椎名基貴さんが令和5年度土木学会全国大会(第78回年次学術講演会)にて優秀講演者賞を受賞

2023/11/15
  • 社会基盤学専攻

 

【受賞者】
椎名 基貴 さん(理工学研究科/社会基盤学専攻2年)

【指導教員】
稲積真哉 教授(土木工学科)

【大会名】
令和5年度土木学会全国大会(第78回年次学術講演会)

【賞名】
優秀講演者賞

【発表題目】
既存杭引抜孔における循環式撹拌工法の定量的評価

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【研究背景・目的】

高度経済成長期に建設された建築物の老朽化が進行しており、近年これらは深刻な問題として露呈してきている。既設構造物の多くは杭基礎を採用しているため、既設構造物の解体撤去後において新たな当該土地を図る場合、新設構造物の杭基礎等に既存杭が干渉しないように確実に既存杭を撤去する必要がある。一般的に既存杭引抜工法における埋戻し処理は、セメントミルクなどの充填材を使用し、引抜孔内に注入される。その際、埋戻しが不十分であると周辺地盤の陥没や沈下などの問題を引き起こす可能性があり、適切な基準や検証方法に関する標準が確立されていない。また施工対象が地盤ということもあり、施工中の内部状況を直接目で確認することが不可能であるため、地盤内の可視化が求められている。そこで本研究では、埋戻し工法のひとつである循環式撹拌工法に着目し、この工法に関してMPS-CAE解析を用いて可視的に評価および数値シミュレーションすることで、引抜孔内部の挙動を定量的に評価する。

 

【研究内容】

循環式攪拌工法における埋戻し手順として、まず既存杭引抜きと同時にベントナイト水を注入し孔壁を保護する。このとき引抜孔の中は上部にベントナイト水、下部に削孔泥水のおおまか2層になっている。ここで循環システムである吸入管を引抜孔の先端まで挿入し、孔内のベントナイト水と杭周辺泥水を比重が安定するまで循環攪拌を行う。その後、引抜孔の全長に合わせたセメント粉体の配合量を添加し、再び比重が安定したら循環攪拌が完了となる。

本研究では、循環式撹拌工法におけるベントナイト水と削孔泥水の混合挙動に関して、粒子法に基づき可視的再現および数値シミュレーションを試み、現場検証結果と比較した。それにより本工法の循環システムにおける引抜孔内の比重を十分に再現することができた。このことから、引抜孔内の混合挙動を定量的に判断することができ、混合が不十分である箇所の特定や最適な埋戻し材料の判定等、管理を適切に行うことが可能になる。

 


【今後の展望】

今後は実現場で適用を念頭に、より整合性を確認するため実現場で各深度の密度を確認し、解析結果との比較を行う。さらに、実現場の再現性を高くするために再現解析においてもベントナイト水の排出から実施する必要があると考える。また本研究ではある一つの物性値での再現解析であったため、今後は様々な物性値においても数値シミュレーションを行う必要がある。