しばうら人 高野圭さん

2022/03/14
  • しばうら人

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楽しく教師デビュー!30歳で営業マンから理科教師へ転身

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3年生最後の授業を終えてお別れの前に

高野圭さん
2007年機械工学科卒業
北海道大樹高校教諭 理科担当

「天空の城ラピュタ」の少年パズーに憧れて

<高校の頃、テレビで放映されていた『天空の城ラピュタ』に出てくる主人公パズーが機械をいじっている姿に憧れて、工学部機械工学科に入学した高野さん。一人暮らしをしながら、仲間と一緒に取り組んだ「機械設計製図」の講義も、まるで「紅の豚」に出てくるフィオみたいだと思い、講義やバスケットボール部の活動などの学生生活を楽しんでいたと言う。「朝コンビニでアルバイトをして、廃棄商品をもらって昼食をしのぎ、部活後に大宮のファミレスで0時まで働いた後、空いている客席を利用して製図の課題をコツコツ仕上げていたのが今でも懐かしいです」と当時を思い出す。/p>

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研究室(山口ゼミ)にて

「人」に伝える

学生生活を楽しむ一方で、3年次には「周りと同じく技術職の進路で良いのか?」と迷い始めたと言う。友達は迷わず大手メーカーなどの技術職を受けていたので、最初の頃は高野さんも技術職を志望し、芝浦キャンパスのキャリアサポート課を利用して初めての履歴書を仕上げた。しかし大学で講義を受けていく中で、漠然と「どちらかと言うと、技術や、技術が活かされている製品を、”人に伝える”仕事の方が好きなのではないか」と感じるようになり、営業職に魅力を感じた。憧れだったギターを始め、当時の趣味はもっぱら音楽だった高野さんは、音関係の企業を目指した結果、他業種の会社も含め6社に合格。その中で音響メーカーの営業職に就職することにした。卒業研究では、「木に囲まれた部屋」の中で「森林などの癒やしのDVD」を見た視聴者のアミラーゼを計測し、ストレス軽減がされているかどうかなどを研究。「人の感じ方」「感性を製品に生かす」という研究の魅力を感じていたと言う。

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卒業論文のポスター発表(写真右から2番目)
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学位記授与式にてゼミのメンバーと(写真右下)

営業マンから理科教師へ


音響メーカーに約5年間勤め、営業職のやりがいも感じていた高野さんだが、大学生に業務内容などを説明するリクルーターの仕事などを通して「大人を相手にするより、これから未来がある子ども(若者)を相手に仕事がしたい」と思い始めた。その時から教師を目指し、退職して通信教育課程のある教育学部で学び直すことに。主にレポートや試験で単位を取得していった。 通学して集中講義を受ける何度目かのスクーリングでは、「理科教育法」という講義と、たのしい授業の実践をする先生に惚れ込み、通学生向け講義に助手という立場で週1度の見学にも通った。「多くの教科の教員免許が取得できる中で理科(物理)にこだわったのは、芝浦工業大学時代があったからかもしれません。ものづくりや工業科目に不信感や苦手感を抱いていたら、英語や数学、理科でも生物や化学など別の教科を選んでいたと感じています」と、二度目の学生生活を振り返る。

実験授業を生徒と楽しむ


助手として学んだ、実験結果を予想させる授業手法「仮説実験授業」を、赴任した北海道の高校で実践し、高野さんの授業は生徒から「たのしい授業」だと評判に。「技術者にはならなかったけど、今はものづくりを目指す生徒、研究者・科学者を目指す生徒たちに授業を通して理科(主に物理)を教えており、生徒に授業を楽しんでもらうことを自身も楽しんでいます。回り道はしたけれど、芝浦工業大学で学んだ『安全工学』『材料力学』『機械工学』などの工学の基礎は、生徒に力学分野を伝える上で大いに役立っています。味気ない力学の問題も、『壊れない橋を作るためには』『どれぐらいの力までだったらこの製品は許容してくれるか』など、少しの工業・ものづくり的視点を加えるだけで、力学を学ぶ、計算問題を解く意欲につながっていると思います」と芝浦工業大学時代を思い出す。「大人になるのも悪くないな」というイメージを生徒に伝えるため、授業を楽しく行い楽しく仕事をしている姿を見せているという高野さん。教員免許取得や現在の授業内容の様子をつづった単行本「たのしく教師デビュー」も2018年夏に刊行し、新たな赴任先で5年目となる教師生活を続けている。
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学園祭で生徒と
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全国で販売中の著書「たのしく教師デビュー」(仮説社)