重藤李佳子さんがGPS/GNSSシンポジウム2023にて学生最優秀研究発表賞を受賞

2023/11/22
  • 社会基盤学専攻

【受賞者】
重藤 李佳子 さん(社会基盤学専攻 1年生)
共同研究者:野口果鈴さん(2022年度学部卒業生),滝川正則さん(アジア航測),北村啓太郎さん(アジア航測),平松孝晋さん(アジア航測),小林泰三教授(立命館大学),中川雅史教授

【指導教員】
中川 雅史 教授(土木工学科)

【学会・大会名】
GPS/GNSSシンポジウム2023

【賞名】
学生最優秀研究発表賞

【発表題目】
月面調査のためのLiDAR-SfM/MVSによる点群の取得

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【研究内容】
米国主導のアルテミス計画をはじめ、月面拠点開発に関する研究活動が近年において活発化しています。月面は地球上と違い、宇宙放射線や大きな温度差など、人体への負荷が極めて大きいため、月面拠点開発においてはロボット利用が望ましく、遠隔施工や無人建設の技術開発が推進されています。また、地球から月面へ1kgの物資を運搬するために1億円のコストがかかるため、月面での施工は手戻りをなくすことが必須であり、デジタルツインの適用による綿密な施工シミュレーションが必要です。

月面拠点開発に関する研究活動と並行して、国内ではi-Constructionの取り組みが進められています。無人建設技術の開発は、施工の省力化や人手不足の解消のために推進されており、この取り組みの中で、Simultaneous Localization and Mapping(SLAM)やStructure from Motion and Multi-view stereo(SfM/MVS)などの画像計測による点群の取得と利活用に関する技術開発が進んでいます。しかしながら、現在の月面は、拠点開発における施工や地図作成に必要な測量用基準点は未整備であるとともに、3D計測で必要となるGNSSもありません。さらに、月の表面はレゴリスと呼ばれる堆積物で覆われており、画像特徴や形状特徴が乏しく、月面においては、従来型の画像計測手法やSLAMの適用は難しいです。

そこで本研究では、標識設置型LIDAR-SLAMの適用による測量手法の検討とStructure from Motion and Multi-view stereo(SfM/MVS)点群に対してLiDAR-SLAMで取得した標識位置を利用することでスケール情報を付与する手法(LiDAR-SfM/MVS)を提案しました。月面環境を模擬したフィールド(JAXA 相模原キャンパス宇宙探査実験棟)での実証実験を実施し、提案手法を検証しました。複数の赤色球体標識をフィールド上の複数位置に散布し、開発した3D計測システムを搭載した自律クローラ型ロボットで走行計測し、LiDAR-SLAMや画像計測にとって劣悪な模擬月面環境においても、提案手法によって色付き高密度点群を取得できることを確認しました。現在は、月面測量ローバの開発を軸として、提案手法の改良とともに、土質・地盤調査ツールとの同時計測システムの開発と検証に取り組んでいます。

今後の課題としては、提案手法を活用して位置情報を含む高解像度画像をBIM/CIMデータとして活用するシステムの構築が挙げられます。国内の社会インフラは、高度経済成長期に建設されたものが多く、老朽化が進んでいる土木構造物の割合が急速に増加しているという社会的な問題があります。また、国内は災害が頻発する特徴もあり、緊急災害観測技術の重要性がますます高まっています。さらに、アジア地域を含む海外では近年経済成長が著しく、将来的にはインフラの老朽化や高齢化人口が社会的な課題となる可能性があります。本研究に加えて、上記の社会的な課題に貢献するために、衛星観測や航空・UAV測量、地上レーザースキャニング、ウェアラブルデバイスの利用など、様々な測量技術を組み合わせた手法を提案します。これにより、多様な手段を活用して社会インフラの点検やモニタリングを行い、社会課題の解決に取り組みます。