人体の筋肉からヒントを得て、無人惑星探査車の スリップ状態を検知するシステムを開発
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芝浦工業大学(東京都江東区/学長 山田純)システム理工学部機械制御システム学科・飯塚浩二郎教授らの研究チームは、無人惑星探査車(無人ローバー)の土台であるシャーシの形状の変化からスリップ状態を検知する新しいシステムを開発しました。
この技術は、人間の筋肉が自身の走行状況を検知するために筋肉の張力変位を利用している点に着目して開発されました。無人ローバーを安全に走行させるために、これまでカメラによる視覚データに頼っていた走行状態の検出に、新たな方法の可能性を提供します。
※この研究成果は、「Remote Sensing」誌に掲載されています。
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研究の背景
人類が他の惑星を探査するのに役立っている無人ローバーは、緩い土の上でスリップすることにより、目標進路から外れたり、立ち往生したりすることがあります。NASAの火星探査ローバーや月探査ローバーは、これら地球外の天体に関する理解に大きく貢献しています。しかし、惑星の表面は斜面、クレーター、砂丘など、多くがローバーの走行にとって過酷な環境です。さらに困難なことに、天体の表面を覆う微粒子(レゴリス)の存在が、ローバーの機動性に大きな問題をもたらしています。緩い表面でローバーがスリップすると、進行が妨げられ、任務遂行が難しくなります。これまで、ローバーの走行状態やスリップ状態を検出するために、主にカメラからの視覚データに頼る様々な方法が検討されてきました。しかし、これらの方法には限界があり、岩と緩い砂を区別するなど、さまざまな地形の質的特徴を区別することが困難です。この問題を解決するには、ローバーが各車輪と地面との間の力のかかり具合(トラクション)に関する情報を取得することが重要です。トラクションの情報を得ることで、ローバーはより速く走行環境を検知し、スリップを避けるために姿勢を修正できるからです。
研究の概要
飯塚研究室では、シャーシの変形からローバーの走行状態を検知する新しいシステムを開発しました。システム開発の着想は、人間が歩行中の筋肉の張力から自分の走行状態を検出する方法から得たものです。人体の筋肉には、核鎖線維や核袋線維と呼ばれる特殊な筋線維があり、身体の走行状態を検出するのに役立っています。核鎖線維は筋肉の張力の変位を検出し、身体の静止姿勢を判断するのに利用されます。一方、核袋線維は筋線維の伸張速度を検出し、身体の動的状態を検出するのに役立っています。
本研究では、人間の筋肉との類似性を利用して、ひずみとして現れるローバーのシャーシの形状の変化を、ひずみの変位とひずみの振動変化の2つに分類しました。ひずみの変位データを核鎖線維解析で、ひずみ速度を核袋線維解析で調べました。核鎖線維解析により、鉛直方向とローバーの進行方向に働く力がひずみによって変化することが明らかになりました。そのため、ひずみの変位をモニタリングすることで、力の変化を検出することができ、最終的にローバーの走行状態を示すことができるようになりました。さらに、核袋線維の分析を通じて、ひずみの振動変化率が、ローバーの滑りの程度とその後の走行状態の変化を効果的に測定できることを発見しました。このデータを使用することで、システムはローバーの状態をリアルタイムで判断することができ、潜在的なスリップ事故を回避するために必要不可欠な操作をローバーが行えるようになります。