加藤遥馬さんが令和5年度土木学会全国大会(第78回年次学術講演会)にて優秀講演者賞を受賞
- 理工学研究科
- 社会基盤学専攻
【研究背景・目的】
昨今の住宅建築および建設業界では、建築物の老朽化やリノベーションのトレンドによるリフォームの需要が高まっている。リフォームに伴う解体においても、窯業系サイディング材(以下、SD材)を含む建設混合廃棄物が多く発生している。更にはSD材の製造過程において、SD切粉が多く発生しているのが現状である。建設材料であるセメント系材料のうち、コンクリートやモルタル等のリサイクル率は90%以上である一方で、SD材の現在のリサイクル率は著しく低く、建築副産物の中で唯一リサイクル率が90%を下回る60%台であるデータも国土交通省から出されている。この背景には、SD切粉の有効な再利用方法が確立されていない点に加え、セメントやコンクリートと異なり、機能性付与を目的とした有機物(有機系混和材)が多く含まれることから、リサイクルしにくい点が要因として挙げられる。
本研究では、SD材製造過程で生じるSD切粉の再利用を目的とし実験および分析を行うことで、地盤改良材への再利用として用いる可能性を検討した。また、産業廃棄物の中で建設混合廃棄物に分類されるSD切粉の再利用方法を検討することで、SDGsへの貢献を目的とした。
【研究内容】
本研究では、SD材がセメント系材料でありながら、有機物を多量に含むことが再利用に影響するため、SD切粉に110℃, 200℃の熱処理を加えた後に供試体を作製する検討を行った。研究方法として、一軸圧縮試験による物理的な強度変化、SEM-EDS分析では生成物の定性分析および定量分析を行った。
結果として、SD切粉を非加熱で添加した供試体に比べ、熱処理を加えた供試体の方が大きく強度を発揮したことが確認された。また分析により加熱した供試体では水和反応による生成物が確認された。したがって、加熱によりSD切粉の吸水性がさらに上昇したことや、反応を阻害する要素が阻害されたことが考えられる。
【今後の展望】
本研究で実施した配合条件は必要となる検討の一部であるため、SD切粉の地盤への適用可能性を十分に探っていきたいと考えている。また、SD切粉に熱処理を加えて地盤に添加する実用的な方法について定めることで、今後のSD切粉の再利用を住宅建築業界として促すことが可能になると考えている。