卒業生インタビュー(Vol.02)


デザイン工学部の学びが仕事でどう活かされているのかを知るため、デザイン工学部の在学生が卒業生にオンラインインタビューを行いました。

取材日:2021年12月18日 芝浦キャンパス1階 オープンラボにて


1.梅谷様本人
【卒業生紹介】
梅谷 朋世 さん
2017年3月 デザイン工学部デザイン工学科デザイン工学部 デザイン工学科 プロダクトデザイン領域卒業
現在 ぺんてる株式会社製品戦略本部製品戦略部デザイングループ勤務。入社5年目(取材時)。学生時代はデザイン工学部橋田研究室に所属し、卒業研究は飲料メーカーと共同研究。
【在学生インタビュアー】
小林 雛子 さん、小見野 栞 さん、鈴木 遥香 さん
(全員入試課学生スタッフ、デザイン工学部 生産・プロダクト系)
【在学生インタビュアー】
小林 雛子 さん、小見野 栞 さん、鈴木 遥香 さん
(全員入試課学生スタッフ、デザイン工学部 生産・プロダクト系)
2.入試課スタッフ

現在のお仕事内容を教えてください。

 ぺんてる株式会社は、子供が使うクレヨンや絵の具などの描画材や、デザイン系のみなさんに馴染みの深い製図用シャープペンやサインペンなどの筆記具を製造し、世界中に向けて販売している会社です。私は文具の新製品を開発する部署で、デザインの仕事をしています。デザイングループでは、製品の形状やカラーリング、製品本体に印刷をする柄やロゴから、パッケージ、キービジュアル、店頭のディスプレーのデザインまで一貫したデザインの業務を行っています。
私は主に、製品の形状、カラーリング、製品本体に印刷する柄やロゴのデザインをしてきました。これまでにカスタマイズボールペン「アイプラスシンプルコーデ」やラメ筆ペン「デュアルメタリックブラッシュ」、シャープペンシルKERRY50周年限定のデザインなどを担当しました。カテゴリーやブランドごとに担当が分けられておらず、担当する製品は様々です。
 基本的に入社一年目から一つの製品に対して一人が担当します。不安やプレッシャーは大きいですが、自分がイメージしていることや考えを直接反映できますし、責任をもってじっくり考えることができます。なにより自分の担当した商品が店頭に並ぶ姿や、実際に製品を使っている方をみたときはとても嬉しく、やりがいを感じます。
 
 

高校時代についてお伺いします。なぜ芝浦工業大学の受験を決めたのかを教えてください。芝浦工大は第一志望でしたか。芝浦工大に入ってよかったと思いましたか。

幼少期から工作や絵を書くことなどものづくりが好きで、なんとなくその好きなことを活かせる仕事に就きたいなと考えていました。
高校生の時、自分は文具が好きなことに気が付き、将来は文房具メーカーで文具のデザインの仕事をしたいと考えるようになりました。その時、高校の先生と自分の親から、「メーカーに行きたい(就職したい)なら、理系のプロダクトデザインのほうがいいよ」とアドバイスを受け、高校3年生になる直前に美大から理系のプロダクトデザインに志望を変更しました。芝浦工大の受験を決めたのは、学部の歴史は浅いですが、ものづくりを学べる大学としては歴史があることと、キャンパスが都心から近いことでした。
芝浦工大では、企画立案から生産技術に至るまで幅広くものづくりについて学べて、視野が広がりました。第一志望ではありませんでしたが、入ってよかったと思います。また、キャンパスが東大宮と田町だったので、神奈川の自宅からの通学途中に、上野・銀座・六本木などの美術館に立ち寄ることができました。そういった場所で様々なデザインに触れて刺激を受ける環境があったことも良かったです。
 

理系ならではの苦難を教えてください。

恥ずかしながら、物理が苦手でした。力学以外の分野が特に苦手で、受験の時に凄く悩みました。なので、なるべく理科科目は化学で受験できる大学を選びました。大学へ入学してからも、理系大学なのでもちろん物理は必修科目で、大変でした。
 

どんな学生でしたか。印象に残っていることを教えてください。

学業も遊びも積極的に、アクティブに、楽しみたい!と行動していた学生でした。
サークルはフリーペーパーサークルとバトミントンサークルに所属していました。3年からは、大宮校舎を離れるのでサークル活動は辞め、先輩からの紹介で、広告代理店での若者のマーケティングをする長期インターンシップに参加しました。
他にも海外の学生とのデザインワークショップに参加していました。
 

両立は大変でしたか?

勉強の一環なので、楽しさの方が勝っていましたね。
 

印象に残っているのは?

やはり、プロダクトデザイン演習です。演習では与えられたテーマに対し、ターゲットユーザーの設定や市場分析をし、そのユーザーにとってどういった課題やニーズがあるのかインサイトを探ります。演習を通して、どのようにしてデザインを検討するのかを学ぶことができました。ぺんてるはユーザーを思いやることを大切にしている会社なので、デザイナーもユーザーへのヒアリングや市場調査を行ったり、設計アイデアを担当者と一緒に考えることがあります。単純に「色」「形」などの美しさだけでなく、ユーザーの目的に合っているか、ありたい姿を達成できるものになっているか、新しい提案になっているかなど芝浦で学んだデザインプロセスの考え方が今の仕事に活きていると感じています。

3.インタビュー風景

 

物理が苦手とのことですが、どのように克服したか、コツを知りたいです。

先生に「苦手なので教えてください」とお願いし、教えてもらいました。あとは友人に。大学のテストの出題範囲は決められていて、それなりにやればなんとかなります。
 

卒業後の進路をどのタイミングで決めたのか教えてください。

大学3年の12月頃にはある程度の軸は固まっており、採用情報が解禁になる3月から就職活動に本腰を入れました。進路が確定したのは、今の会社の内定が出た6月末頃です。 もともと文具メーカーに勤めたいと思っていたので、就活は文具メーカーを一通り受けようと調べました。その他は、トレッキングが好きなのでアウトドアメーカーや私の卒業研究のテーマが「若者が好むお酒の包装容器」だったので、瓶や缶などの包装容器メーカーにも興味がありました。
 「自社の製品があり、デザインの仕事ができる会社」「自分が興味のあるものに関われるお仕事」を軸に探しました。やはり好きなことや好きなものに関わってないとなかなか仕事が続かないだろうなと思ったからです。
 

社会人になってから、学生時代の経験で、現在も活きていることを教えてください。

サークル活動ですね。それと海外の学生とのワークショップ。様々なタイプの人達とチームを組み、意見を重ねてひとつのものを作っていく達成感を味わいました。中学高等学校では美術部でしたし、授業やイベントなどでもそういう経験が少なかったので良い経験だったなと思います。
チームで一つのものを作るという作業ことは、会社に入っても一緒です。企画、マーケティング、設計の人など、いろんな人と関わって形にしていきます。
 

逆にやり残したと思うことはありますか。

社会人になってからもう少し深く掘り下げて学びたかったなと思うものもあります。具体的には、加飾表現や素材の知識を学んだり、金型デザインの授業を履修しておけばよかったと思っています。
他には、UXデザインの授業をもっと深く学んでおけばよかったです。文具市場は成熟しており、機能の追求やデザインのカッコよさだけで他社との差別化は難しくなってきています。もっと文具市場を盛り上げるには、ユーザーにとっての書く描くを通した良い体験をたくさん作ってあげることが大事なのでは…と最近感じています。
 

心に残ったフレーズを教えてください。

古屋先生の「便利グッズなんか作ってはダメだ。」です。(少し言葉のニュアンスが違うかもしれません)差別化を狙うあまり、ピンポイントな解決アイデアになってしまったり、限られたシーンでしか使えないものを提案していたことに対しての言葉だったと思います。便利グッズでも素晴らしいものはあると思いますが、本当に必要なものなのか?必要な機能やデザインなのか?ユーザー側の問題やニーズの本質を見極めなさいということだと解釈しています。仕事でも狭い視野で考えないように時々思い出します。
 

なぜぺんてるに決めたのですか。

理由は色々ありますが決め手は3つです。
・自分の夢だった文具のデザインに携われること
・世界中にファンがいること
・アットホームな雰囲気で、働きやすそうなこと
ぺんてるの製品は、品質が高く、世界中にファンがいます。私も、多くの人を笑顔にできる製品を作りたかったからです。
また、面接を通してアットホームな雰囲気を感じ、自分にあっていて働きやすそうだと感じたのも理由の一つです。
 

入社前と入社後で印象は変わりましたか。

 アットホームな雰囲気のイメージは変わらないです。優しく温厚な方が多いです。ミスや上手くいかないことがあっても、「そんなこともあるよね。大丈夫」と励ましてくれたり、相談すると一緒に考えてくださったり、色んな人に支えられています。
 デザインに関しては、入社前は、なんでこんなデザインなんだろうか?と疑問に思う製品もありました。しかし、入社して仕事をしてみると、設計、品質、コスト、国ごとの地域性や知的財産権など学生の時に想像していた何十倍もの制約があります。その制約の中でたくさんのお客さんに手に取ってもらえるデザインにするって難しいことなんだと、製品の見る目が変わりました。

デザイナーの仕事はハード?

仕事の範囲が広いですし、抱えてる案件数が多いときはハードなこともありますが、定時で退勤できることが思っていたよりも多いです。
入社前はデザイナーというと、定時で退勤できず、日付けが変わるまで仕事をしていたり、休日返上で働いているイメージでしたが、そのようなことは全くありませんでした。
 毎週、お休みの日は一週間分のご飯を作ったりして過ごしています。最近は、献立を筆ペンで居酒屋やカフェ風に書くということにハマっています。ペンやシャープペンは良く仕事で使いますが、筆ペンは普段からあんまり使わないため、苦手なのでもっと使ってみたいと思って始めました。なるべくお休みの日は仕事のことを考えない方がいいとは思うのですが、どうしても文具のことを考えてしまいます。
 

仕事を辛いと思ったことはありますか。

楽しくできていると思うことが多いですが、ないと言ったら嘘です。
自分は言葉や文章で表現するのが得意ではなく、どちらかというと形や色とかで表現することのほうが得意です。仕事では、どういうイメージで作ったか、想像していることを言葉で表してプレゼンしないといけません。製品コンセプトやキャッチコピーをチームで一緒に考えたりもします。そんな時に自分が思っていることをうまく言葉にできないなと悩むことがあります。大学で課題やプレゼン、仕事でもそれなりに経験を重ねていますが未だに苦手意識があります。
 

会社で活躍できる人に通じる共通点は?

何事にも積極的に前向きに取り組む人でしょうか。壁にあたったとしても、諦めずに果敢に乗り越えようと挑戦する人だと思います。
 

就活アドバイスをお願いします。

デザイナーになりたいと心の底で思っていても、違う方向へ行く人や諦めてしまう人がいます。
まずは、なぜこの大学に入ったのか、何をしたいのかを洗い出して、まずは自分が好きな会社ややりたいと思った仕事ができそうな会社を受けてみてください。熱意は相手に伝わると思います。
それと自分を追い込みすぎないようにしてください。たまには就活以外のことをするのも大切です。私はあまり就活一色にせず、ゼミにもちゃんと出ていました。ゼミに参加している時間は私にとっては良いリフレッシュになっていたんだと思います。
 

後輩へメッセージ等をお願いします。

工業大学といえば男性というイメージが強いですが、女子が居ずらい雰囲気は全く感じませんでした。デザイン工学部という特色もあるのかもしれません。浪人していますが、年齢も全然関係なく仲が良いです。なので心配せずに進学してくださいね。
 また、大学時代はさまざまなことを経験してほしいです。社会人になると時間や仕事のことを考えて諦めてしまうこともあります。コロナ禍でリアルで人との交流や現地に行って体験というのは難しいと思いますが、逆にオンラインでやりやすくなったこともあると思うので、諦めずにやってほしいと思います。きっと糧になると思います。
 
4.梅谷先輩を囲んで(中央)梅谷先輩を囲んで