齋藤一葉さんがGPS/GNSSシンポジウム2023にて学生優秀研究発表賞を受賞

2023/11/22
  • 社会基盤学専攻

【受賞者】
齋藤 一葉 さん(社会基盤学専攻 2年生)
共同研究者:川崎 悠輔 さん、武林 正昭 さん、藏重 裕俊 さん、西村 正三 さん(計測リサーチコンサルタント)、三輪 昌史 准教授(徳島大学)、中川 雅史 教授

【指導教員】
中川 雅史 教授(土木工学科)

【学会・大会名】
GPS/GNSSシンポジウム2023

【賞名】
学生優秀研究発表賞

【発表題目】
インフラ点検 UAV に用いる屋内外シームレス測位とカメラ位置調整機能の性能評価

saitousan

【研究内容】

社会インフラにおける市民の安全と社会経済活動は、建設後の適切な管理と維持が非常に重要です。インフラの点検作業では、広範囲にわたって何度も点検を行うため、時間と労力がかかります。そこで、この問題を解決するため、橋梁やダムの点検でUAV(ドローン)の導入が進められています。UAVは、ジンバルカメラにより様々な角度から構造物の点検を行うことができるため、効率的な3次元計測プラットフォームとして利用することができます。しかしながら、UAV飛行制御に用いるGNSS測位は、衛星信号が微弱、あるいは受信できない土木構造物の下の空間などでは困難です。また、インフラ点検作業では、UAVの飛行中に各画像の撮影位置と向きとともに、高解像度の点検画像を撮影する必要があります。一連の点検画像を合成する場合、撮影位置や角度の測定に誤差があると、位置のずれが発生します。そのため、GNSS/GNSS測位環境が混在する橋梁やダムなどの土木構造物におけるUAV飛行を支援する屋内外シームレス測位機能と、点検作業で撮影された画像間の位置ずれを補正するカメラ位置調整機能が求められます。

そこで本研究では、GNSS測位環境と非GNSS測位環境の両方でUAVをシームレスに飛行させるための基本機能として、RTK-GNSS測位とカメラによる位置姿勢推定(Visual OdometryVO)を組み合わせた屋内外シームレス測位技術、および、VOによって生じる累積誤差問題の調整制御手法を提案しました。また、カメラ位置調整機能に関しては、画像特徴点の検出・対応づけ処理を利用する複数撮影画像の合成手法を提案しました。テスト用のコンクリート橋梁を対象としたUAV飛行実験では、屋内外シームレス測位で必須となる測位モードの高速切り替え処理について、RTK-GNSS測位のステータス(Fix解、Float解など)を利用するアイデアを検証しました。また、VOによって生じる累積誤差問題の調整制御手法が安定的なUAVの自律飛行に影響を与えないかを検証しました。さらに、コンクリート壁面を撮影対象として、SURFSpeeded Up Robust Features)を用いた特徴点検出および画像マッチングを行い、提案手法を評価検証しました。

今後の課題としては、提案手法を活用して得られた位置情報つき高解像度画像をBIM/CIMデータとして活用するシステムの構築が挙げられます。社会インフラは、高度経済成長期に建設されたものが多く、老朽化が進んでいる土木構造物の割合が急速に増加しているという社会的な問題があります。本研究の提案手法を用いてUAVの自律飛行を支援しながら、点検作業中に構造物の損傷個所を検出して撮影を行う自動検出機能を求められると考えています。これにより、様々な先端技術を活用することで社会課題の解決に取り組んでいきます。