デジタルツインによるサイバー・フィジカル連携型セキュリティ基盤の研究開発に着手 〜Beyond 5G時代に顕在化する新たなIoTセキュリティ脅威への対策〜

2022/10/05
  • 研究
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学校法人芝浦工業大学(東京都江東区/学長 山田純)情報工学科・新熊亮一教授らの研究チームは、株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下「KDDI総合研究所」)、国立大学法人横浜国立大学(本部:神奈川県横浜市、実施責任者:吉岡 克成 准教授、以下「横浜国立大学」)、学校法人早稲田大学(本部:東京都新宿区、実施責任者:戸川 望 教授、以下「早稲田大学」)らと、国立研究開発法⼈情報通信研究機構(本部:東京都小金井市、理事長:徳田英幸、以下「NICT(エヌアイシーティー)」)の「Beyond 5G研究開発促進事業(注1)」に係る委託研究の公募で、「デジタルツイン(注2)によるサイバー・フィジカル連携型セキュリティ基盤」(以下、本研究開発)を提案し、2022年8月5日に採択(注3、採択番号:05201)され、この度研究に着手しました。

【芝浦工業大学ニュース】デジタルツインによるサイバー・フィジカル連携型セキュリティ基盤の研究開発に着手.pdf
ポイント
  • Beyond 5Gにおいて、サイバー空間とフィジカル空間の融合が進展した場合、新たなセキュリティ脅威が顕在化することが予想される
  • サイバー空間での観測技術に加え、不正回路検知などのフィジカルィジカル空間観点での検査・観測技術も高度化するための研究開発を進める

背景

これまでIoTのセキュリティについては、ネットワーク上での攻撃情報や観測情報に基づいて利用者に注意喚起を行うなど、主にサイバー空間での対策が進められてきました。一方、Beyond 5Gにおいてサイバー空間とフィジカル空間の融合が進展すると、攻撃やその影響はサイバー空間だけではなくフィジカル空間にも拡大し、これまでにないセキュリティ脅威が顕在化することが予想され、これらの脅威に対応するために新たなセキュリティ対策が求められてきます。

研究開発の概要

本研究開発では、Beyond 5Gで顕在化することが予想される新しいセキュリティ課題の解決を目指し、サイバー空間での観測技術に加え、不正回路検知などのフィジカル空間観点での検査・観測技術も高度化するための研究開発を進めます。また、得られた情報を集約してセキュリティ対策を目的としたデジタルツインを生成し、サイバー・フィジカル全体での自律的なセキュリティ確保を実現する技術を研究開発します(図)。さらに、Beyond 5Gアプリケーションによる実証を通じて、IoTやサイバー・フィジカルシステムを収容するBeyond 5Gネットワークスライス(注4)への適用を想定したセキュリティ基盤を本研究開発で構築します。


画像1図.デジタルツインによるサイバー・フィジカル連携型セキュリティ基盤のイメージ
各組織は、産学連携の下、研究開発・実証を強力に推進し、IoT向けのBeyond 5Gネットワークスライスに適用可能なサイバー・フィジカル連携型セキュリティ基盤を構築することで、Beyond 5Gに求められる安全性・信頼性の確保に貢献していきます。

研究開発体制

機関名 研究開発における役割
KDDI 総合研究所 ・本研究開発の全体統括
・デジタルツイン生成技術
・次世代IoTサイバー・フィジカル攻撃防御技術
・Beyond 5Gのための次世代IoT広域観測技術
・フィジカルデバイスレポジトリ構築・連携技術
横浜国立大学 ・Beyond 5Gのための次世代IoT近傍観測技術
・次世代IoTデバイスプロファイリング技術
早稲田大学 ・フィジカルデバイス不正検知技術
芝浦工業大学 ・モビリティシステムに対するセキュリティ攻撃負荷実験
・提案セキュリティ基盤によるセキュリティ攻撃耐性向上の実証

芝浦工業大学の取り組み

芝浦工業大学では、デジタルツインによるサイバー・フィジカル連携型セキュリティ基盤(提案基盤)の実アプリケーションとして、モビリティシステムを想定した実証実験を行います。モビリティシステムをスタンドアロン(ネットワーク接続なし)、ネットワーク補助、デジタルツインの3つの型に区分し、また、自動運転化の段階を手動運転、運転補助、自動運転の3つに区分します。これら各型・各段階の組み合わせに対し、サイバー攻撃、フィジカル攻撃、それらの複合の3種のセキュリティ攻撃がモビリティシステムに与える影響を明らかにします。さらに、その影響を提案基盤により解消、または軽減可能であることを示し、提案基盤の適用範囲を明らかにしていきます。


備考

(注1)Beyond 5G研究開発促進事業について(NICT Webページ)
(注2)デジタルツイン
   現実空間の情報をデジタル化し、計算機上にも仮想モデルとして再現し、 現実空間と仮想空間を
   情報連携させることにより、分析や将来予測を可能とする動的モデル。
(注3)「Beyond 5G研究開発促進事業(一般型)」に係る令和4年度新規委託研究の公募(第1回)の結果(NICT お知らせ)
(注4)ネットワークスライス
   サービスに応じてネットワークを仮想的に分割し、サービス毎に適した特徴を持つネットワークとして運用する技術。