2023年度事業計画

2023年度 学校法人芝浦工業大学 事業計画

学校法人 芝浦工業大学
理事長 鈴見 健夫

はじめに

『世界に学び、世界に貢献するグローバル理工系人材の育成』
~日本・アジアを代表する私立理工系大学の雄をめざす~
 
学校法人芝浦工業大学(以下、本法人)は、将来にわたり我が国の持続的発展を担う理工学系人材の育成を責務として、設置校を代表する芝浦工業大学を中心に学生・生徒のための学校経営を堅持し、建学の精神に基づく教育研究活動の展開に努めます。具体的には長期ビジョンであるCentennial SIT Actionに基づき、創立100周年を迎える2027年には『我が国の理工学系私学としてトップの社会的評価を得る』という本法人の長期目標の実現をめざし、教職員一丸となり、全力で取り組む所存です。

 創立100周年を見据えた2023年度の重点施策テーマは、改革路線の継続による組織運営体制の見直し・強化、学校法人の発展を持続可能とする盤石な財政基盤の確立、各学部における改組・定員増等の具体的な検討の継続、教育研究改革及び学生支援、大宮キャンパス整備事業の遂行、更に駅伝プロジェクトの推進などであり、これらの実現に向け経営資源の戦略的な選択と集中を進めます。

 我が国の大学進学率において、近年は性別によるギャップが是正された反面、理学・工学分野における女子の進学率は依然として低水準に留まっています。芝浦工業大学の学部生の女子比率は漸く19%程度まで上昇しましたが、創立100周年に向けての成長戦略の一環として、女子学生比率30%以上を新たな目標に掲げました。2023年度は女子学生の拡充強化元年の2022年度に続き、入試広報の更なる強化を図ります。

 日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラルの実現」を宣言しています。この地球規模の課題に芝浦工業大学は共同研究や公開講座、中高生への探求授業を実施しその実現に取り組んでまいりましたが、引き続き全学的な取組を実施します。特に大宮キャンパスは2022年に脱炭素先行地域として採択されグリーンキャンパスの実現に向けた取組を推進します。

 2020年以来、感染拡大の猛威を振るう新型コロナウイルス対応においては、学生・生徒の健康を最優先として、キャンパスライフに不安・不利益が生じないよう万全な対策を講じ、安全かつ充実した教育環境の提供に努めます。また、教職員においても時差出勤やテレワーク等の導入を促進し、安心して業務に専念できる体制を推進します。
 将来ビジョン検討委員会では、本法人全体の将来計画を実現するために、理事会、教学執行部、事務職員、外部有識者を交えて将来ビジョンと新たな収入増計画を引き続き検討します。芝浦工大ビル(港区芝浦)での収益事業が開始されました。これらの収入をもとに大宮キャンパスにおいては、再編成、再配置を含めた大宮キャンパスマスタープランの具現化を引き続き推進します。

 理事会は、2023年度もこれまでに続き改革路線を継続し、創立100周年に向け新しい価値創造のための経営イノベーションに取り組みます。

centennial_SIT_action

1. 改革路線の継続

 本法人のガバナンス改革では、私立学校法に基づき、理事会を最終的な権限と責任を担う最高意思決定機関であることを明確化し、また設置学校の中心である芝浦工業大学の学長のリーダーシップ確立を目的に、教職員による選挙方式から、学長候補者選考委員会が学長候補者を選考し理事会において決定する「学長候補者選考委員会方式」に改めています。また、理事及び評議員の選任についても「選考委員会方式」に改めています。2021年4月1日に就任した山田純学長についても、「学長候補者選考委員会方式」により決定しました。 2021年6月27日発足の現理事会も、学校法人芝浦工業大学理事選考等実施細則に基づき、理事推薦委員会が答申した候補者を推薦し、理事会にて決定しています。この理事長、理事会と学長の連帯感のある体制により、大学改革を迅速かつ適切に展開する環境が整っておりますので、2023年度も引き続き教職学協働でスピーディな改革を実現してまいります。
また、私立大学に対して、ガバナンス・コードの策定及び実施状況の公表が求められており、2021年度中に本法人のガバナンス・コードを策定し、その遵守状況を公開しました。2022年度にも策定された各項目の遵守状況を把握し、「コンプライ・オア・エクスプレイン」に努めてまいります。

 また文部科学省は、学校法人のガバナンス改革に関し、学校法人制度改革特別委員会による学校法人制度改革の具体的方針に基づき、私立学校法改正法案骨子を策定しました。2023年度は骨子に基づき私立学校法が国会で制定される予定ですが、それに先がけて、本法人ではガバナンス検討委員会を立ち上げ、この改正の基本的考え方である「執行と監視・監督の役割を明確化・分離」をベースに4年後に控えた創立100周年に向け、本法人の更なるガバナンス改革を実現してまいります。

2. 100周年記念事業

 2027年に100周年を迎える芝浦工業大学にて実施する100周年事業を見据え法人と大学が教職学協動で100周年という区切りを祝う各種企画立案、運営準備を実施することを目的に設置された芝浦工業大学創立100周年検討委員会では、「次の100年に向けた大学の中長期的なビジョンの発信」、「デジタル・オンラインを活用して大学のブランド力を伝える戦略的広報」、「100周年記念事業募金のさらなる拡充と寄付獲得に向けた環境整備」が最終答申として報告されました。これらに基づき、2023年度内に設置される芝浦工業大学創立100周年準備委員会では、これら事業企画案の具体的な検討と専用Webサイトを構築し、改めて、卒業生・保護者・学生等、広く社会に発信していきます。

また、紙ベースで残存する各種歴史資料について、100周年編纂に向けたデジタルアーカイブ化、校友会館内に設置予定の有元史郎・芳子 and Mikko Haggott―Henson Memorial Cornerへの着手、及び箱根駅伝出場を目指した文武両道の駅伝プロジェクトの推進を進めます。

 2021年度より開始した返礼品寄付制度は多くの方に利用いただいております。引き続き卒業生企業や関わりのある企業の協力を得て新たな返礼品商品の拡充に努めます。また2022年度に豊洲キャンパス全体計画が完了したことを記念し、交流棟大講義室の各座席に寄付者名をプレートに刻印する新たな寄付制度を2023年度より開始します。

3. 盤石な財政基盤の確立

 学校法人が持続的かつ健全性をもって発展するためには盤石な財政基盤の維持、向上を図ることが必要です。2023年度も経常収支差額比率と事業活動収支差額比率(旧帰属収支差額比率)の10%以上の達成と積立率100%を目指した財政運営を行い、戦略事業に対する積極的な支援と将来の投資に備えた内部留保の充実の両立に努めます。2023年度は芝浦工業大学大宮キャンパス整備の本格始動と創立50周年を数年後に控えた柏中学高等学校校舎の施設整備計画を見据え、システム理工学部の改組による定員増、大学院進学強化による学生増、及び全棟貸しが始まる芝浦工大ビルの収益を軸に資金の充実を図ります。また、奨学金制度の充実も継続し、学生に対する経済的支援を行います。2023年度も中長期的な財政見通しをふまえた計画的な財政運営に取り組みます。

4. 教育研究改革

 芝浦工業大学は『社会に学び、社会に貢献する技術者の育成』を建学の精神として設立され、有為な人材を社会に送り出すことで高い評価を得てきました。その社会は今、グローバル化に加えてデジタル化の波にのまれ、大きな変貌を遂げつつあります。これに伴い世界の産業構造も大きく変化しました。しかしながら、日本の大学における教育プログラムは、昭和の時代から引き継がれた学問体系から脱却できていません。

 芝浦工業大学は、建学の精神に則り、社会の要請に応える人材を輩出すべく教育プログラムの改革に着手します。工学部においては、2024年度4月から学科制を廃止し複数の専門分野を融合し、イノベーションを生み出す課程制の導入を進めます。デザイン工学部においては情報・ロボティクス系を発展させて、ICTやデータサイエンスなど情報技術をベースに社会課題に取り組むソーシャルデザイン系(仮称)への転換を進めます。更に、システム理工学部では社会で要請される情報系を中心に、理工系全分野をカバーすべく、生命科学、スポーツ健康科学、医工学系、建築・環境系の分野を拡充した課程・コースを設置し、学生定員を増員する計画を具体化します。これにより、2022年5月1日現在、7,962人である学生数を、一般的に大規模大学と言われている1万人に増員することを目指します。

 2020年年初から始まったコロナ禍において大学も大変な試練に晒されました。しかしその一方で、遠隔(オンライン)授業という強力な教育手段を手にすることができました。芝浦工業大学においては、キャンパスをもつ大学の意義をよく考えつつ、教育におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、アフターコロナにおける新しい教育スタイルを提案するとともに、それを実践します。

 2014年9月に文部科学省より「スーパーグローバル大学創成支援」(SGU)に選定されて以来、グローバル化を推進してきた結果、学生の英語力や留学経験者数など大きな伸びを見せています。しかし、技術者として国際社会に活躍するためには、その能力以外に幅広い専門知識や柔軟な思考力が求められます。これらの能力は大学院での研究活動などで更に培われます。芝浦工業大学の大学院進学率は近年増加傾向にあるものの未だ十分とは言えませんので、国際社会での活動を意識付けすることを通じて、大学院への進学を推奨するとともに、長期留学を支援します。

 大学の卒業研究および大学院における修士課程の研究を通じて学生は実践的スキルを身につけます。このことから、研究は教育の手段と言われるほどに大学にとって重要なミッションです。研究を推進するための機器・設備の整備はもちろん、論文執筆・投稿支援や研究資金獲得支援に加えて事務補佐等の支援を充実させます。

5. グローバル・ダイバーシティの推進

 Withコロナの中、学生が世界に通用するグローバル理工系人材としてのスキルを身につけられるよう、2023年度もオンラインやデジタルトランスフォーメーションなども活用して学びの機会を提供してまいります。英語による授業・研究指導で学士の学位を取得できる「先進国際課程」、システム理工学部に設置されている海外留学を必修とする「国際プログラム」をはじめ、そのほかにも芝浦工業大学の学生が参加できる国際交流プログラムの拡充を図ります。その一方で、英語開講科目をより一層充実させることで、留学生の受け入れ拡大にも注力してまいります。

 芝浦工業大学が私立理工系大学として唯一採択された「スーパーグローバル大学創成支援」(SGU)は2023年度をもって終了します。新型コロナウイルス感染拡大による2年間の海外派遣・受入れ中断を経て、2022年度は3年ぶりに海外渡航を再開しました。SGU事業最終年度である2023年度においては、新型コロナウイルス感染拡大以前と同水準の学生を海外研修プログラムに参加させることを目標として、芝浦工業大学のグローバル化を再加速します。また、SGU事業採択校として、これまでの成果を広く国内を中心とする高等教育機関に還元するべく取り組んでまいります。文部科学省の関連事業である「大学の国際化促進フォーラム」の幹事校として、グローバルPBLの他大学への普及に努めてまいります。更に、2021年度に採択された「大学の世界展開力強化事業」においても、共同申請者である千葉大学とともに、グローバルPBLを手段として、デザインセンスを備えるエンジニアの育成にも努めます。

 芝浦工業大学は多様なメンバーがそれぞれ尊重され、力を発揮し、イノベーションをもたらす大学になることを目指しており、多様性拡大の一つとして理工系女性の育成に取り組み、女子学生への奨学制度を整備しました。2023年度は地方学生への奨学金制度の開始や大宮キャンパス内のバス停車場から2号館まで点字ブロックを敷設するなどバリアフリー化も行います。芝浦工業大学は全ての学生教職員が輝く理工系大学を目指します。

 男女共同参画社会基本法に基づき閣議決定された第5次男女共同参画基本計画では、第4分野「科学技術・学術における男女共同参画の推進」及び第10分野「教育・メディア等を通じた男女双方の意識改革、理解の促進」を中心に、男女の研究者がともに働きやすい研究環境の実現、女子学生の理工系分野の選択促進や理工系人材の育成に向けた様々な取り組みの推進が求められています。これを受け2022年度に次世代育成対策推進法と女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の見直しを行い、2024年度に「くるみん」「えるぼし」認定申請を行うことを目標に掲げています。すべての人がWell―beingを感じられる環境の実現を目指した取り組みを推進します。

6. 産学官連携の推進

 芝浦工業大学では、建学の精神『社会に学び、社会に貢献する技術者の育成』に基づき、共同研究、受託研究、技術指導、及び技術移転など、社会実装に向けた産業界との連携に積極的に対応しています。特に、中小企業に対しても技術指導から始め共同研究へ展開する等、積極的な共同研究の取り組みを進めており、首都圏の大学の中にあって産学共同研究における中小企業比率が比較的高いことも特徴です。これには、江東区や港区、埼玉県等自治体との連携によるところが大きく官による産学連携もまた、芝浦工業大学の特徴です。

 最近では、大学発ベンチャー企業の創出に関しても、積極的に取り組む教員が増えてきており、各種制度、支援策の充実によりその発展を支援しています。今年で7年目を迎える芝浦ビジネスモデルコンペティション(SBMC)は、主に学生を対象としたイベントで、学生の起業意欲(アントレプレナーシップ)を醸成する取り組みのひとつです。

 2022年10月には、豊洲キャンパス本部棟10階にベイエリア・オープンイノベーションセンター(BOiCE)を開設しました。産学官民連携ラボ、シェアオフィスやコワーキングスペースを有し、企業との共同研究、受託研究等研究活動の誘致や立ち上げ期ベンチャーやスタートアップ企業へのスペースニーズに応えるほか、産学共創に関心を持つ学生をISS(イノベーション・スチューデントスタッフ)として雇用し学生の参画も積極的に促します。産学官金が参画する共創ネットワーク、BOiCE Clubメンバー(※)等、様々な人との交流を通じて、産学共創の発展拡大を目指します。

 ※BOiCE Clubメンバー:芝浦工業大学と共同研究等の連携を検討している会員(法人、個人)で、テクニカルセミナー(芝浦工業大学の研究、技術シーズ発信の場)や会員のニーズ発表会への参加機会や、技術相談の優先権などの特典を有します。

7. 戦略的広報活動

 2023年度は、創立100周年(2027年)に向け、広報活動においてもとても重要な一年と位置づけています。大学の長期ビジョン『Centennial SIT Action』の認知度の拡充をはじめ、各施策における活動や成果の効果的発信を行い、芝浦工業大学としてのブランド力の確固たる定着を進めてまいります。主な計画としては、積極的かつインパクトある情報を提供するために“大学本体ウェブサイトのリニューアル”を実施し課題であったユーザビリティの改善を図り、2023年夏には公開します。

 また、芝浦工業大学の目指す教育・研究、組織改革をスピーディかつ正確に社会に届けるために、“広報誌のデジタルメディア化”に取り組みます。デジタルメディア化に移行することで新規読者(現役世代)の獲得増が図られます。

 2021年度より取り組んでいる学長(室)を中心とした広報活動に加え、SNSの活用戦略を進め各学部、機関と連携した情報発信を展開します。具体的には2024年度開設の工学部課程制広報、大学(学部)における改組計画広報、SDGs推進活動の発信、女子学生拡充のためのPR、研究成果の積極的な発信に注力してまいります。

8. DX化の推進

 理工学教育研究機能の強化やグローバル化の加速、教職学協働の活動など多岐にわたる改革を支援するため、学内DX化の推進を一層進めます。教育のDX化施策としては、ハイブリッド授業、ハイフレックス授業等による、より効果的で学生の学びが向上する授業を推進します。また、LMSの利用が一般的となり、ラーニングアナリティクス基盤を一層活用し、これらから得られる教育データを積極的に活用する個別最適な学びを可能とする環境を整えます。更に、CBTやAIを活用した採点の支援環境を整備し、教員の負担を軽減しつつ、より精緻な教育環境の構築を目指します。法人系のDX化施策としては、ワークフローシステムの導入や、個人用ポータルサイト、会義室の簡易予約システムなどの構築を行い、業務効率化、情報共有の強化、ペーパーレス化等を一層進めます。また、今まで分かれていた教学サイドと事務サイドのシステム上の垣根を取り払い、教員・職員間、職員・学生間のコミュニケーションを円滑に行えるよう、システム統合を実現します。また、2024年度工学部課程制に向けた業務の煩雑化の解消を目的として、効率化及びDX化に向けたワークショップを実施し、提案されたアイデアを実現するとともに、教職員の連携強化やグッドプラクティス共有を行い、業務の高度化及び組織風土の変革を行っていく予定です。近年の情報システムは技術革新のスピードが速いため、最新技術の動向を常にウォッチし、学内システムへの適切な提供を行う体制を整える必要がある一方、情報セキュリティの対策が重要な課題となっています。2022年度に策定した芝浦工業大学情報セキュリティ基本規程に基づき、マネジメント体制を強化するとともに最新の保全システムを導入し、脅威に対して迅速かつ安全に対応します。

9. 学生募集・女子学生の拡充

 2022度は芝浦工業大学のブランド力強化の施策である女子学生比率30%以上を目指した入試戦略を中心に展開し、一定の効果を得ました。しかし、少子化の進行に伴う18歳人口減少、大学進学率の頭打ち状態という厳しい状況の中、入学者確保は大学にとって最大の課題の一つであり、2023年度においては将来を見据えた安定的な志願者確保に向けた柔軟かつ迅速な入試戦略を進めてまいります。まず、志願者の安定的確保の基盤として、全入学者における割合の40%を目安に、推薦入学者選抜および特別入学者選抜といったいわゆる年内入試を推進します。推薦入学者選抜においては、全国各地を出身地とする学生が集まるダイバーシティの観点から地方学生を増やし全国型大学に戻すことを目的に、全国で連携協定校や重点指定校推薦対象校の拡充(既存連携協定校および重点指定校推薦対象校からそれぞれ50人の入学を目指す)を行い、併せて大学説明会、探究型学習における連携(研究室インターンシップ、芝浦ビジネスモデルコンペティションの活用)、女子校との協定締結による女子生徒向けのイベントなど、高校との連携プログラムの拡充を進め、安定的な入学者の確保を図ります。次に、一定の学力レベルや素養を持つ学生を確保するべく、2024年度入試より開始するデザイン工学部のAO入試、および2025年度に新設予定の工学部の総合型入学者選抜制度を中心に、各学部における総合型入学選抜制度の拡充を図ってまいります。更に、過年度に引き続いて大学のダイバーシティ推進およびブランド力向上の観点から女子および地方出身者の学生の拡充を図るべく、全入学者に占める割合がそれぞれ30%、25%を超えることを目標に定め、女子や地方出身の学生を支援する奨学金制度の拡充・周知による志願者の拡大を試みます。また、2024年度より工学部に開設する課程制やその後に控えるシステム理工学部の改組などを中心に、法人広報と一体となって各学部の特色や教育内容が正しくかつ魅力的に伝える新たな発信法を積極的に取り入れ、高校生およびその保護者等へ効果的な広報を展開することで、志願者確保を目指します。

10. キャリア教育

 芝浦工業大学は、個々の学生に寄り添い、真に「納得できる就職」の実現に重きを置きつつ、学生の性格・特性を把握のうえ本人の希望も踏まえたきめ細やかなキャリア教育を地道に実践しています。これにより、就職率はもとより就職先の質の高さも具備する大学として「就職に強い大学」と社会からも評価されています。引き続き、オンライン環境も含めたハード面と、学習・研究活動との両立に配慮したソフト面での支援対応を堅持することで、学生の就職力向上のための指導に努めます。更に、就職内定が得られさえすればよいという安易な姿勢を排し、将来に向け継続的に取り組みたいことを明確に意識させ、より高い目標を設定のうえ志望企業にチャレンジする強い気持ちが持てるよう、就職担当教員はもとより、研究室で日々直接学生指導に当たる教員とも連携協力しながら支援していきます。また、就職後の学生が企業人として真に自己実現できるよう、芝浦工業大学の学生の採用に積極的な様々な業界の企業との連携を強めることで、学生が広い視野で就職活動できる環境を整えていきます。

 時宜に応じた学生目線に立った支援・指導を要請できるよう、芝浦工業大学校友会、同後援会との更なる協力体制の維持強化にも注力します。

11. 学生支援の充実強化

 芝浦工業大学はキャンパスごとに「大学院課」「学生課」「キャリアサポート課」を設置し、修学支援、課外活動支援、就職・進路支援等あらゆるサービスを提供しています。2023年度からは西葛西に学生寮(提携寮)を契約し、豊洲キャンパスにおいても地方出身の学生および保護者のニーズに対応するべく良好な学生生活環境を提供します。また、本部棟の竣工を契機に体育館やトレーニングマシンジム等の様々な運動施設が充実し、多くの学生が利用を開始しています。今後は豊洲キャンパスにおける様々な正課外活動が展開できるよう支援を行い、学生満足度の向上を目指します。

 教学執行部および学生センターでは、年に1回、学生から要望を聞く場を設け、正課・正課外に関わらず、全学関連機関にて意見交換を行い、組織的な学生支援を実施しています。このほか、学生の海外留学、大学院進学、女子学生、コロナ対応への財政面を含む積極的な支援、TOEICスコアの向上による学生の英語力強化支援などを継続していきます。そのほか、課外活動等にて優秀な功績を挙げた場合に表彰するSIT賞や課外活動奨励金、学生プロジェクトなど学生の各種活動に関する支援にも引き続き注力します。

 学生サービスの向上に資する業務改善活動においては、2022年12月よりScombZのコミュニティーに、これまで大学の掲示板でお知らせしていた外部のイベント案内等の情報を掲載し、学生自身が興味のある情報を大学に来なくても確認できる電子掲示板機能を追加しました。

 芝浦工業大学校友会、同後援会との連携による就職・進路支援、修学支援・課外活動支援等も引き続き強化いたします。

12. 中高大連携強化と理系女子の育成

  新規事業開発・中高大連携室を中高大連携の軸に法人と両併設校の両校長と密接に連絡・連携を取り、各種課題解決や新規プロジェクト等の策定を図りながら両校の発展に寄与すべく更なる連携強化の推進に努めています。
 
(芝浦工業大学附属中学高等学校)
 2021年度からの中高一貫共学校化が2023年度に完成年度となります。中学共学化を機に、中学では大規模なカリキュラム改革を継続して行っており、新たな教育観の下、特に基幹教科である数学と英語の学び、学ばせ方を見直し、更にグローバルとITをベースとした多彩な探究授業、探究型授業を展開しています。同時に自立学習を促すための時間(SD)を本課内に設け、生徒の主体性を重視した学習姿勢へと変化させることで深い学びへと繋げていきます。
 また高校では、理工系教育の先進校としてSTEAM教育を更に進化、発展させ、高大連携の優位性を生かしたハイレベルで独自の教育プログラムを持って将来性のある有能な理工系人材の育成を目指します。海外を見据えた短期留学制度を充実させるほか、意欲的で向学心の高い生徒を一人でも多く推薦できる推薦制度改革を継続します。
 好評の女子児童・生徒向け企画「ガールズデイ」を継続実施し、現役女子生徒との交流や体験授業を行うことで「女性技術者の卵」の発掘へ向け理工学の魅力を強力に発信し続けます。
 
(芝浦工業大学柏中学高等学校)
 2018年度に採択された文部科学省スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の3期目の採択を目指し、全校を挙げて申請認可に向けた準備に注力しています。また、同一法人の中高大連携活動を更に推進し、芝浦工業大学の海外協定校との相互交流やPBL等を活発に行い、新たな具体的展開を策定、実行します。また、同時に地域との事業交流を推進し、とりわけ、地方自治体や企業、研究施設との連携事業にこれまで以上に取り組み、探究学習の更なる深化を目指します。
 2023年度に新たに〈教学推進センター〉を設置し、校務分掌を合理的に横断した、より機動力のある校務運営や中高大連携教育の実効性向上が可能になるよう統括組織の改編、改善を図ります。理系女子の育成についても芝浦工業大学及び芝浦工業大学大学院の女子学生の協力を得て好評の「リケジョ・カフェ」を開催するほか、新たな広報戦略・事業を策定し、受験生から在校生に至るまで理工系女子の発掘、育成に努めます。

13. キャンパスや諸設備の整備

 豊洲キャンパスでは、教室棟1階で、新たな工学部課程制に対応した新工作室の改修工事が行われます。大宮キャンパスでは、以前よりキャンパスの再編計画が行われており、システム理工学部では2026年度に学科制から課程制に移行し、同学部の専攻分野において社会で要請される分野を拡充した課程・コースの設置に伴い、学生収容定員及び教員を増員する事から、その教育・研究に対応すべく新しい施設の建設が望まれています。2023年度は、1期工事となる新施設の実施設計が行われ、2023年度末に工事に着手し、2025年12月末の完成を目指します。また、再編計画の一つである森の復興については、ナラ枯れの被害が深刻である事から、4号館前の雑木林の整備を行い、明るく学生が集える場所として2024年3月末の完成を目指します。今後は、2期工事となる既存体育館の改修や3期工事となるバスターミナル周辺の計画を検討してまいります。

14. 附属・併設学校の強化

 首都圏の数多の私立中高の中にあって学校の独自性をより鮮明に打ち出し、基軸はぶらさず社 会情勢の変化や価値観の多様化に対応できる学校作り、校務運営に引き続き努めます。

 両校ともに学校としての特長や個性、そして「強み」を更に強化するとともに新たな教育観を見据えた、時代に即応できる「新しい学び」を研究・推進し、教育実践に繋げていきます。

 附属中学高等学校では2022年度に実施した創立100周年記念事業の一環として前身が「東京鐡道中学」であることから137年前の1886年にイギリスから輸入され我が国の鉄道黎明期を支えた403号機関車を校舎敷地内にて保存展示しています。引き続き403号機関車を観光資源とした地域貢献を進めてまいります。

 柏中学高等学校では、創立50周年を迎える2029年を目指し、新校舎建設構想や基本計画についてのワーキンググループが校内、法人内で稼働し、建て替えに向け具体的に検討を開始しました。新校舎建設を見据えつつ、私学として魅力ある教育環境の一層の充実を図ります。

 また、両校とも理(工)系教育の推進校・モデル校として得ている高い評価を一層向上させるべくより質の高い理(工)系教育を実践し、教育の成果を広く発信していきます。更に両校をあげて併設校ブランド力を高め、地域の期待にも応え得る教育力の向上と魅力ある学校風土の醸成に努めます。校内においては引き続き教員の働き方改革を推進し、労働環境の整備や待遇の改善を行い、魅力ある職場づくりに努めます。


15. リスクマネジメント体制の強化(新型コロナウイルスへの対応)

 本法人は、2011年3月に発生した東日本大震災の直後に、主に大地震などの自然災害に対する備えと、災害発生後における復旧・復興計画立案のために「危機管理室」を設置しました。以降、危機管理室では「災害危機管理基本計画書」(防火・防災業務の総合的かつ計画的な推進を目的とする)の策定、及び本法人設置各学校における「災害対策本部運営要領」(大地震等災害発生時の対応)などの策定を行ってきました。また2019年度には、リスクマネジメントにおける大きな目標であった本法人「事業継続計画(BCP)」をとりまとめ、具体的運用に至っています。新型コロナウイルス対応としては、他校に先がけ実施した新型コロナワクチン職域接種(在校生、教職員、近隣教育機関対象)にて、通常の教育・研究を確保し、2022年度は、新型コロナウイルスはオミクロン株以降もBA.2株をはじめとした亜種が次々に出てきていますが、学生・教職員健康相談室と連携してこれまでのところは学内でのパンデミック発生は回避することができました。2023年度においては、新型コロナウイルスを含めた感染症への対応マニュアルの整理を行うとともに、「事業継続計画(BCP)」をはじめとする各種災害対応要領の拡充を行い、豊洲・大宮校舎に通学通勤する学生・教職員の3日分の備蓄品を確保・整備しています。今後も、防災・減災・復旧に関して現実的かつ実効あるマネジメント体制整備に努めます。

16. 地域貢献・社会貢献


 芝浦工業大学は地域と共にある大学として、これまで進めてきた地域や自治体と連携した教育・研究・社会貢献を一層進め、地域社会、また産学官連携の中核的存在となるよう取り組んでいきます。2023年度はコロナ禍により規模を縮小していた「船カフェ」や「豊洲水彩まつり」などの地域の方々や自治体と共に開催したイベントや、豊洲キャンパス近隣企業と協業したまちづくり活性化イベントの本格的な再開を目指します。本部棟1階のSITグローバルカフェと銀座シシリア豊洲店は坂茂設計事務所により設計され教職員のみならず地域の皆様に愛されています。豊洲フラワーガーデンでは四季の花が来校者を楽しませ、クリスマスには近隣保育園児を招待しサンタクロースによるプレゼント配布を実施しました。シバウラキッズパークは親子連れに親しまれており、新たな大学による地域貢献のカタチを見せています。引き続き季節ごとのイベントやストリートピアノによる各種企画、2022年度に寄贈を受けたダットサン16型を用いた公開講座等地域に愛される各種企画を実施していきます。

 また、大学における公開講座は、大学の第3の機能である「社会貢献」・「地域貢献」の役割を担っており、大学が持てる専門知識を広く社会・地域に還元することは大学の使命であります。

 芝浦工業大学のアウトリーチ活動としての講座や、幅広い年代層を対象に「芝浦工業大学らしさ」を強調した公開講座を積極的に開講していきます。特に子ども向け講座については、子どもの「ものづくり」に対する興味・感心をそそり、未来の理工系人材を育成するための講座の開発、拡充を図ります。またこれに加えて、国が推進する社会人のためのリカレント教育として、2022年度から開始した履修証明プログラムの拡充に教学部門と協働して取り組むとともに、新たに高校生の工学への探求心育成及び啓蒙活動の一環として、高校化学グランドコンテストを大阪公立大学より事業継承して実施します。

 大宮キャンパスではさいたま市、埼玉大学、東京電力パワーグリッド株式会社埼玉総支社と芝浦工業大学が連携した「脱炭素先行地域」に選定された事を機に、地域の魅力と質を向上させ、地方創生に資する地域脱炭素に取り組みます。また、システム理工学部の学部再編とキャンパスマスタープラン実行に伴い、さいたま市とスポーツ健康分野を中心とした地域連携を検討してまいります。



以上
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2023年6月7日追記
2023年6月7日理事会において2028年度に、デザイン工学部の教育環境および充実のため、下記の計画を決議しました。計画実行に向けて検討を始めました。
・デザイン工学部の入学定員を110名増とし、入学定員270名とする。
・デザイン工学部1・2年の就学地を豊洲キャンパスに変更し、豊洲一貫教育を実現する。
・豊洲キャンパス本部棟12階フロア(2153.72㎡)・13階フロア(1749.18㎡)を改修し、デザイン工学部の学生受け入れ、教育研究環境の増進を図る。