呉雨馨さんが第46回日本分子生物学会年会にてMBSJ2023サイエンスピッチ優秀発表賞を受賞
2024/03/08
- システム理工学専攻
ビタミンKはこれまでに骨形成や血液凝固など様々な生理作用を発揮することが報告されてきました。近年、脳内にビタミンKが多く存在することが見出されましたが、脳内でどのような役割を担っているかは明らかではありません。そこで本研究では、脳内におけるビタミンKの役割の解明を目指し、神経幹細胞からニューロンへの分化機構に対するビタミンKの役割を評価しました。
研究内容
ビタミンKは神経幹細胞に処理することで、非常に効率よくニューロンへ分化誘導されます。そこで、我々はビタミンKによるニューロン分化メカニズムを解明するため、トランスクリプトーム解析により変動する遺伝子の網羅的解析を行いました。その結果、神経幹細胞の増殖や分化に重要な役割を有する代謝型グルタミン酸受容体の遺伝子発現量が顕著に増加することを見出しました。また、ビタミンKによるニューロン分化機構は、代謝型グルタミン酸受容体の阻害剤によって抑制できることが分かりました。
今後の展望
本研究より、ビタミンKは代謝型グルタミン酸受容体を介して神経幹細胞からニューロンへ分化誘導することが分かりました。近年、成人脳内の損傷した部位に神経幹細胞が遊走され、幹細胞から新たなニューロンに分化することが報告されています。今後ビタミンKやその誘導体を用いて、脳神経細胞の損傷を伴うアルツハイマー病のような神経変性疾患治療に対して臨床応用できることが期待されます。