紙のソフトロボット 構造や動きの印刷に成功

2020/11/17
  • 研究
  • プレスリリース

インクジェット印刷で紙が自律的に折り紙へ

芝浦工業大学(東京都港区/学長 村上雅人)工学部電気工学科重宗宏毅助教ら研究チームは、標準的なインクジェットプリンタを利用して、紙へ自律的に折り畳む順序をプログラムし、構造や動きの印刷を可能にしました。紙のセルロース繊維と印刷する薬液の反応をエネルギーとして、自律的に立体構造が形成され、さらに動き出すソフトロボットの開発に成功しました。
構造や動きを印刷することで、柔らかくもろい製品の立体的な包装に活用したり、太陽電池パネルを常に太陽に向かせることでエネルギー収集量を増やしたり、技術の幅広い応用が期待されます。

ポイント

  • インクジェットプリンタで印刷後、紙が自律的に動き折り畳まれる方法を確立
  • 濃度の違う薬液をインクに使用し、折り畳み順序や折り畳み位置の指定が可能
  • 折り畳み動作には、電力などの外部エネルギー源は不要
figure3図:自律的に折られる構造物の印刷

A)薬液濃度の異なるインクを戦略的に印刷することで、各折り目の位置や折るタイミングを制御することができる。
C)紙はしごを傾けたり、掛けたり、引っ込めたりする様子。

Programming Stepwise Motility into a Sheet of Paper Using Inkjet Printing
Shigemune et al. (2020)
Advanced Intelligent Systems
DOI:10.1002/aisy.202000153Under Creative Commons license CC BY 4.0
芝浦工業大学ニュース_紙のソフトロボット 構造や動きの印刷に成功.pdf

研究概要



植物の駆動メカニズムを模倣し、紙が自動的に折り畳まれ、折り紙構造を作り出す方法を確立しました。標準的なインクジェットプリンタのインクカートリッジに薬液を入れ、紙に単純な直線を印刷することで、線を起点に紙が自動的に折り畳まれます。そして、濃度の違う薬液をインクカートリッジに設置することで、折り畳みの順序付けを可能にしました。それに伴い、薬液の濃度と折り畳み時間の関係性についても解明しました。カートリッジの数を増やすほど、より多くの動きを紙に対してプログラムできる可能性があります。

今後の展開



 研究チームは今後、今回発表した「紙が自律的に折り畳まれる方法」と、以前発表した「電気配線を普通のプリンタで紙に印刷する方法」の二つの技術を組み合わせることに取り組みます。どちらも一般的なインクジェットプリンタを用いた手法で、特殊な機材を必要としていません。短時間で簡単に電子部品や紙製ソフトロボットなどの製作を可能にしていきます。

論文著者



芝浦工業大学
工学部 電気工学科 重宗宏毅助教
工学部 機械機能工学科 前田真吾准教授
早稲田大学
理工学術院 基幹理工学研究科 機械科学専攻 岩瀬英治教授
理工学術院 先進理工学部 応用物理学科 橋本周司教授
理工学術院 創造理工学部 総合機械工学科 菅野重樹教授
理工学術院 先進理工学部 応用物理学科 澤田秀之教授

論文情報


論文名:Programming Stepwise Motility into a Sheet of Paper Using Inkjet Printing
掲載誌:Advanced Intelligent Systems
DOI  : 10.1002/aisy.202000153

研究助成



本研究はJSPS科研費(18H05473、18H05895、19K20377)と、早稲田大学助成金特定課題(2018S-125)の助成を受けたものです。



お問い合わせ

芝浦工業大学 企画広報課

〒135-8548 東京都江東区豊洲3-7-5(豊洲キャンパス本部棟2階)

TEL:03-5859-7070 / FAX:03-5859-7071

E-mail:koho@ow.shibaura-it.ac.jp