鈴木誠生さんが地盤工学会第59回地盤工学研究発表会にて優秀論⽂発表者賞を受賞
- 社会基盤学専攻
研究背景・目的
現在、既存杭の再利用は一般的ではなく、撤去や新設が主流となっています。しかし、これに伴う建設廃棄物の増加や環境負荷の問題が指摘されています。特に、杭工事におけるCO2排出量の削減が重要視されており、既存杭を適切に再利用することで、建設コストや工期の削減が期待されます。また、SDGsの目標である「住み続けられるまちづくり(目標 11)」とも関連しており、持続可能な都市開発が求められています。
本研究の目的は、地中に存在する不健全な杭を撤去するのではなく、補強して再利用する技術を提案することです。これにより、既存杭の再利用の有意性を確認し、環境負荷の低減や建設コストの削減を図ることを目指しています。
研究内容
本研究は、地中に埋設された既存杭の再利用と補強技術に焦点を当てています。日本では、高度経済成長期に整備された社会基盤の老朽化が進行しており、その適切な維持管理が急務となっています。特に、地中の既存杭に関しては、撤去や新設が一般的な処理方法ですが、これには環境負荷やコスト増といった課題が挙げられます。そこで本研究では、既存杭を撤去せずに補強して再利用する方法を提案しています。
具体的には、補強杭の性能を評価し、杭径が大きくなるにつれて支持力が増加する傾向を確認しました。ただし、補強杭の支持力は健全杭には完全には及ばないものの、一定の支持力まで回復できることが明らかになりました。また、補強材の厚みを増やすことで支持力がさらに向上し、杭径の調整によって必要な支持力を確保できる可能性が示唆されました。
今後の展望
今後の研究として、今回の鉛直力に関する支持力解析に加えて、杭に作用する水平力についても解析を進める必要があります。これにより、既存杭の再利用技術に対する信頼性が向上し、より包括的な評価が可能となると考えられます。また、既存杭の健全性や耐久性を評価する試験方法の確立や、具体的な補強・再利用工法の実用化も求められています。さらに、環境負荷の低減や建設コスト削減を目指して、既存杭の再利用が一般的な手法として普及することが期待されます。