資料展示施設で来館者約300人へロボット・スタッフ・ボランティアのもてなし共存実験を実施

工学部機械機能工学科松日楽教授ら研究チームは、江東区深川江戸資料館にて2021年8月13日から3日間でロボットとスタッフ、ボランティアが共存し約300人の来館者をもてなす共存実験を実施しました。共通の通信プロトコルRSNPを使い、ロボット、センサ、タブレットをインターネット経由で活動状況を把握するシステムを完成させて運用しました。
ロボットは、「手指消毒の案内」など常時案内する必要があることを伝えたり、アンケート回収をエンターテイメント化したりなどの役割を担いました。スタッフの方々にとっては、ロボットを含む新しい展示方法を提案することができます。また、案内タブレットがあることで、一人で回りたい見学者や多言語対応など、様々なニーズにこたえることができ、ボランティアスタッフは会話を楽しみたい来館者へ集中することができます。すべてをロボットに置き換えるのが目的ではなく、スタッフやシニアボランティアと共存することを目指しています。

入館から退館までのサービスを人とロボットが役割分担

異種ロボットによる多種サービスのネットワーク実証を、スタッフ、ボランティア解説者、来館者共存下で行ないました。ロボットで、来館者の人数・人流を計測から写真撮影、移動案内、アンケートを実施。さらに、株式会社東芝が開発した搬送ロボット、東京都立大が研究しているビーコン位置の検出で、適宜展示内容をタブレットで説明するシステムを、RSNPで繋ぎました。どこにタブレットを持った人がいるか、アンケートに何件回答があったか、写真撮影を何回実施したか、などがインターネット経由でどこからでも確認することが出来ます。
【入館から退館までに出会うロボット・タブレット】
１、受付ロボットによる入退館時の挨拶、人数確認、人流把握、
 ２、カメラマンロボットによる記念写真、
 ３、テレプレゼンスロボットによる遠隔からの見学
 ４、ビーコンを使った展示案内タブレット(東京都立大学)
 ５、卓上コミュニケーションロボットによる指手消毒声掛け(東京都立大学)
 ６、小型移動ロボットによるパンフレット搬送（株式会社東芝）
 ７、マスコットロボットによるアンケート調査

来場者/参加者アンケート結果

ロボットを見るのは8割が初めて。受付に置いた挨拶ロボット、手指消毒、アンケートロボットは実用的でわかりやすいこともあり、9割以上が高評価。次いで、記念写真のカメラマンロボットも高評価を得ました。また、タブレット案内では2割程度がタブレットよりもボランティアの案内のほうが良いとの結果で、話題の抱負さが一因と考えられます。
参加した卒業生、参加企業からは、学生時代に経験したロボットの社会実装実験の経験が、社会人として働く中で役に立っており、教育効果の高さを体感しているとの感想がありました。
その一方で、参加学生はロボットの不具合の調整により、来客対応がおろそかであったり、何を実施しているのか来場者に説明が不十分であったりと反省点も多く上がりました。参加学生の感想では、デモは8割が上手く実施できたとのことでしたが、来場者への説明に関しては7割に留まり、来館者への説明の難しさやデモが上手く実施できないときの課題に気付くことができました。

共通通信プロトコルRSNPを利用したロボットのIoT化

松日楽研究室は、ロボットサービスイニシアチブ（RSi）が開発・公開している共通通信プロトコル「RSNP」を使い、ロボットのIoT化の社会実装を見据えた実証実験を2005年から重ねてきました。多様なサービスロボットが開発されていますが、ロボット間の連携が取れていません。連携することで1機種では実現できないサービスを実施することができ、コロナ禍における非接触サービスなど社会の多様な課題に対しても対応が可能になります。

協力機関

 ・江東区深川江戸資料館
・株式会社東芝
・東京都立大学システムデザイン学部山口・下川原研究室
・タケロボ株式会社
・ロボットサービスイニシアチブ（RSi）
（順不同）

 今後

松日楽研究室では、共通通信プロトコルを用いて各ロボットの活動状況をインターネットからどこにいても見ることができる、異種ロボットのネットワーク連携の実証実験を7年間行ってきました。データ取得の仕組みは完成し、今後はロボット間のリアルタイムな連携やサービス提供の仕組みを完成させます。