しばうら人 寺尾 剛史さん(早稲田大学 理工学術院総合研究所)
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「研究者なんて自分には無理」と思う人に未来の道筋を示したい
ともすれば「狭き門」と考えられている研究職。システム理工学部数理科学科で応用数学を学び、大学院理工学研究科の修士・博士課程を経て、研究者となった寺尾剛史さんは、「大学入学時は自分が研究職に就くとは思いもしなかった」と振り返る。
キャリアの流れに身を任せ、研究者になったと語る寺尾さんに、現在までの道のりを伺った。

寺尾 剛史さん
Takeshi Terao
早稲田大学 理工学術院総合研究所
システム理工学部数理科学科
2015年卒業
理工学研究科 修士・博士課程
2020年修了
学生生活を一変させた研究室への配属
私は佐賀県出身で、周囲は地元の大学へ進学し、地元で就職する人が多い環境でした。しかし、「人生で一度ぐらい関東で暮らしてみたい」と芝浦工大へ進学。数理科学科を選んだのは、他の科目よりも数学が得意だったためで、数学系なら理工系に比べて実験が少なく、大学生活を自由に満喫できるイメージを抱いていたからでした。
入学後はアルバイトでお金を稼いでは、寝る間も惜しんで遊ぶ日々。クルマを購入後は、友人と共によくドライブにも出かけました。この時期に一生分ぐらい遊びましたが、3年次後期に研究室に入ってからはガラリと変わり、勉強と研究がメインの生活になりました。
配属されたのは、尾崎克久先生の数値解析研究室。計算機などを使い、プログラミングも駆使して応用数学を追究していく研究室で、「純粋数学は自分には難しい。応用数学なら社会にダイレクトに役立つ研究ができるのでは」と考えての選択でした。その一方で、「就職の際にプログラミングができた方が有利だ」という思いもあり、当時はまさか自分が研究職に就くとは夢にも思っていませんでした。

タイの動物園にて

研究室でのイベントの様子
博士課程修了後、自然な流れで研究職に
研究室ではプログラミングにも数学論文の読み込みにも苦労しましたが、もっとも大変だったのは、自分なりの研究材料を探す作業でした。それまでは答えのある課題を与えられてひたすら考える作業でしたが、研究室ではゴールがどこにあるのか分からない状態でした。「こうすればもっと早く計算できるようになるのでは?」「ユーザーに使ってもらうには、どういう組み立てがよいのか」など、発想が浮かぶと尾崎先生に相談し、そのまま夜9時まで議論することもしばしば。ディスカッションを重ねるうちにアイデアがブラッシュアップされていくことが多く、とても貴重な時間を過ごしました。これも学生室の隣に教員室があり、すぐに話ができる芝浦工大の環境があったから。学生室と教員室が別棟にある大学ではゼミでしか先生に会えず、こうしたディスカッションは難しいと思います。しかも芝浦工大には世界で活躍されている先生方が多く在籍しており、先生方から受ける薫陶は学生にとって何物にも代え難い財産になります。
こうして研究が楽しくなった私は修士課程へと進学。修士課程修了前に一度就活をしてみたものの、「もっと研究がしたい」という気持ちもあり、狙いを定めた2つの企業に採用されたら就職を、不採用なら博士課程へ進学すると決めました。結果的に博士課程へ進学し、修了後は理化学研究所や九州大学情報基盤研究開発センター、そして現在の勤務先である早稲田大学理工学術院総合研究所へと、自然な流れで研究者としてのキャリアを歩むようになりました。


学会発表の様子

応用数学と他分野とのコラボで社会的課題を解決したい
研究の面白さは、今まで「できなくて当たり前」とされていたことができるようになること。できた瞬間は本当にワクワクします。そして、学会などで他の専門家とディスカッションし、自分のテーマがどんどんブラッシュアップされていく過程が楽しくてたまりません。また、大学で勤務していると、一般企業よりコミュニティが広いと感じます。教職員はもちろん、学生や他大学の教員など、国境を越えたつながりがあります。
現在はあるプロジェクトの実働部隊としてプログラミングや計算などを行い、研究に専念できる環境に身を置いています。将来は学生を指導し、新しい研究者を社会に輩出していきたい。それも「研究者なんて自分には無理」と思っている学生に道を示したい。世界でも優秀な研究者は優秀な後進を育てているもの。私自身も大学院生時代、次から次へと湧き出るアイデアをよく尾崎先生に聞いていただきました。もちろん、先行研究があったり、非効率な研究手法だったり、アイデアのままで終わるケースがほとんどでしたが、学生のたわごとに根気強くつきあってくださったその姿勢に、今も尊敬の念が止みません。
さらに応用数学の考えを生かして物理学・工学・化学などとコラボし、社会的課題を解決していきたい。現実社会ではコラボしないことには先に進めない課題が少なくありません。そのため、他分野の論文を読み込み、共にチャレンジしていきたいです。
現在、芝浦工大で学ばれている学生さんには、「勉強でもサークル活動でも何でもいいから、やり切ることが重要」だとお伝えしたいです。私自身は学部時代に遊び尽くしたので、大学院では研究に集中することができました。何事もやり切れば、卒業後に後悔することはありません。これから大学を目指す高校生の皆さんには、ぜひ大学教員がどのような研究に取り組んでいるかを見ていただきたいです。芝浦工大は就職に強いだけでなく、研究者という道も拓けていることを一人でも多くの方に知っていただきたいと思います。