しばうら人 上野山 波粋さん(株式会社フォルク)

2025/08/29
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地域の人々と共に「場所」をつくり、「文化」をつくるランドスケープデザイナーという職業

建築物だけでなく、周辺環境を生かし、街路や広場、公園などもあわせて設計するランドスケープデザイナー。建築学部AP(先進的プロジェクトデザイン)コース1期生の上野山波粋さんは高校時代からランドスケープデザインに興味を持ち、芝浦工業大学での学びを通じてその夢をかなえた経歴の持ち主だ。

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上野山 波粋 さん

Naiki Uenoyama

株式会社フォルク 勤務

建築学部 建築学科 2021年3月卒業

理工学研究科 建築学専攻 2021年3月修了

 

-株式会社フォルク-
2015年創業。ランドスケープデザイン事業を主軸として場や環境のデザインから、エリアマネジメント、環境教育、事業構想、行政計画などにわたるプロジェクトを全国各地で取り組む。

入学後に待っていたプロフェッショナルとの出会い

私がランドスケープデザイナーという職業の方と初めてお会いしたのは、高校3年生の時。地元の和歌山県有田川町が米国ポートランド市のまちづくりを参考にしようと視察団を送った際、プロジェクトのキーマンだった父に現地へ連れて行ってもらったことがきっかけでした。当時は、建築とランドスケープデザインの違いがよく分からないまま興味をかきたてられ、建築学を学べる大学を探しました。さまざまな大学のオープンキャンパスに行きましたが、芝浦工大は展示内容が素敵だったこと、建築学科から建築学部へと移行するタイミングで新たにAP(先進的プロジェクトデザイン)コースがスタートすることから、芝浦工大を選びました。

APコースでは、建築による社会的課題を解決する人材の育成を目指して、実践的なプロジェクト科目が多く配置されています。入学後、ランドスケープデザイナーの三島由樹さんが非常勤講師を務める授業を受講し、「もっと知りたい!」と自分から三島さんに連絡を入れ、経営されている設計事務所・株式会社フォルクでインターンをすることになりました。三島さんが開催する石川県加賀市とのまちづくりプロジェクト「PLUS KAGA」にも参加。全国から集まった大学生と共に加賀市の地域課題を考え、地域イベントなどを提案する活動を大学院修了まで続けました。

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ポートランド(高校時代)
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PLUS KAGA

多数のプロジェクトに参加して学んだこと

大学のプロジェクトも目白押しでした。1年次の「熊本災害復興プロジェクト」では熊本地震の被災者にお話を伺い、仮設住宅に交流スペースをつくったのですが、そこに暮らす人々がおられること、人と話をして初めて理解できることがあること、現地で体感することの大切さを学びました。

3年次には、APコースの授業の一環で協定校であるローマ大学を訪問、2週間にわたり現地の学生と課題に取り組みました。テーマは「難民のための木造仮設住宅」。自然災害による仮設住宅ではなく人的な理由による仮設住宅であることが新鮮で、対象地を現地調査に行き、課題を発見して設計まで落とし込むスタディでした。現地学生とのプレゼンでは互いのスキルの違いを目の当たりにし、とても興味深く感じました。日本人学生は一生懸命模型をつくりますが、イタリア人学生は模型づくりの経験はないもののグラフィックデザインがとても得意。カルチャーの違いを感じる貴重な経験となりました。

大学院1年次には、江東区との共同プロジェクトで、豊洲の公園に駐輪スペースと休憩スペースが一体となった「チャリんこテラス」をつくりました。プロジェクトリーダーとしてメンバーをまとめるのに四苦八苦し、個々の特性を生かしてチーム作業を進める難しさを経験しました。

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熊本災害復興プロジェクト

「懐かしくも新しい未来をつくる」 社会に出ても蘇る恩師の言葉

大学院修了後、長らくプロジェクトやインターンでお世話になったフォルクに入社しました。今は複数のプロジェクトに関わりながら、ランドスケープ設計や地域の人々とのワークショップなどを開催。世田谷区立池尻中学校跡地を活用した複合施設「HOME/WORK VILLAGE」にも携わっています。

就職先を決める前、「自分はどんなところで働きたいのか」確認するため、建築設計事務所や組織設計事務所などでアルバイトやインターンを経験し、改めて「私は建物よりも周辺環境を考えた上での建築がやりたい」と再認識できました。フォルクは地域の人々と共にその場所をつくることで地域に文化をつくっているようで、私のやりたいこととフィットしていました。

大学での学びは本当に実践的だったと思います。自由選択科目の「プロジェクト研究」はすべて履修しましたし、 30 人の少人数だったため、「設計演習」や「プロジェクトデザイン」では全員が毎回発表し、先生からフィードバックを受けることができました。

ランドスケープデザイナーになった今、思い出すのは研究室でお世話になった山代悟教授がおっしゃった「懐かしくも新しい未来をつくる」という言葉です。大学院1年次の都市木造の授業で教わった言葉ですが、ランドスケープデザインを考える上でも、先人の教えや地域に根付いている文化を大切にした上で新しい空間を考えます。その時この言葉がいつも甦ります。

これから大学に進学される高校生の皆さんには「自分の興味がある道へ進んだ方が絶対によい」とお伝えしたいです。学生は自由になる時間が社会人より豊富です。その時間を生かして、いろいろな場所へ行き、いろいろなものを見てください。APコースのようにプロジェクトが数多くある学部なら、どんどん参加されることをお勧めします。多様な人々と会話し、自分自身で体感したことは、必ず将来に生きてきます。

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ワークショップの説明の様子
(広報誌「広報芝浦」2025年夏号掲載)