しばうら人 荒山 莉穂さん(株式会社NTTドコモ)

2025/05/30
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プロジェクトマネージャーとしてユーザー起点のサービスを社会に提供したい

荒山莉穂さんはデザイン工学部で情報デザインを学び、卒業後に大手通信会社に入社。学生時代の夢でもあったコンシューマ向けアプリの企画開発に携わった。現在は都市デザインの研究開発部門でプロジェクトマネージャーを務めるなど、新たな挑戦を続ける荒山さんが、学生時代の学びの重要性を改めて振り返る。

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荒山 莉穂さん

株式会社NTT ドコモ

デザイン工学部 デザイン工学科

2017年卒業

体験デザインを中心に学び、グローバルPBLにも参加

子どもの頃から「ものづくりの仕事がしたい」と考えていました。大学選びの際に「デザイン工学」という学部が芝浦工大にあると知った時、将来の道が拓(ひら)けそうな予感がして、進学を決めました。

入学後はUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)などの「体験デザイン」を中心に学びました。3年次からは梁元碩先生の感性インタラクションデザイン研究室に所属。人が製品やサービスを使用する際に良い体験ができるよう、ユーザーと製品間の相互作用(インタラクション)を理解し、最適な設計やデザインを行う方法を研究しました。また、梁先生がアジア圏の大学とつながりが深いため、研究室ではアジアの大学を互いに訪問して交流するグローバルPBL(Project Based Learning)が盛んでした。PBLはアクティブラーニングを通して、「グローバル展開力」「問題解決能力」「コミュニケーション能力」「異文化理解力」の4つの能力を育成することを目的体験デザインを中心に学び、 グローバルPBLにも参加として行われるのですが、教員と学生の間に満足度の差が生じるため、常に最適なPBLプロセスを目指して改善していく必要があります。私は韓国、シンガポール、タイの大学とのグローバルPBLに計4回参加しましたが、観光気分の学生が多く、現地学生との交流にも消極的になりがちで、「学生にもっと積極的に参加してもらうにはどうすればいいのか」と考えるようになりました。そこで学生に現地の社会・歴史・文化などに興味を持ってもらうため、レポートメモを作成して渡すなど、いろいろな工夫を重ね、その集大成を「グローバルPBLによる学生参加型授業の実践的考察」という卒業研究にまとめました。

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グローバルPBLでのグループワークの様子

ゼロから企画し、女子高生向けアプリを開発

企画開発したアプリイメージ1-2

企画開発したアプリイメージ

卒業後、株式会社NTTドコモに入社しました。ユーザー起点でサービスを考えるUXを学び、「コンシューマ向けサービスの企画がしたい」「学びを生かすならIT系だ」と考えるようになったからです。NTTドコモには常にカスタマーファーストの精神があり、お客様の意見を採り入れる風土があることにも共感しました。

入社後はアプリ企画の部署に配属され、念願のコンシューマ向けサービスの企画開発に携わることができました。中でも入社4年目に私がプロジェクトマネージャーを務め、初めてゼロから企画した女子高生向けアプリが印象に残っています。

まず、若年層に向けて話題性のあるエッジの効いたコンセプトのアプリを目指しました。そこでSNS ヘビーユーザー層である女子高生をメインターゲットに据え、「推し活がはかどるアプリ」というコンセプトを立案。ユーザーインタビューを実施してニーズを探り、プロトタイプを制作して概念実証を繰り返しました。苦労したのは企画を通すための社内プレゼンです。このアプリのニーズを論理的に説明する必要があり、上の世代の方にもわかりやすいようにユーザーインタビューの情報を盛り込むなどしました。この時、グローバルPBLで培った論理的説明力が役に立ちました。もともと私は大学の生協学生委員として入学時オリエンテーションの説明員などを務めた経験もあり、人前で話すことに抵抗はないのですが、話したい情報を整理し、論理的に説明することが苦手でした。しかし、PBLで課題を解決し、成果物へと落とし込む作業を何度も繰り返したため、論理的説明力が培われたと感じています。最終的にアプリの市場へのリリースを達成。エッジの効いたコンセプトのため、ユーザー評価は二極化しましたが、「推しの情報が掲載されているSNS画面がさっと出てきて、推し活に便利」というお客様の声が寄せられた時は、ターゲットニーズに合致していたことがうれしく、やりがいを感じました。他にも複数のアプリ開発に携わることができました。

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生協学生委員会新入生オリエンテーションの様子

大学の授業は実社会で役立つものばかり

2024年春、アプリ開発以外も経験しようと社内公募制度に応募。都市デザインの研究開発部門に異動しました。研究開発はゼロから新しいものを生み出す必要があり、ゴールも存在しません。所属部署には新入社員が多く、自由な発想で次々にアイデアを提案するため、私はプロジェクトマネージャーとして新しい技術・サービスとユーザーをつなげる役割に努めています。

今、振り返ってみても、大学の授業は社会に出てから役立つものばかりでした。特に「プロダクトデザイン」「課題解決プロジェクト」「知的財産」などは、もう一度授業を受けたいぐらいです。実は2025年度下期より、会社勤務のかたわら芝浦工大で非常勤講師を務めます。担当するのは、かつて自分も受講していたコンテンツデザインの「プロジェクト演習」です。当時は「この授業は将来役に立つのだろうか?」と思ったこともありましたが、社会に出てからその必要性を身をもって体感しました。授業では学生に寄り添い、実社会で役立つ内容を伝えていきたいと考えています。

(広報誌「広報芝浦」2025年春号掲載)