学率において、近年は性別によるギャップが是正された反面、理学・工学分野における女子の進学率は依然として低水準に留まっています。芝浦工業大学の学部生の女子比率は漸く19.5%まで上昇しましたが、創立100周年に向けての成長戦略の一環として、女子学生比率30%以上を目標に掲げております。2024年度は引き続き女子学生拡充強化に向けた入試広報の更なる強化を図ります。
 日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラルの実現」を宣言しています。この地球規模の課題に芝浦工業大学は共同研究や公開講座、中高生への探求授業を実施しその実現に取り組んでまいりましたが、引き続き全学的な取組を実施します。特に大宮キャンパスでは脱炭素先行地域としてグリーンキャンパスの実現に向けた取組を行っており、更にはグリーントランスフォーメーション(GX)にも注目し、学生生徒の環境に対する教育研究のきっかけをつくる取り組みをすすめます。
 将来ビジョン検討委員会では、本法人全体の将来計画を実現するために、理事会、教学執行部、事務職員、外部有識者を交えて将来ビジョンと新たな収入増計画を検討しております。2024年度は学部1万人構想・検討分科会にて議論検討を進め、工業大学としての教育研究内容や学生規模も含めてナンバーワンを目指します。
理事会は、2024年度もこれまでに続き改革路線を継続し、創立100周年に向け新しい価値創造のための経営イノベーションに取り組みます。

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1. 改革路線の継続

 本法人のガバナンス改革は、私立学校法に基づき、理事会を最終的な権限と責任を担う最高意思決定機関であることを明確化し、理事長が本法人の代表となり、その業務を総理することを規定しています。 また設置学校の中心である芝浦工業大学の学長はリーダーシップの確立を目的に学長候補者選考委員会が学長候補者を選考し、理事会において決定しています。理事及び評議員の選任についてもその職責を全うできる候補者を選考委員会で選考し、理事会において決定しています。2023年度中には2025年4月施行の私立学校法改正を受け、理事長、学長、理事などの役員や各学校執行責任者の任期を3年から4年に改め、より長期的な視野に立って施策方針から実施、更に改善までを含めた戦略を策定することが可能になります。選出される理事長、理事会と学長の連帯感のある体制により、大学改革を迅速かつ適切に展開する環境が整っているため、2024年度も引き続き教職学協働でスピーディな改革を実現してまいります。この私立学校法改正は「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」を基本とし、理事・理事会、監事及び評議員・評議員会の権限分配を整理し、「建設的な協働と相互けん制」を確立することが目的です。3年後に控えた創立100周年に向け、本法人の更なるガバナンス改革を実現してまいります。
更には本学教職員のエンゲージメント向上につながるよう、人事評価・給与制度改革の推進、DX化による業務削減改革など働き方改革を更に進めてまいります。

2. 100周年記念事業

 2027年に100周年を迎える芝浦工業大学にて実施する100周年事業を見据えた法人と大学の教職学協動による各種企画立案、運営準備を実施することを目的に設置した芝浦工業大学創立100周年準備委員会では、「100周年WEBサイト」を通じて100周年に向けた各種イベント企画を卒業生・保護者・学生等、広く社会に発信していきます。100周年事業として設置された「有元史郎MEMORIAL CORNER」では在学生と卒業生、地域住民を繋ぐ役目を果たし、芝浦工業大学の過去から現在、そして未来を共有いたします。芝浦工業大学熱海セミナーハウスでは学生生徒、教職員、卒業生の健康増進はもとより集える場を提供することにより一体感を高めます。寄付金戦略は2021年度より開始した返礼品寄付制度は多くの方に利用いただいており、卒業生企業や関わりのある企業の協力を得て引き続き新たな返礼品商品の拡充を図ってまいります。また2023年度より開始した豊洲キャンパス交流棟大講義室の座席芳名プレート寄付をはじめ、多くの方に寄付をしていただけるような100周年に向けた仕組みを作ってまいります。

3. 盤石な財政基盤の確立

 学校法人が持続的かつ健全性をもって発展するためには盤石な財政基盤の維持・向上を図る
ことが必要です。芝浦工業大学大宮キャンパス整備や柏中学高等学校校舎の施設整備計画、システム理工学部、デザイン工学部の定員増や大学院進学率の強化を前提とした中長期財務シミュレーションの策定を行い、財政状況を可視化します。2024年度も経常収支差額比率と事業活動収支差額比率(旧帰属収支差額比率)の10%以上の達成と積立率100%を目指した財政運営を行い、戦略事業に対する積極的な支援と将来の投資に備えた内部留保の充実の両立に努めます。2024年度も目標とする財務指標を目指し、計画的な財政運営に取り組みます。

4. 教育研究改革

 芝浦工業大学は『社会に学び、社会に貢献する技術者の育成』を建学の精神として設立され、有為な人材を社会に送り出すことで高い評価を得てきました。その社会は今、グローバル化に加えてデジタル化の波にのまれ、大きな変貌を遂げつつあります。これに伴い世界の産業構造も大きく変化していますが、日本の大学における教育プログラムは、昭和の時代から引き継がれた学問体系から脱却できていません。

 芝浦工業大学は、建学の精神に則り、社会のニーズに応える人材を輩出すべく教育改革に取り組んでおり、その成果は文部科学省支援事業の1つである「私立大学等改革総合支援事業」に11年連続での4タイプ採択にあらわれています。少子化に伴う大学進学者の減少は我が国の成長を阻む一因となりますが、日本は戦後も少数精鋭で飛躍的な発展を遂げており、芝浦工業大学で行われている教育研究が我が国の発展に寄与していることを鑑み、これからも大学改革を継続し、大学教育の質の向上と保証を確立してまいります。大学改革の試みとして工学部では2024年4月から学科制を廃止し複数の専門分野を融合し、イノベーションを生み出す課程制の導入がスタートします。デザイン工学部では情報・ロボティクス系を発展させて、ICTやデータサイエンスなど情報技術をベースに社会課題に取り組むソーシャルデザイン系(仮称)への転換を進めます。更にシステム理工学部では社会で要請される情報系を中心に、理工系全分野をカバーすべく、生命科学、スポーツ健康科学、医工学系、建築・環境系の分野を拡充した課程・コースを設置し、学生定員を増員する計画を具体化します。これにより2023年5月1日現在、7,806人である学生数を、一般的に大規模大学と言われている1万人に増員することを目指します。

 2020年年初から始まったコロナ禍は、遠隔(オンライン)授業という強力な教育手段を手にすることができました。芝浦工業大学においては、キャンパスをもつ大学の意義をよく考えつつ、教育におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、アフターコロナにおける新しい教育スタイルを提案するとともに、それを実践します。

2014年9月に文部科学省より「スーパーグローバル大学創成支援」(SGU)に選定されて以来、グローバル化を推進してきた結果、学生の英語力や留学経験者数など大きな伸びを見せています。しかし、技術者として国際社会に活躍するためには、その能力以外に幅広い専門知識や柔軟な思考力が求められます。これらの能力は大学院での研究活動などで更に培われます。芝浦工業大学の大学院進学率は増加傾向にあり、目標進学率60%に向けた国際社会での活動を意識付けすることを通じて、大学院への進学を推奨するとともに、長期留学を支援します。

大学の卒業研究および大学院における修士課程の研究を通じて学生は実践的スキルを身につけます。研究は教育の手段と言われるほどに大学にとって重要なミッションです。「世界に貢献するグローバル理工系人材育成」という社会的使命を果たすため、人材育成に関しても、本学の強みである国際連携の枠組みを最大限に活用し、企業人・日本人学生が留学生と共に研究する場を意識的・組織的に提供します。学生は「知の活用」を実践する場で先端研究を通してグローバルに活躍する人材に成長していきます。研究を推進するための機器・設備の整備はもちろん、論文執筆・投稿支援や研究資金獲得支援に加えて事務補佐等の支援を充実させます。

5. グローバル・DE&I推進

 芝浦工業大学が私立理工系大学として唯一採択された「スーパーグローバル大学創成支援」(SGU)に対する国からの助成金は2023年度をもって終了しましたが、引き続き学生が世界に通用するグローバル理工系人材としてのスキルを身につけられるよう、コロナ禍前と同水準の海外研修プログラムへの参加を目標にし、芝浦工業大学のグローバル化を更に加速させます。合わせてオンライン、デジタルトランスフォーメーションなども活用して学びの機会を提供してまいります。そのほかにも芝浦工業大学の学生が参加できる国際交流プログラムの拡充を図ります。その一方で、正規留学生の受け入れ拡大にも注力するために、東南アジアの協定大学をターゲットに2024年4月から専任職員をタイへ駐在させ、長期留学生の確保を目指します。その支援事業として「日本留学促進のための海外ネットワーク機能強化事業」への申請を行いました。スーパーグローバル大学創成支援事業で培った経験を活かし、グローバル化政策にかかわる競争的資金の獲得にもチャレンジします。今後もスーパーグローバル大学創成支援事業採択校として、これまでの成果を広く国内を中心とする高等教育機関に還元するべく取り組んでまいります。
DE&I推進では、多様性、公正性、包摂性(Diversity,Equity&Inclusion:DE&I)の保障を軸とする意識啓発や制度整備を促進することを宣言しました。
1.【SDGs宣言】ジェンダーや人種、国籍、思想、信条、障がい等に関わらず、多様な個性が輝き、誰もが安⼼して学び、働ける教育・研究・職場環境を確立します。
2.【多様性の保障】知の創造の根源である多様性をすべての学生・教職員が尊重し互いに受容するための啓発活動を実施し、意識改革を行います。
3.【公正性の保障】すべての学生・教職員が個々の能⼒を最⼤限発揮できる公正性が保障された差別のない環境を提供し、誰もが活き活きと活躍できる大学をめざします。
4.【包摂性の保障】多様性と公正性の保障をすべての学⽣・教職員が歓迎し、高い受容意識をもつ包摂性に富んだ組織づくりを推進します。
この4つの宣言を全教職員の共通認識とし、これからのDE&Iを進めます。
また従前からの目標である性別構成の多様化に向けて創立100周年である2027年度には女性教員の割合・女子学生の割合を30%以上、職員の管理職に占める女性の割合を50%にすることを目標に掲げています。女性教員は人事課や国際部と協働し、海外校との連携強化による女性教員確保や女子学生の大学院進学率向上による女性研究者数の底上げも視野に入れており、そのためには女子学生比率の向上が不可欠であり、入試部との連携を図りながら女子高校生をターゲットにした取り組みを行います。女性職員の管理職登用については、ワークライフバランス確保のための支援策や企業との連携による女性キャリア支援ワークショップ等の実施を企画します。今後も本学における性別構成の多様化の実現を目指した取り組みを推進します。

6. 産学官連携の推進

 芝浦工業大学では、建学の精神『社会に学び、社会に貢献する技術者の育成』に基づき、共同研究、受託研究、技術指導、及び技術移転など、社会実装に向けた産業界との連携に積極的に対応しています。特に、中小企業に対しても技術指導から始め、共同研究へ展開する等、積極的な共同研究の取り組みを進めており、首都圏の大学の中にあって産学共同研究における中小企業比率が比較的高いことが特徴で、「寄り添い型の共同研究」を展開しています。本学の産学官民連携活動は教員の対外連携活動に加え、研究コーディネーターの配置によって産業界からのニーズをきめ細かく把握する体制となっています。昨年度導入した共同研究講座の設置や戦略的産学連携経費の仕組みを通じて、ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレータ(URA)が教員と共同研究先の連携に積極的にコミットし、組織的な共同研究への取り組みと研究の大型化を推進して参ります。また、研究の成果である知財の権利化を進めるとともに、社会実装、新規事業創出に貢献するための知財の活用を促進して参ります。
ベイエリア・オープンイノベーションセンター(BOiCE)は、2023年度、東京圏における世界を変える大学スタートアップを育てるプラットフォーム、Greater Tokyo Innovation Ecosystem(GTIE)(主幹3機関:東京大学、東京工業大学、早稲田大学)の共同機関に昇格しました。GTIE 事業への参画により、各種起業支援プログラムの提供が可能となった他、2024年度からはGAPファンドによる支援も開始する予定です。また、中小機構のインキュベーションマネージャーをBOiCEに配するなど、専門家支援も拡充し、大学発スタートアップ創出のための起業支援体制を強化してまいります。
また芝浦ビジネスモデルコンペティション(SBMC)は2024年度で9年目を迎えますが、2023年度からは中高生を対象としたJunior版も実施し、多くの参加を得ました。双方の取り組みを行うことで、BOiCE には大学生、中高生の新たな交流も生まれています。今後も様々な人や企業との交流を通じて、産学共創の発展拡大を目指すとともに、起業に関心を持つ学生をISS(イノベーション・スチューデント・スタッフ)として雇用し学生の参画も積極的に促し、学生のアントレプレナーシップの醸成にも寄与して参ります。

7. 戦略的広報活動

 創立100周年(2027年)に向け、大学の長期ビジョン『Centennial SIT Action』の認知度を更に拡大するために、各施策における活動や成果を広報し、芝浦工業大学のブランド力の確固たる定着を進めてまいります。高校生向けに、XやYou Tubeチャンネル、Tik Tokやインスタグラムなどのコンテンツを活用した広報に力を入れます。また女子学生の多い工科系大学、有名企業400社実就職率ランキングなど受験生にインパクトのある情報を提供します。工学部課程制の狙いを伝えるプロモーションやシステム理工学部改組の内容など、芝浦工業大学の目指す教育・研究、組織改革に関する情報をスピーディかつ正確に社会に届けるためのデジタルメディア化も進めます。このほかにSDGs推進活動の発信、女子学生拡充のためのPR、研究成果の積極的な発信、駅伝プロジェクトをはじめとする学生活動広報にも注力してまいります。

8. DX化の推進

 芝浦工業大学におけるDX化の推進として、「日本の理工学教育を先導する」「教育と教学マネジメントを支える教育環境」「ICTシステムを整備する」を目標とし、CBTや動画を活用したコンテンツを授業で利用可能な環境整備と新しい教育を試行可能なICTシステムを整備します。また、教職員のITリテラシーの向上とDX推進人材の育成のために、情報セキュリティ基本規程の実質化や生成AIの活用に向けてのFDSD研修などを実施します。
学内事務システムでは、Microsoft365テナント統合が終えたことに伴い、DXツールの利用環境は整い、学生・教職員間でTeamsやSharePointを利用してのコミュニケーションが円滑となり、教職学協働作業に貢献することができました。今後はNotionとの連携を視野に入れつつ、積極的に活用します。また学生のPC必携化に伴い、豊洲、大宮PC教室を刷新し、CBT対応を可能とする整備を行います。更に工学部課程制に対応した分野横断型の学びに対する新たな教務システムを開発します。

9. 学生募集・女子学生の拡充

 創立100周年に向けた成長戦略の一環として、女子学生比率30%以上を目標とし、奨学金制度の整備や女子校との連携協定、女子高校生対象のインターンシップやイベントを実施しています。その成果として、2023年度には女子入学者比率が20%を超えました。また全国型大学の復活を目指し地方出身学生比率25%以上を新たな目標に掲げ、奨学金の創設や各県を代表する新進高校や工業高校などの特別指定校との連携を通じて強化を図っています。
このような本学独自の努力を継続しても今後の学生数確保が厳しさを増すのは、我が国の出生率の急速な低下です。2022年の出生数は77万人、更に2023年の出生数は75.8万人と発表されました。文部科学省「学校基本調査(2022年度版(R4)」から、2022年3月の高等学校(全日制・定時制)卒業生は99万人で、うち大学進学者は約59.5%の約58.9万人となっています。少子化が進み、18年後には、7割が大学に進学したとしても現状の進学者数には達しません。このような状況が目前に迫っており、大学間競争は益々激化することが予想できます。入学者確保は本学にとって最大の課題の一つです。年度内入試や国外から幅広い入学者を確保することも重要となります。
以上から、法人広報と一体となって各学部の特色や教育内容が正しくかつ魅力的に伝える新たな発信法を積極的に取り入れ、高校生およびその保護者、または国外の高校生等へ効果的な広報を展開することで、志願者確保を目指します。

10. キャリア教育

 芝浦工業大学では、入学時から将来を見据えた支援体制として、学生一人ひとりの仕事観を醸成し、学びの指針となるように支援しています。入学時から将来に向けた目標設定と学生生活の充実を目指し、各学年に合わせたキャリア指導を行っています。就職活動支援では、専門スタッフが個別進路指導を行う、エントリーシートの添削や面接練習でのアドバイスなど本番に向けた実践的な支援を行っております。また就職支援システムを活用した求人情報、企業セミナーや卒業生の就職活動報告書など、就職に関するあらゆるサービス情報を提供し、ミスマッチのない就職活動を後押ししています。内定後には資格取得の推奨や社会人マナーの修得などをフォローするなど、入学から卒業まで一貫した支援に力を入れています。個々の学生に寄り添い、真に「納得できる就職」の実現に重きを置きつつ、学生の性格・特性を把握し本人の希望も踏まえたきめ細やかなキャリア教育を地道に実践しています。これにより、就職率はもとより就職先の質の高さも具備する大学として「就職に強い大学」と社会からも評価されています。本学では、就職内定が得られさえすればよいという安易な姿勢を排し、将来に向け継続的に取り組みたいことを明確に意識させ、より高い目標を設定のうえ志望企業にチャレンジする強い気持ちが持てるよう、就職担当教員はもとより、研究室で日々直接学生指導に当たる教員とも連携協力しながら支援していきます。
このような取り組みが実り、有名企業400社への実就職率は上昇しており、今後も高い水準の目標を立て学生支援を行ってまいります。また留学生の就職支援も強化することにより世界に通じる技術者の輩出を目指します。
時宜に応じた学生目線に立った支援・指導を要請できるよう、芝浦工業大学校友会、同後援会との更なる協力体制の維持強化にも注力します。

11. 学生支援の充実強化

 芝浦工業大学はキャンパスごとに「学生課」、「大学院課」、「キャリアサポート課」を設置し、修学支援、課外活動支援、就職・進路支援等あらゆるサービスを提供しています。2023年3月には豊洲キャンパスでの修学に便利な西葛西に提携寮を契約し、運用を開始しました。また11月には大宮キャンパスに芝生が広がる「だんだん広場」を整備し、学生の憩いの場を提供しています。2024年3月にオープンした芝浦工業大学熱海セミナーハウスは授業や課外活動で利用するほか、友人らとのコミュニケーションを深める場としても活用できる施設です。これからも各キャンパス整備をとおして学生満足度の向上を目指します。
教学執行部および学生センターでは、年に1回、学生から要望を聞く場を設け、正課・正課外に関わらず、全学関連機関にて意見交換を行い、組織的な学生支援を実施しています。このほか、学生の海外留学、大学院進学、女子学生、地方学生への財政支援、TOEICスコアの向上による学生の英語力強化支援などを継続していきます。そのほか、課外活動等にて優秀な功績を挙げた場合に表彰するSIT賞や課外活動奨励金、学生プロジェクトなど学生の各種活動に関する支援にも引き続き注力します。
芝浦工業大学校友会、同後援会との連携による就職・進路支援、修学支援・課外活動支援等も引き続き強化いたします。

12. 附属・併設学校の強化、中高大連携と理系女子の育成

  
 新規事業開発・中高大連携室を中高大連携の軸に法人と両併設校の両校長と密接に連絡・連携を取り、各種課題解決や新規プロジェクト等の策定を図りながら両校の発展に寄与すべく更なる連携強化の推進に努めています。
首都圏の数多の私立中高の中にあって学校の独自性をより鮮明に打ち出し、基軸はぶらさず社会情勢の変化や価値観の多様化に対応できる学校作り、校務運営に引き続き努めます。また併設校同士の連携を深め、新しい学力観を基軸にした授業研究と授業実践を推進し、併せてキャリア指導教育の充実を図ってまいります。
(芝浦工業大学附属中学高等学校)
 芝浦工業大学の附属校であることを活かし、他にはない教育プログラムの開発・改良・実践を迅速に行い、常にワクワクする学校を目指しています。教科横断型の授業の実践や課外活動の推進、女子生徒に理工学の楽しさを実感してもらう中高大連携プログラムの検討・実践、探求型授業の精査と開発、グローバル教育の推進として長・短海外留学の推奨を行っていきます。
2023年度に中高一貫共学校化が完成年度を迎えました。中学共学化を機に、中学では大規模なカリキュラム改革を継続して行っており、新たな教育観の下、特に基幹教科である数学と英語の学び、学ばせ方を見直し、更にグローバルとITをベースとした多彩な探究授業、探究型授業を展開しています。同時に自立学習を促すための時間(SD)を本課内に設け、生徒の主体性を重視した学習姿勢へと変化させることで深い学びへと繋げていきます。
 また高校では、理工系教育の先進校としてSTEAM教育を更に進化、発展させ、高大連携の優位性を生かしたハイレベルで独自の教育プログラムを持って将来性のある有能な理工系人材の育成を目指します。海外を見据えた短期留学制度を充実させるほか、意欲的で向学心の高い生徒を一人でも多く推薦できる推薦制度改革を継続します。
 好評の女子児童・生徒向け企画「ガールズデイ」を継続実施し、現役女子生徒との交流や体験授業を行うことで「女性技術者の卵」の発掘へ向け理工学の魅力を強力に発信し続けます。
(芝浦工業大学柏中学高等学校)
 創立50周年を迎える2029年を目指し、新校舎建設構想や基本計画について柏中高建設計画委員会にて建て替えに向けた具体的な検討を進めます。
 併設校ブランド力を高め、地域の期待にも応え得る教育力の向上と魅力ある学校風土の醸成に努めます。校内においては引き続き教員の働き方改革を推進し、労働環境の整備や待遇の改善を行い、魅力ある職場づくりに努めます。2018年度に採択された文部科学省スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の3期目の採択を目指し、全校を挙げて申請認可に向けた準備に注力しています。また、同一法人の中高大連携活動を更に推進し、芝浦工業大学の海外協定校との相互交流やPBL等を活発に行い、新たな具体的展開を策定、実行します。また、同時に地域との事業交流を推進し、とりわけ、地方自治体や企業、研究施設との連携事業にこれまで以上に取り組み、探究学習の更なる深化を目指します。
 新たに生徒の自律的学習態度に資する課題研究(探求)の系統的推進を担うため「探求科」を設置します。理系女子の育成についても芝浦工業大学及び芝浦工業大学大学院の女子学生の協力を得て好評の「リケジョ・カフェ」を開催するほか、新たな広報戦略・事業を策定し、受験生から在校生に至るまで理工系女子の発掘、育成に努めます。


13. キャンパスや諸設備の整備

 2022年度から始まった大宮キャンパスの再整備計画の一環として、O-CAMP2027計画の下、2024年度にはシステム理工学部の定員増を伴う課程制導入のための新たな校舎建設が始まります。2022年度に環境省により「脱炭素先行地域」に選定され、さいたま市、埼玉大学、東京電力パワーグリッド株式会社と共に2030年度に向けて「先進的かつサステナブルなグリーン成長モデル」の創出の一翼を担う学校法人として、脱炭素、ZEBといった環境に配慮した施設が2026年初頭の完成を目指します。柏中学高等学校の再整備計画においては、創立50周年を迎える2029年までに新校舎の建設と既存棟の改修を予定しております。


14. リスクマネジメント体制の強化

 本法人は、2011年3月に発生した東日本大震災の直後に、主に大地震などの自然災害に対する備えと、災害発生後における復旧・復興計画立案のために「危機管理室」を設置しました。以降、危機管理室では「災害危機管理基本計画書」(防火・防災業務の総合的かつ計画的な推進を目的とする)の策定、及び本法人設置各学校における「災害対策本部運営要領」(大地震等災害発生時の対応)などの策定を行ってきました。2019年度には、リスクマネジメントにおける大きな目標であった本法人「事業継続計画(BCP)」をとりまとめ、各種災害対応要領の拡充を行い、豊洲・大宮校舎に通学通勤する学生・教職員の3日分の備蓄品を確保・整備しています。今後も、防災・減災・復旧に関して現実的かつ実効あるマネジメント体制整備に努めます。


15. 地域貢献・社会貢献

 芝浦工業大学は社会貢献・地域貢献として本学の教育・研究成果を広く社会・地域に還元するため、「開かれた大学づくり」の取り組みとして、学びの場を提供しています。地域と共にある大学として、これまで進めてきた地域や自治体と連携した教育・研究・社会貢献を一層進め、地域社会、また産学官連携の中核的存在となるよう取り組んでいきます。
高校生の化学への探究心の醸成及びリーダーシップの育成を目的として、本学が大阪公立大学から引き継いだ高校化学グランドコンテストが、2023年10月に豊洲キャンパスで開催されました。協賛企業15社、国内高校参加80チーム、海外招聘3チーム、延べ900名が参加する大イベントとなり、最終選考ではポスターセッションに加え、口頭によるプレゼンテーションが行われ、文部科学大臣賞をはじめとする各賞の授与が行われました。本学化学系教員の全面的なバックアップと職員の協力によって成功裏に終わりました。2024年度は120チームの参加を目指しています。
大学における公開講座は、大学の第3の機能である「社会貢献」の役割を担っています。大学が持てる専門知識を広く社会・地域に還元することは大学の使命であると捉え、「芝浦工業大学らしさ」を前面に打ち出した公開講座を積極的に開講していきます。STEAM教育と関連した公開講座の拡充や、リカレント教育プログラム・履修証明プログラムの受講者拡大を目指したコースの設置に取り組みます。
地域との交流では、豊洲キャンパスは地域に開かれたキャンパスとしてフラワーガーデン、シバウラキッズパーク、レストラン・カフェ、ストリートピアノなど地域との交流の場となり、大宮キャンパスでも「だんだん広場」の活用をはじめキャンパス整備を実施し地域に開かれたキャンパスを目指しています。更に熱海セミナーハウスのオープンをきっかけに熱海市役所とのコラボレーションによる公開講座の開催など、熱海市や市民の皆さんとの交流に取り組みます。

以上