【授業レポート】自動販売機における購買体験をデジタル技術で再設計する【プロジェクト演習8】
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デザイン工学科で開講されている「プロジェクト演習」は、課題発見・問題解決・提案のプロセスを実践的に経験する、デザイン工学科の特徴的な授業の一つです。学部3年生の必修科目で、1年を通じて複数人の教員から指導を受けます。今回紹介するデザイン工学科・益子宗教授(メディア体験デザイン研究室)の演習授業で は、企業や学外のステークホルダーから課題を発掘し、アイディア提案、サービスや製品のプロトタイプ制作まで行い、一連のデザインプロセスを実践しています。
2026 年度第1クオーター(4月〜6月)では、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社(以下、コカ・コーラ ボトラーズジャパン)および株式会社 MOYAI のご協力のもと、テーマを「自動販売機における購買体験の再設計」としました。豊洲キャンパス内のコカ・コーラ社自動販売機 2台に、MOYAI 社のデジタルサイネージ「INFODIA STAND」を設置し、学生がフィールドワークやプロトタイプの動作確認に活用。デジタルサイネージやAI、センサーといったデジタル技術を用い、9 名の学生が新しい「選択行動」のデザインに取り組みました。
授業課題
自動販売機での購買は、短時間のうちに意思決定が行われる——そうした点が、この購買体験の特徴でもあります。
自動販売機における利用者の購買プロセス(自販機選択または商品選択)を理解し、利用者が「思わずコカ・コーラ社自動販売機を選び、購入したくなる」新しい購買体験およびその仕組みをデザインしてください。
学生たちは、デジタルサイネージ(必須)を中心に、カメラ・センサー・AI などのデジタル技術を活用した購買体験を提案。ターゲットユーザーや利用シーン、Before/After での体験の変化、インタラクションの流れを整理し、プロトタイプで伝えることが求められました。
授業で活用した INFODIA STAND
MOYAI 社の「INFODIA STAND」は、自動販売機上部を活用したデジタルサイネージです。今回の授業では、コカ・コーラ ボトラーズジャパン・MOYAI のご協力により、豊洲キャンパス内のコカ・コーラ社自動販売機2台(本部棟4階・研究棟2階)にINFODIA STANDを設置していただきました。学生たちは、企業の担当者からの説明を通じて、自動販売機市場の動向やデジタルサイネージの技術・トレンドを学んだうえで、日々通うキャンパス内の自販機を観察・分析。教室での検討だけでなく、実際に設置された自販機の前で、利用者の選択行動や購買プロセスを読み解き、提案の動作確認を重ねました。


企業と連携した、実践的な演習
■コカ・コーラボトラーズジャパン・MOYAIによる基調講演
第2回授業(4月23日)には、コカ・コーラ ボトラーズジャパンの竹内和也氏、MOYAI 代表取締役 CEO 渡邊亮氏をお招きし、基調講演を行いました。竹内氏からは自動販売機市場の動向や、利用者の購買行動の変化について、渡邊氏からはデジタルサイネージの動向や、 INFODIA STAND の概要について説明がありました。学生たちは、自販機ビジネスの現場でどのような視点が持たれているか、またサイネージがどのような可能性を持つかを学び、自身の提案の方向性を考える手がかりとしました。

■実機を使った技術演習
初回授業(4月16日)から、センサーや IoT の基礎、プログラミング的思考の演習に取り組みました。骨格検出や音声認識など、AI を活用した技術演習を通じて、デジタルサイネージと連動するインタラクションの実装方法を学びました。
また、キャンパス内の自販機を用い、サイネージへの映像投影や、カメラ・AI を活用したインタラクションの動作確認を繰り返し行いました。デジタル技術と実機を組み合わせた実践的な活動を通して、プロトタイプづくりの基礎を身につけていきました。
■提案デモとブレインストーミング
第3回授業(4月30日)では、AI を活用したインタラクション技術を学ぶ一環として、各自が考えた提案のデモを行いました。付箋を使ったブレインストーミングやグループワークを通じて、自販機選択・商品選択それぞれの購買プロセスにおける課題や機会を整理。他の学生のデモを参考にしながら技術の活用方法を学ぶ機会にもなり、中間発表に向けてターゲットユーザーと体験のBefore/After を具体化していきました。
■中間発表
第4回授業(5月14日)に中間発表を実施しました。コカ・コーラ ボトラーズジャパン・ MOYAI の皆さんをお招きし、学生一人ひとりがターゲットユーザー、利用シーン、体験コンセプト、インタラクションフローを発表。企業の方からは、実現可能性や利用者視点での分かりやすさなど、具体的なフィードバックをいただき、その後もプロトタイプの作り込みを重ねて最終発表に向けて準備を進めました。




最終発表会
発表では、キャンパス内の自販機の前で観察した購買行動の分析結果、Before/After で整理した体験設計、デジタルサイネージを中心としたインタラクションの仕組み、プロトタイプの制作過程などを説明。教室には模擬的なサイネージを搬入し、プレゼンテーション中に実演も行われ、発表後にはキャンパス内の自販機に投影して体験してもらう時間も設けられました。来場者が実際に自販機の前に立ち、サイネージの反応を確かめながら購買体験を試す——利用者の視点に立った共感を通じて、スライドだけでは伝わりにくい体験の質を共有する試みとなりました。学生一人ひとりの発表に対し、コカ・コーラ ボトラーズジャパン・MOYAIの皆さんよりフィードバックをいただき、7週間のプロジェクトを締めくくりました。
【制作したプロトタイプ】

Eyecon
アイコンタクトを用いて自販機と心を通わせるプロダクト

KANPAI to YOU
自動販売機で飲み物を買う行為に“乾杯”の体験を加えた、新しい購買体験の提案

Mimiflow
通行者の注意を自然に引き、立ち止まって選ぶ購買体験へつなげる提案

BELUCA
自動販売機に住むクリーチャー育成体験

ドキドキたまご自販機
購入した商品をかざすと画面内の卵からキャラクターが誕生するシステム

シロクマたちの秘密の工場
自動販売機の中にある飲み物を製造する秘密の工場という世界観を映像で展開

「ルーレット体験」とユーザーの繋がり
偶然の新しい飲み物との出会いや、その場にいるユーザー同士の予期せぬ繋がりを創出

きつねのみこと
キャラクターとの交流を通じて期待感と常連者への特典を加える提案

侍自販機
飲み物を買った瞬間に侍が英語と日本語で話しかけてくる体験
受講した学生の感想
- ・購買プロセスに沿って体験を組み立てる難しさと楽しさを学び、企業の方々と協力しながら進める本演習は非常に実践的でした。中間発表や最終発表では緊張もありました が、体験価値だけでなく導入・運用の視点からもフィードバックをいただき、大学の講義だけでは得られない貴重な経験となりました。
・自分が考えた仕組みが実際の自動販売機上で動作する様子を見られ、アイデアが形になる達成感を強く感じました。プログラミングや AI の活用は初挑戦でしたが、他の学生と意見を共有しながら試行錯誤することで、一人では気づけなかった課題も発見できました。
・同じ自動販売機という出発点から、それぞれ異なる着眼点でアイデアが広がっていく過程に感心しました。普段何気なく使っている自動販売機について、購買プロセスを初めて意識して考えることができ、動画制作や 3D 表現など新しい表現方法にも挑戦しました。
コメント
■協力企業:株式会社 MOYAI 代表取締役 CEO 渡邊亮
今回のプロジェクトでは、学生の皆さんが日常的に利用している自動販売機を題材に、利用者視点で課題を発見し、デジタル技術を活用して新たな体験を創出する取り組みが行われました。私たちにとっても、若い世代ならではの柔軟な発想や着眼点に触れる大変有意義な機会となりました。
■協力企業:コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社
飲料を販売するということが目的である自動販売機に、”新しい価値を”を与えてくれた皆さんの発想は、私たちの仕事にも大きな気づきを与えてくれました。自動販売機という身近な存在である自動販売機が人の注目を集め、印象に残るものとして、ここまで新しい意味や未来を与えられるのかと、正直感動しました。この数週間の中で試行錯誤した皆さんの成果物は、まさに“現場から生まれたイノベーション”そのものでした。
■デザイン工学科 益子宗 教授
学生にとって、日常の中で見慣れているデジタルサイネージのコンテンツを、自分たちの手で作れる——そんな体験は、新鮮なものだったのではないかと思います。同じく、何気なく利用している自動販売機での購買、立ち止まって選び、買う——その一連の行動に、改めて目を向ける機会にもなりました。コカ・コーラ ボトラーズジャパン・MOYAI の皆さんのご協力で、キャンパス内の実機の前で試行錯誤できたことも大きかったと思います。見過ごしがちな題材こそ、新しい思考の入口になる。そんな学びがあったクオーターだったのではないでしょうか。