学生向け計算科学分野国際コンペティションで上位入賞 ―世界的に活躍できるHPC人材、AI人材の育成支援が始動―

2025/12/09
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理化学研究所
東京農工大学
東京理科大学
芝浦工業大学
東京都立産業技術高等専門学校
大阪大学
木更津工業高等専門学校

HPC-AI Advisory Council[1]が主催する学生向け計算科学分野国際コンペティション「2025 APAC HPC-AI Competition[2]」において、理化学研究所(理研)が出場支援を行った4チームが上位に入賞しました。
同大会は、アジア太平洋地域の学生を対象として、HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)部門とAI部門分野から二つの課題が出され、出場チームはこの両方、またはどちらか一方に取り組み、競いました。

結果一覧

総合部門

Merit Award(奨励賞)

東京農工大学、東京理科大学、芝浦工業大学 T0M0K4ZU w/ RIKENチーム

HPC部門

Best HPC Performance賞

東京都立産業技術高等専門学校 Moralistars w/ RIKENチーム

Excellent HPC Performance賞

大阪大学 SQUID w/ RIKENチーム

AI部門

Excellent AI Performance賞

木更津工業高等専門学校 Kisarazu Big Branch team w/ RIKENチーム

授賞式

HPCに関する国際会議SCA/HPCAsia 2026[3]内で授賞式が開催されます。
日程:2026年1月26日(月)~29日(木)
場所:大阪国際会議場(グランキューブ大阪)

理研計算科学研究センター(R-CCS)の支援について


理研計算科学研究センター(R-CCS)は、2025 APAC HPC-AI Competition(2025年大会)より、学生向け計算科学分野国際コンペティションについて学生出場支援事業を開始しました。
学生向け計算科学分野国際コンペティションにおいて、日本の学生の出場が非常に少ない状況を打破するため、大会出場の経験を通して国際的な視野を広げ、世界的に活躍できるHPC人材、AI人材の育成を目指します。
初年度となる今回は、公募・選考を経て8チーム31名を支援対象としました 注1)。支援として、シンガポールで実施された大会のOpening Workshopへの参加支援、練習用の計算資源(スーパーコンピュータ「玄界」[4])の利用支援などを行いました。
2026 APAC HPC-AI Competition(2026年大会)に向けても同様の支援を行う方針です。SCA/HPCAsia 2026内で実施される2026大会のOpening Workshopについては、国内の計算科学分野の学生から広く参加を募り、参加費・旅費などの支援を行います 注2)。
本支援事業では、人材育成などを目的に募集した寄附金(Society 5.0に向けた高性能計算科学研究支援及び研究者育成支援に関する寄附金[5])を活用しました。
理研は今後、企業などからの継続的な支援 注3)を得て本事業を続け、わが国の発展にとって不可欠なHPC人材、AI人材の育成を行います。

注1)    受賞チームメンバーの他、北海道大学、東北大学、九州大学、奈良工業高等専門学校、高知高等専門学校などの学生に対して支援した。
注2)    APAC HPC-AI Competition Opening Workshop at SCA/HPCAsia 2026 参加支援:
https://www.r-ccs.riken.jp/outreach/schools/20260127-29/
注3)    新たに募集を開始した募集特定寄附金「スーパーコンピュータ × 次世代人材育成プロジェクト寄附金~世界と戦える人材を育てる~」などを財源とする。https://www.riken.jp/support/r-ccs_fund/index.html

受賞チームのコメント

東京農工大学、東京理科大学、芝浦工業大学 T0M0K4ZU w/ RIKENチーム(総合部門 Merit Award(奨励賞))

高校時代にSuperCon2022で入賞したメンバーで再び挑戦できたこと、そして本コンテストにおいてもMerit Award受賞という結果を残せたことを大変うれしく思います。検証できなかった最適化手法も残っており悔しさもありますが、試行錯誤を重ねながら性能を追求するプロセスがとても楽しく、充実した経験となりました。

東京理科大学の磯崎夏樹さん、東京農工大学の片山朋和さん、芝浦工業大学の是川楓季さん

東京都立産業技術高等専門学校 Moralistars w/ RIKENチーム
(HPC部門 Best HPC Performance賞)

SCA2025(2025年3月10日~13日、シンガポール)への参加を支援いただいたことで、講義聴講や海外学生との意見交換を通じ、成長の機会を得ることができました。
素晴らしい機会を提供していただいた理化学研究所とコンテスト主催者のHPC-AI Advisory Councilに心より感謝申し上げます。

東京都立産業技術高等専門学校の河合政蔵さん、笹川駿さん、田中瑛人さん、他1名

大阪大学 SQUID w/ RIKENチーム(HPC部門 Excellent HPC Performance賞)

今回このような賞をいただき、大変光栄に思います。半年間、パラメータの調整、エラー対応、結果解析など、多くの作業をチームで分担しながら進めてきました。タスクをこなすだけでなく、どのように説明し伝えるかを工夫しながらプレゼンにも励みました。今回の経験を今後の研究活動にも活かしていきます。

大阪大学の松本琉大桜さん、ZHU BOさん、長田侑馬さん、下内良太さん、東郷凜太朗さん、野口祥生さん

木更津工業高等専門学校 Kisarazu Big Branch team w/ RIKENチーム(AI部門 Excellent AI Performance賞)

われわれは、表面的なパラメータ探索だけでなく、キャッシュやI/Oといった下のレイヤーにも着目してボトルネックを見つけ、地道に改善を続けていきました。
チームの誰一人もHPCの背景がないゼロの状態から勉強を重ねてこのような結果を出すことができ、非常に良い経験になりました。

木更津工業高等専門学校の越智優真さん(現在南洋理工大学(シンガポール)に所属)、常木丈鳳さん、ISAAC YAP ZHEN KHAIさん、内藤正浩さん、秋本蒼空さん

補足説明

[1] HPC-AI Advisory Council
HPCとAIのよりよい教育・研究・ものづくりなどの推進を目的とする国際コミュニティ。2008年に設立され、2023年時点で450以上の企業・研究機関などが加盟している。ベストプラクティス集、無料で使える計算資源などを提供する他、学生を対象としたコンペティションを多数実施している。
HPC-AI Advisory Council ウェブサイト: https://www.hpcadvisorycouncil.com/
[2] APAC HPC-AI Competition
APAC HPC-AI Competitionは2018年に始まり、第8回目となる2025 APAC HPC-AI Competition(2025年大会)では44チームが参加した。一般的なプログラミングコンテストとは異なり、最終スコアだけでなく、プレゼンテーションの内容が評価に加味されることが特徴。出場チームはコンペティションに先立ち2カ月にわたってオンラインで各分野の第一人者からトレーニングを受ける機会があり、教育に主眼を置いたコンペティション。
[3] SCA/HPCAsia 2026
HPCに関する国際会議。2018年に始まり、オーストラリア、日本、シンガポール、タイのHPCセンターが毎年共同で開催している国際的なHPCイベント「SCA」と、1990年代から開催されているアジア・太平洋地域におけるHPC技術に関する国際会議「HPCAsia」が合同で開催されるもの。APAC HPC-AI Competitionは、例年前年大会の表彰式ならびに次回大会に向けたOpening WorkshopをSCAの中で実施している。日本でAPAC HPC-AI Competitionの授賞式、Opening Workshopが開催されるのは今回が初めて。
SCA/HPCAsia 2026ウェブサイト: https://www.sca-hpcasia2026.jp/
[4] スーパーコンピュータ「玄界」
九州大学に設置されているIntel Xeon Platinum 8490H CPU、NVIDIA H100 GPUを搭載した、総計算ノード数1,064ノードのスーパーコンピュータ。2025 APAC HPC-AI Competitionで使用されたNCIオーストラリアのスーパーコンピュータ「Gadi」、NSCCシンガポールのスーパーコンピュータ「ASPIRE 2A+」と似たシステム構成を持つため、コンペティションに先立ち「NWChem」「DeepSeek-R1」の動作確認や分析を行う目的で活用された。
[5] Society 5.0に向けた高性能計算科学研究支援及び研究者育成支援に関する寄附金
Society 5.0の実現、高性能計算科学に係る研究の進展、ならびに国内外での学生の交換留学、研究者の派遣、招聘(しょうへい)、インターンシップの拡大など研究者の育成を目的として2019年から2021年にかけて募集した寄附金。延べ1,000件、総額6,500万円を超える寄附が寄せられた。
2019年5月30日プレスリリース: https://www.riken.jp/pr/news/2019/20190530_2/