しばうら人 津田 崚太さん(トヨタ自動車株式会社)

2025/11/28
  • しばうら人
  • 卒業生

shibarajin-head

幅広い学びと経験を活かして時代の要請に応えるエンジニアに!

津田崚太さんは機械工学科に在学中、学業優秀者に贈られる日本機械学会畠山賞を受賞。大学院修了後はトヨタ自動車に入社し、一貫してトランスミッションの開発に携わっている。今、エンジニアに求められるスキルとは何か。なぜ分野横断の学びが必要なのか。企業で開発の最前線に立つ津田さんが明確に指摘する。

tsuda_1_profile

津田 崚太 さん

Ryota Tsuda

トヨタ自動車株式会社 勤務

工学部 機械工学科 2017年3月卒業

理工学研究科 機械工学専攻 2019年3月修了

 

エンジニアの土台をつくる 大学での学び

高校時代からものづくりに対する漠然とした憧れがあり、「将来は社会で活躍できる人材になりたい」「世の中に貢献できる仕事がしたい」「自分のつくったものが目に見えるものづくりがしたい」と考えていました。そこで機械工学科で大学を探し、就職に強い芝浦工業大学を選びました。入学後は、自分の目標を達成するための土台づくりと考え学業を頑張りました。私自身が社会に出てから実感したのですが、講義で学ぶ4力学(熱力学、流体力学、材料力学、機械力学)の基礎的な知識はエンジニアとして仕事をしていく上で必須です。細かな数式をすべて覚える必要はありませんが、エンジニア同士で会話する際、「物理的にこうなるよね」という共通の感覚があると意思合わせがスムーズだからです。また、私は製図が好きでCADでの3Dモデルや図面づくりがとても楽しく、時には悩みながらも力を入れて取り組んでいました。製造業界で働くならCADを使えることは強みになります。他大学よりも早い時期にソフトウェアを導入し、指導が手厚いことも芝浦工大のよさだと思います。さらに複数の教授の演習で、課題 ⇒ 実験 ⇒ 考察 ⇒ レポート作成という一連のサイクルを何度も繰り返したことも役立っています。文献や論文を探し、教授や仲間とディスカッションしつつ理解を深める過程は、社会人として課題にアプローチする際に役立つスキル。芝浦工大ではこれを学生時代に身につけることができました。

tsuda_3_hatakeyama
日本機会学会畠山賞 W受賞
tsuda_2_event.JPG
大学の研究室イベント

設計から評価まで一気通貫の取り組み

3年次からは佐伯暢人教授の粒状体力学研究室に所属し、震動を抑制するための粒の動きについて研究しました。実験装置を自分たちで設計すること、プログラミングも自分たちで行うことが研究室の特徴で、設計⇒実験 ⇒ 解析 ⇒ 評価に一気通貫で取り組め、携われる範囲の広さが魅力でした。実際に装置を自分の手で組んで動かし、自身が追究する物理現象を見える化する過程には、とても手ごたえを感じました。とはいえ、学業一色の学生時代だったわけではありません。体育会準硬式野球部に所属してキャプテンを務め、仲間と共に一部リーグ昇格を目指しました。もちろんチーム運営にも携わり、人を束ねる難しさも実感しました。社会に出て分かりましたが、結局仕事もチームで進められており、どこまで行っても「人対人」。自分一人で自動車のすべての部品をつくれるわけではありませんし、製造分野の人、隣接分野の人など、さまざまな人とすり合わせて会話しないことには進みません。学生時代を通じて、勉強も部活動も人との出会いに恵まれ、人と会話する機会が多く、物事の進め方の基礎が自分の中につくられました。これまでに出会った仲間が自分を成長させてくれたと思います。

tsuda_4_baseball
リーグ優勝集合写真

今、求められるのは 分野横断できる人材

就職に際しては、社会的影響力の大きさや人の役に立つシーンが見えるものづくりをしたいという気持ちから、自動車業界を選択。この先何十年も働いていく中で、スキルアップできる環境、大学のように仲間と切磋琢磨できる環境に魅力を感じ、トヨタ自動車に入社しました。先行開発職を希望し、入社後研修を経て配属されたのが、HEVやBEVなどの電動車の先行開発を行う研究所。そこで自動車の動力装置であるトランスミッション全体の設計に携わりました。企画 ⇒ 設計 ⇒ 解析 ⇒ 評価の一連の流れを短いサイクルで回せる業務で、大学時代の一気通貫の学びがそのまま生かせる内容でした。その後、米国にある海外事業体で量産設計・開発に1年間従事。現在は本社で生産・製造技術、特に歯車の新規開発に取り組んでいます。入社して7年目ですが、一貫してトランスミッションの開発に関わり、その中でも先行設計・量産設計・生産技術と領域を横断して業務を経験してきました。芝浦工業大学工学部でも2024年度より分野横断して学ぶ課程制を導入したと聞きましたが、これには大きな意味があると思います。近年、人不足のため効率化の推進がますます重要な時代になり、一人の人間に求められるスキルが多様化しています。しかも短時間でのアウトプットが必要で、「経験がないからできない」ではなく、「別のアプローチで対応できる」人材でなくてはなりません。だからこそ分 野横断する学びが必要です。また、分野横断の学びは自らの選択肢を拡げてくれます。大学入学時は機械工学を選んだ理由が明確でなくても、いろいろな分野や人に関わるうちに心の琴線に触れる対象に出会えるもの。こうした機会は社会に出ると意外に多くありません。将来の目標の解像度を上げる意味でも、分野横断の学びは学生にとって価値があります。私自身も生産技術を学び、さらには評価や制御への理解も深め、幅広くスキルを上げていきたい。極端な表現になりますが、トランスミッションを一人で開発できるエンジニアになるのが将来の目標です。

tsuda_5_us.JPG
米国での生活(植林活動)
(広報誌「広報芝浦」2025年秋号掲載)