加藤遥馬さんが第58回地盤工学研究発表会にて優秀論文発表者賞を受賞
- 社会基盤学専攻
- 理工学研究科
【研究目的】
土地の再利用のために既設構造物を解体・撤去する際、残存する杭基礎は産業廃棄物に指定されるため、既存杭は原則的に引き抜く必要がある。杭を撤去するにあたって、杭基礎を引き抜いた際に地盤内に生じる掘削孔の埋め戻しが不十分であると、周辺地盤の地盤沈下や掘削孔の陥没、さらに新設杭打設時のずれや傾斜等の悪影響が及んでしまうため、適切な埋め戻しの処理をしなければならない。掘削孔には泥水が残存しており、引抜後の杭基礎と同じく廃棄物であるため、再利用、または廃棄のために埋め戻しには流動化処理土を用いて、掘削孔に注入し残存泥水と攪拌する工法や、泥水と完全に置換する工法などがある。 いずれの工法においても均等な強度発現のためにはレオロジー特性として、掘削孔上部・中部・下部に行き渡るような材料不分離性に優れた流動化処理土の検討が課題となる。
ここで、レオロジー特性は流動化処理土に用いる添加材や増粘剤によるところが大きい。したがって、本研究では水中不分離増粘剤を添加した流動化処理土を作成し、室内試験によって取得されるレオロジー特性値をMPS解析に組み込むことで、実験と解析結果の整合性を確認するとともに、特性値による挙動の差異を明らかにし掘削孔への試用に対して適切な流動化処理土を評価することを目的とした。
【研究内容】
本研究では水中不分離増粘剤を添加した流動化処理土を作製後、初めにブリーディング試験を含む諸実験を実施し、材料不分離性や粘性、鉛直方向の強度のばらつきについて評価した。その結果を踏まえ、粒子法に基づくコンピュータシミュレーション「MPS-CAE」を用いて、ブリーディング試験の再現モデルを作成、実験から得られた粘性値をパラメータとして解析を実施し、解析結果の可視化によって実験結果との比較及び評価を行った。その結果、解析において実験時と同様の挙動を再現したことより、解析の妥当性を確保したこと、また実験と解析の双方の観点から流動化処理土のレオロジー評価が可能となることが成果として挙げられた。
【今後の展望】
本研究で実施した解析は定性的な観点での比較が主となったため、パラメータや解析設定についてより詳細に検討することが今後必要となる。また異なる配合条件で同様に解析を実施することや、取得した粘性値で実大規模の掘削孔モデルの解析を実施することで、掘削孔処理に対して適切な流動化処理土のレオロジーを評価できると考えている。
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