サブテラヘルツ波によるコンクリート内部を透視する技術で鉄筋腐食状態を推定~非破壊・非接触で情報を得られるサブテラヘルツ波を利用した装置を開発して、予防保全型の維持管理体系の構築を実現する~
- プレスリリース
- 研究
芝浦工業大学(東京都江東区/学長 山田純) 建築学部建築学科・濱崎仁教授、デザイン工学部デザイン工学科・田邉匡生教授は、株式会社コンステック(大阪市/社長 茶家義明)、東北大学大学院工学研究科(仙台市/工学研究科長 伊藤彰則) 都市・建築学専攻と共同で、「サブテラヘルツ波によるコンクリート中の鉄筋腐食評価技術の研究開発」を実施しています。
【芝浦工業大学ニュース】サブテラヘルツ波によるコンクリート内部を透視する技術で鉄筋腐食状態を推定
研究の背景
住宅・建築物を長期に健全な状態で活用し、維持管理コストを低減するためには、劣化が顕在化する前に対策を行う予防保全による維持保全が求められています。従来の目視や打診を中心とした調査は、劣化が顕在化する以前の情報を把握することはできませんでした。このような問題点を解決するため、非破壊・非接触で、コンクリート中の鉄筋の腐食化傾向や腐食要因を把握する技術を開発しました。少ない手間で多くの情報を得る調査により生産性の向上を図り、構造物調査の実施率の向上、および予防保全型の維持管理体系の構築を目標としています。
研究の概要
○サブテラヘルツ波の現状
・サブテラヘルツ波とは
周波数10GHz~300GHz(0.01THz~0.3THz)程度の周波数帯の電磁波のことで、テラヘルツ波と同様に、コンクリートなどの非極性物質に対する透過性が高く、水などの極性物質に吸収され、金属に対しては高い反射性を持つ電磁波です。このサブテラヘルツ波の特性を利用してコンクリート中の鉄筋の状態を評価する技術を開発しました。
・サブテラヘルツ波の反射強度変化による評価
本技術開発では、7.5~20GHz程度の比較的低周波のサブテラヘルツ波による評価を用いました。サブテラヘルツ波をコンクリート表面から入射し、コンクリートおよび鉄筋からの反射波の強度によって、鉄筋位置や腐食度を評価します。鉄筋からの反射波を二次元的に表現したコンター図を図1に示します。図中の破線が鉄筋の位置です。かぶり厚さ50mm程度までの鉄筋を評価することが可能です。
・かぶり10mmにおける鉄筋腐食度評価
鉄筋の腐食により反射強度が小さくなる特性を利用し、鉄筋位置とコンクリート位置の反射強度の差分値と鉄筋の質量減少率の関係をあらかじめ求めておき、鉄筋の腐食度を非破壊・非接触的に評価します。図2に腐食度の異なる鉄筋のコンター図、写真1に鉄筋腐食の試験体の例を示します。
○構造物測定に向けた取組
実構造物に適用可能な可搬型の測定装置(近接評価用・遠隔評価用)を構築しました。
この装置では、装置の可搬性、セッティングに要する時間、腐食度評価の可能性、ポータブル電源による電源の安定供給等を確認しました。
実構造物への適用を考え、開発した装置によるコンクリート中の鉄筋腐食度の測定・評価フローを検討しました。 図4コンクリート中の鉄筋腐食度の測定・評価フローに示すように電磁波レーダ装置を併用する場合と、サブテラヘルツ装置のみで鉄筋位置情報を取得する場合に分け測定することにより、サブテラヘルツ波の情報から、鉄筋腐食の有無の判断、腐食開始初期における鉄筋の質量減少率の推定が可能となります。本フローについては、実験結果から検討作成したものであり、実構造物への適用では適宜修正されます。
今後の展望
現在は、実構造物で得たデータが少ない状態です。今後は、サブテラヘルツ技術を用いた実構造物での測定を想定した実験を行い、予防保全、長寿命化に有用な測定技術として確立するための取組みを行う予定です。