重藤李佳子さんが令和6年度測位航法学会全国大会にて学生優秀研究発表賞を受賞

2024/07/05
  • 社会基盤学専攻

受賞者
重藤 李佳子さん(社会基盤学専攻 2年生)

中川 雅史 教授(工学部)

指導教員

中川 雅史 教授(工学部)

学会・大会名
令和6年度 測位航法学会 全国大会


賞名
学生優秀研究発表賞


発表題目
ジンバルLiDARと非同期多方向カメラを用いた月面測量のための高密度点群生成

shigehuji
 
近年、月面開発のための研究活動が活発化しており、国内でも遠隔施工や無人建設の技術開発が推進されています。また、月面における拠点の開発では輸送コストを考慮すると地上よりも施工の手戻りをなくすことが望ましく、そのためにはデジタルツインの適用による施工のシミュレーションが必要となります。しかしながら、月面は施工や地図作成の際に必要な測量用基準点やGNSSなどが未整備で、月表面がレゴリスと呼ばれる細かい砂のような堆積物で覆われていることから、従来型の画像計測手法やSimultaneous Localization and Mapping(SLAM)、Mobile Mapping System計測の適用は難しい環境下にあります。そこで、基準点測量を目的とした標識利用のLiDAR-SLAMと、高密度点群取得を目的としたStructure from Motion and Multi-view Stereo(SfM/MVS)処理の組み合わせによる点群取得手法(LiDAR-SfM/MVS)を開発しています。


本研究では、月面のような劣悪な環境でも3D計測を可能とするためにAttitude heading reference system (AHRS) と組み合わせたLiDAR、もしくは、3軸ジンバルに搭載したLiDAR(ジンバルLiDAR)からの計測と、多方向カメラの非同期撮影画像を組み合わせ、月面環境を模擬したフィールド(JAXA相模原キャンパス宇宙探査実験棟)と模擬地盤環境(立命館大学びわこくさつキャンパス)で提案手法の検証を行いました。月面のような劣悪な計測環境であっても、AHRSを組み合わせたLiDAR、もしくは、3軸ジンバルに搭載したジンバルLiDARからの計測と多方向カメラからの撮影で、黒色や白色であっても、地表面の点群取得が可能であることを確認しました。現在は月面測量ローバの開発を軸として、提案手法の改良を行うとともに、土質・地盤調査ツールとの同時計測システムの開発と検証に取り組んでいます。

本研究の成果は、デジタルツイン基盤の実現のみならず、社会インフラの高度化・維持管理に活用できる可能性があります。国内の社会インフラは高度経済成長期に建設されたものが多く、高齢化・老朽化している土木構造物の割合が急増していることが社会的課題です。また、災害が多いことも国内の特徴であり、緊急災害観測技術の重要性は増しています。本研究に加えて、衛星観測や航空・UAV測量、地上レーザースキャニング、ウェアラブルデバイス利用などの連携による、多様な測量技術を組み合わせた手法を提案することで、上記の社会的課題を解決することに貢献します。