諸田歩美さんが令和6年度土木学会全国大会・第79回年次学術講演会にて優秀講演者賞を受賞
- 社会基盤学専攻
持続可能な開発目標(SDGs)の採択後、世界規模でSDGsの達成に向けた取り組みが活発化しています。特に建設業界では、建設プロセスにおいて大量の廃棄物が発生することが課題となっており、「つくる責任、つかう責任」を掲げるSDGsの目標が注目されています。このような背景から、建設業界ではSDGsに積極的に取り組む動きが推進されています。
本研究では、建設汚泥をリサイクルして得られる調質改良土および劣化した農地土壌に着目しています。従来、劣化した農地土壌が存在する農業地では、pHを基準値内に改良するために石灰などの添加剤が使用されてきました。しかし、本研究ではこれらの添加剤に代わり、リサイクルされた建設汚泥から得られる弱アルカリ性の調質改良土を使用することで、劣化農地土壌の物理化学的性質の改善を図ることを目指しています。この取り組みを通じて、SDGsへの貢献を目指します。
研究内容
室内実験を通じて、劣化農地土壌のpHを基準値内に改善可能な調質改良土の適切な混合割合を検証しました。調質改良土とは、建設汚泥に脱水・固化処理を施し、さらに篩にかけて粒度調整を行ったものです。この調質改良土はアルカリ性を示すため、本研究では弱酸性の農業用地土と混合してpHを調整する目的で使用しました。
室内実験では、2㎏の劣化農地土壌(pH 5.8、EC値 0.01 mS/cm)に調質改良土(pH 10.5、EC値 0.08 mS/cm)を50 gずつ混合し、攪拌を行いました。混合から4分後にpHおよびEC値を測定し、pH 7に達するまで調質改良土の混合および測定を繰り返しました。最終的にpH 7となった農地土壌については、透水試験を実施し、透水係数を測定しました。
本研究では、計500 gの調質改良土を混合した結果、劣化農地土壌のpHが6.98まで上昇することを確認しました。この結果から、調質改良土を混合することでpHを上昇させ、添加率を調整することで目標とするpHに達することが可能であることが示されました。また、pHが基準値内に収まる農業用地土に改善できる可能性が確認されました。さらに、EC値および透水係数についても、調質改良土を混合することで基準値に近づくことが明らかになりました。
今後の展望
今後の展望としては、今回の実験で基準値に達しなかったEC値の改善方法について検討する必要があります。さらに、透水係数については、供試体の作製時の締固め度に依存するため、ランマーなどを用いた締固めの効果を検証することが重要です。また、混合により改善された農業用地土を実際の農地で使用するためには、改善後の性質が長期的に維持されるかや降雨の影響について検証する必要があります。その上で、植生試験などを実施し、実用性を確かめることが求められます。