女子学生比率30%に向けた、芝浦工業大学の入試改革

2024/02/23
  • 入試
  • 大学
2402_feature1_01-1182
6日間にわたる研究室でのサマーインターンシップを 終えた女子高校生56人

芝浦工業大学は「ダイバーシティ推進先進校」を目指し、目標とする数値を定めています。その中で、女子学生の獲得に向けた新しい入学試験の導入や、女子高校生へ魅力の発信、女子高校生の保護者への理解促進、高等学校との協力体制構築など、入試改革に焦点を当てて特集しました。

芝浦工業大学が目指すジェンダーダイバーシティ

女子学生比率30%を目指す

芝浦工業大学は「ダイバーシティ推進先進校」としてすべての教職員・学生が働きやすく学びやすい大学を目指し、2013年に男女共同参画推進室(現:DE&I推進室)を設置しました。また2016年には、100周年の2027年に向けた長期計画(Centennial SIT Action)の中で、女子学生比率30%にすることを具体的な数値目標として設定しました。

芝浦工業大学がダイバーシティ施策の中でも特に女子学生比率の向上に力を入れる背景は、日本の理工系分野における極端なジェンダーギャップが、イノベーションの創出にマイナスの影響を与えていると考えるためです。経済協力開発機構(OECD)が加盟各国の大学など高等教育機関を対象に行った調査では、2021年時点における日本の入学者に占める女性の割合は、自然科学系の分野で27%、工学系で16%でした。いずれも加盟38カ国の中で最下位です。エンジニアが生み出す製品やサービスを利用する人の半数が女性であるにも関わらず、その当事者の視点が欠けた環境では、必要とされるモノは生まれません。教育も研究もイノベーションの創出には、ダイバーシティが重要だと芝浦工業大学は考えています。

2402_feature1_02-840

女子向け入試施策

工学分野に進学する女子は現状多くありません。少しでも進学志望者のハードルを下げるために、2018年度入試から「公募制推薦入学者選抜(女子)」を工学部の機械電気系4学科で開始しました。芝浦工業大学内の女子学生比率も各学部学科で偏りがあったため、特に女子が少ない学科を補う意図がありました。しかし、女子比率の高い学科も世界的に見ればまだまだ低い数値です。2022年度に工学部全9学科、2023年度には全学部・全学科とこの入学者選抜の対象範囲を広げてきました。現在は「【総合型】理工系女子特別入学者選抜」に名前を変え、2024年度入試においては過去最高の志願者数となりました。

並行して、女子向け奨学金給付制度も整備され、2022年度から100人を超える成績優秀な女子入学者へ入学金相当(28万円)の奨学金給付を開始しました。また、2023年度から修士課程進学者に向けた奨学金に女子枠を設け、より包括的な支援体制が整いました。

2402_feature1_03-840

2402_feature1_04-840

※2024年度実入学者数は見込み数
※2022年度より、入学者には入学金相当の奨学金を給付

理工学を女子生徒が進学したい魅力ある分野に

女子高校との連携

女性が理工系を選択しない要因は多岐にわたるといわれていますが、進路選択時における理工系の学びに関する情報不足がひとつの大きな要因だと考えられています。女子生徒に理工系分野へ意欲的に進学してもらうために、2021年度には山脇学園高等学校、2022年度は昭和女子大学附属昭和高等学校、そして2023年度は実践女子学園中学高等学校と教育連携協定を締結しました。出張授業や芝浦工業大学内で行うサマーインターンシップなど、理工系分野に根差した「探究型教育活動」を行っています。理工学を「魅力ある」分野として、理解してもらうためのきっかけを作ることが狙いです。

2402_feature1_05-840

2021年度に山脇学園高等学校と教育連携協定を締結
(左から)山脇学園高等学校 西川史子校長と芝浦工業大学 山田純学長

研究室の活動を体験サマーインターンシップ

女子高校との教育連携協定をもとに、2022年から1週間の研究室体験プログラムが開始されました。2022年度は2校29人が参加し、理工系の面白みが最大限生かされた研究体験で、満足度の高いイベントとなりました。2023年度には6校56人に規模を拡大し、高校生の希望をもとに機械・建設・情報・化学など全23研究室に分かれ、専門分野のテーマ設定から研究、発表までを行いました。

土木工学科のマテリアルデザイン研究室では「強いコンクリートをつくる」というテーマで、卵や牛乳など新しい視点からさまざまな材料を混ぜて実験を行い、強度の報告をしました。また、デザイン工学科のソフトウェアデザイン研究室では、ChatGPTを用いたペアプログラミングで、図書館の本の貸し出しシステムを制作しました。参加した生徒からは「ChatGPTは確率モデルなので、その情報だけをあてにするのは危険だと研究を通じて理解できた」など、専門性の高い学びが進路選択の大きな刺激となりました。

2402_feature1_06-840-3

マテリアルデザイン研究室(左)とソフトウェアデザイン研究室(右)で サマーインターンシップに参加する女子高校生たち

2402_feature1_06-840-2

女子大学生の生活を知る女子向けミニオープンキャンパス

女子高校生とその保護者を対象に「女子向けミニオープンキャンパス」を豊洲キャンパスにて開催しました。2022年度から開催されている人気イベントで、2023年度の参加者数は女子高校生94人とその保護者59人に上りました。女子高校生が50人ほどの女子在学生と直接会話ができる分野別座談会をメインとして開催し、笑い声の絶えないイベントとなりました。工業大学では少数派である女子の友達づくりや、授業と部活動の両立方法など、プライベートな部分についても積極的に質問が飛び交いました。別室では保護者向けに大学説明会が開催されました。女子在学生をゲストに迎え、大学受験に際して両親とした会話や嬉しかったサポートなど、女子高校生と両親との関わり方についても率直な話がありました。

2402_feature1_07-840

分野別に分かれて高校生と座談会を開く在学生たち

2402feature1_08-840

保護者から質問を受ける在学生

(広報誌「芝浦」2024年冬号 掲載)