森田航平さんが令和6年度土木学会全国大会・第79回年次学術講演会にて優秀講演者賞を受賞
- 社会基盤学専攻
研究背景・目的
日本においては現在、高度経済成長期に大規模に建設された建造物の老朽化に伴い、安全性の低下が顕著となっており、建て替えの需要が増加しています。既存杭の引き抜き撤去後に用いられる埋戻し材としては、セメント系充填材や流動化処理土の使用が一般的です。しかしながら、これらの材料には六価クロムの溶出リスクによる環境負荷の懸念など、いくつかの課題が存在します。
本研究では、土砂を用いた転圧式埋戻し処理による充填性の評価を目的としています。充填性の評価に際しては、埋戻し処理後の地盤内変位を3次元弾塑性有限要素解析を通じて検討しました。
研究内容
転圧式埋戻し処理は、土砂を転圧および締め固めることによって、密度と強度を向上させることを基本原理としています。この処理では、回転する転圧ドリルを杭抜き孔に貫入させ、土砂を地上から螺旋ブレードに載せて、先端の押圧ブレードへ送り込むことで転圧を行います。本手法は、従来のセメント系充填材や流動化処理土とは異なり、土砂のみを用いるため、埋戻しが完了した後、地盤内にセメント系の充填材が残らず、元の地盤に復元することが可能です。
本研究では、この工法における充填性を評価するため、有限要素法を用いたシミュレーションによる施工後の地盤内変位の評価を行いました。その結果、土砂を用いた転圧式埋戻し処理は、地盤変位が少なく、施工時の充填性が高いことが確認されました。
今後の展望
今後の展望としては、解析のパラメータを変更することで、地盤の適用範囲を明確にし、異なる条件下での性能を評価していきます。また、埋戻しに適した土砂の選定に関する研究も必要であると考えています。これにより、現地の地質状況やプロジェクトの要件に基づいて最適な埋戻し材料を選択することが可能となり、持続可能で効果的な地盤充填処理手法の開発に寄与することが期待されます。