加藤遥馬さんが令和5年度廃棄物資源循環学会関東支部研究発表会にて優秀ポスター賞を受賞

2024/03/07
  • 社会基盤学専攻

受賞者
加藤遥馬(理工学研究科/社会基盤学専攻1年)

指導教員
稲積真哉 教授(土木工学科)

学会・大会名
令和5年度廃棄物資源循環学会関東支部研究発表会

賞名
優秀ポスター賞

発表題目
建設発生土の環境負荷低減に向けた中性固化材を用いた流動化処理土の開発

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研究目的

建設業界では、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取り組みの一環として、産業廃棄物の再利用に力を入れています。特に、建設現場で生じる土砂などの有効活用が重視されていますが、2018年の建設副産物に関する実態調査によると、再資源化の目標値を達成している資源は多いものの、建設現場から生じる土砂に関しては目標を満たしていない状況です。その一方で、建設発生土の有用な活用方法として、流動化処理土工法が広まりつつあります。この工法では、建設発生土、大量の水、セメントなどの固化材を混ぜて作られる流動化処理土が、狭い空間での埋め戻しや裏込め、充填に利用されています。しかし、セメントを固化材として用いることが多いため、流動化処理土はアルカリ性を示し、植生に悪影響を及ぼすことや、有害な六価クロムの溶出リスクが生じる問題があります。六価クロムはアルカリ条件下で溶出しやすいため、流動化処理土のアルカリ性を低下させることが求められます。

本研究では、流動化処理土の性能を保ちつつ環境負荷を減少させるために、石膏を主成分とする中性の固化材を一部添加し、その流動化処理土の室内試験と定性分析を行いました。


研究内容

本研究では、一般的に使用される流動化処理土の配合条件を基に、固化材の構成比や添加量を変更して複数の配合条件で試験体を製作しました。試験体に対しては、室内での一軸圧縮試験を含む流動化処理土の必要性能を確認する試験と、土懸濁液のpH値を測定する試験を実施しました。また、定性分析としてXRD分析およびSEM-EDS分析を行いました。

室内試験の結果、中性固化材を添加した試験体では、pH値の低下と必要な性能の達成が確認されました。これらの結果から、配合条件の改良によって流動化処理土のpH値をさらに低下させる可能性が示唆されました。

分析結果によれば、材料が7日経過した試験体内で、二水石膏およびエトリンガイトの生成が確認されました。これらの生成物がpH値の低下と強度の向上に寄与したことが判断され、使用した中性固化材としての石膏や再生石膏が、環境負荷を低減させる固化材として有効である可能性が示されました。


今後の展望

本研究で得られた知見を踏まえ、今後は配合条件の改良を進め、pHのさらなる低減を目指します。また、中性固化材の代替可能性として廃石膏の使用についての探求を行います。さらに、六価クロムを含む有害物質の溶出に関する試験を実施予定であり、これによって流動化処理土での建設発生土及び石膏の活用可能性をさらに高めることを目指します。