ボルトの緩みを低コストで定量評価できる手法を開発

2020/09/09
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英エジンバラ大学との国際共同研究で周波数と軸力の相関に基づくボルト先端部の緩み検出

芝浦工業大学(東京都港区/学長 村上雅人)機械機能工学科の細矢直基教授、英エジンバラ大学工学部のFrancesco Giorgio-Serchi博士らの研究グループは、ボルトの緩みを低コストで定量評価できる手法を開発しました。この技術は、人には聞こえない超音波レベルの振動計測を行い、ボルト先端部の周波数と軸力の相関を明らかにすることでボルトの緩みを検出するものです。点検者の技量や熟練度に依存せず、プロセスも簡便なため、測定を低コスト化することができます。ネジの緩みを検知するための機械検査などへ導入が可能です。

◆研究背景
ボルトは飛行機や電車等からジェットコースター、椅子に至るまで幅広く使用されています。それらの本体が稼動することによって、ボルトの軸力は低下していきます。このような現象を「緩み」といいます。実際に、飛行機、電車やジェットコースター等においてはボルトの緩みが原因の事故が起きており、未だボルトの緩みを100%検知できていない現状があります。
従来の測定方法では、叩いた音の変化を点検者が聞いて判断する打音検査が主流でした。しかしこれは点検者の技量によるばらつきが大きいため、ボルトは正確に計測することができません。今回開発した測定方法では、人には聞こえない超音波領域の音を使うことで、打音検査では分からない微妙な緩みを検知できます。また、汎用の振動試験装置を使えるため、安価で導入できます。本手法を検査等で活用することでボルトの緩みおよび事故の発生を未然に防ぐことができます。

◆現状のテスト方法および特徴 
今回の測定方法では、対象物を叩いて軸力に対するボルト先端部の固有振動数の変化を調べることで、軸力を評価します。

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今回の測定方法
 
従来の測定方法
トルクテスト ハンマリングテスト
点検者の技量や熟練度に依存しない
将来的には、遠隔計測および自動化を実現し、定量的評価が可能に
ねじ着座面の摩擦特性が変化するため、軸力を正確に測定することが難しい 点検者の技量によるばらつきが大きいため、緩みの度合いを定量的に評価することが難しい
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図1ボルト・ナット締結体の軸力測定

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図2モード周波数の変動係数を取得し、ボルト先端部のゆるみ(上)とボルト先端部の固有振動数(下)の関係

◆研究成果
対象物を叩いて振動させた結果、締まっているときはボルト先端部の振動モード形の固有振動数が高く(細かく速く揺れる)、緩むことで低下(大きくゆっくり揺れる)することがわかりました。従ってボルト先端部の固有振動数と軸力との間には明確な関係が存在することが確認され、軸力の減少に伴って振動数が減少することが示されました。
現在企業と共同研究を実施しており、今後はこの手法を活用した検査の実現に向けたシステムづくりを目指していきます。これらの研究は、コストの安さにより発展途上国への実用化が期待されます。

◆論文情報
Naoki Hosoya, Takanori Niikura(新倉孝典 機械工学専攻), Shinji Hashimura, Itsuro Kajiwara,Francesco Giorgio-Serchi, Axial force assessment of bolt/nut assemblies based on bending mode shape frequency of protruding thread part using ultrasonic modal analysis, Measurement 162 (2020) 107914.
https://doi.org/10.1016/j.measurement.2020.107914
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