目標だった15位は叶わなかったものの、昨年までの予選会の記録を更新し、関東学生連合チームでの出走も達成できました。予選会では主力2人を欠きましたが、及第点だと評価できる結果です
2027年・箱根に向かう新たな決意―駅伝部 監督/コーチ座談会―

徳本 一善 監督
法政大学社会学部卒業、順天堂大学大学院修了。日清食品グループ陸上競技部プロ契約選手(2002~2011年)、モンテローザ陸上競技部(2012年)、駿河台大学陸上競技部駅伝総監督(2012~2024年)。

山川 達也 コーチ
中京大学体育学部卒業。麗澤大学陸上競技部コーチ(2010~2016年)、同監督(2017 ~2024年)。

岡田 拓也 コーチ
法政大学経済学部卒業。流通経済大学陸上競技部駅伝ヘッドコーチ(2019~2021年)、専修大学陸上競技部コーチ(2022 ~2024年)。
本気で箱根を目指す意識改革を始点にして
2 0 2 5年10月に行われた東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)予選会では、過去最高となる18位を記録。芝浦工業大学駅伝部の新体制として1年目を終えましたが、現時点での手応えをまずはお聞かせください。
約半年間でなんとかここまでたどり着けたと、まずはホッとしたのが本音です。ただし本選出場という大目標に向けた課題が山積しているのは間違いありません
新体制になって短期間で課せられた結果を出せたというのは、2人が話したとおり。これまでのコーチ経験と比べても、このスピード感は計り知れないと感じます。
監督に就任した当時は、部員の練習への向き合い方など、あらゆる姿勢が、想像以上に未熟でした。しかしこの状態で逆に予選会23位という結果を出せていることに驚きもあった。選手の意識と実績のギャップは、ある意味でプラスに受け取れる材料でした。
選手の意識について、当初から大きな課題として捉えていたそうですが。
練習や生活面を見て、「これは位のチームだな」と感じた一方、新体制になって2週間ほどの4月に開催された5 kmのロードレースでは、23位という実績には見合わない選手を見つけることができた。しっかりと積み上げていけば面白いんじゃないか、という手応えを掴みましたね。
そうですね。私もその時に期待が芽生えたことを覚えています。一人ひとりの気持ちをどう変えられるかが、最重要課題になると思いました
取り組んだのは「君たちがここにいる目的は?」という、箱根駅伝を目指す初歩の意識づくりからです。その意識がないなら、この場所にいるのはおかしいと、明確に示しました。大きな目的を果たすためには私たちも鬼にならなくてはいけない。結果として出場できた・できなかったというのは仕方のない面もありますが、そのためにやりきったんだという評価を、選手も指導者も支援者の方々も掴めるかどうか。そのために挑戦する大切さを、今でも選手に説き続けています。
目的を明確にしなければ、そのためのプロセスは見えませんよね。
スケジュールや練習方法など、箱根駅伝出場という目的から逆算してプロジェクトは組まれています。選手も大学からの支援を受けており、その一員として果たすべき役割を当然理解してもらいます。学生であっても結果を掴んでこそ得られる環境があることを認識することが大事なのです。
監督がこういう話をし続けてくれたので、コーチとしてはその熱をいかに選手間に広げるかが大事でした。
弱音も含めた選手の言葉は、監督の前にまずコーチに届きますから。そこで1軍・2軍の偏りなく、時間をかけて伝えていく。監督も山川コーチも言葉が力強いタイプなので、私は選手をフォローすることを意識していました。
お話を聞いているとチームマネジメントとして、まずは骨格づくりに取り組んでいる工程ですね。
特別なことや複雑なことを求めている訳ではないですね。目的が何なのか、そこに向けてチームが前進するために、自分の立場で何をすべきかを理解することが必要だという話を、選手だけでなく、マネージャーやコーチ陣にも伝えています。
『文武両道』をチームカラーに掲げる
新体制での役割分担は、どのように組み立てているのでしょうか。
います。現状では1軍のメンバーに穴が空いた時、2軍の選手で埋めるには格差がある状態で、1軍を支えられるレベルに選手を押し上げることが私の役割ですね。山川:私は指導に加えて、選手の情報を監督と共有するなど、監督と選手の橋渡しを行う機会が多いです。さらに重要な役割がスカウト活動です。高校や大会への視察の中心的役割を担っていて、そこで駅伝と学業を両立できる高校生を獲得することが、チームの将来を左右する責務になっています
スカウトでも3人がそれぞれ違う人脈をもっていて、指導でも2人のコーチは私にはない素養をもっています。例えば私はトラブル処理の能力が高い一方で、山川コーチはトラブルを事前に察知する能力に長けている。岡田コーチには私がストレスを感じる業務を主に手伝ってもらっていますが、そこは法政大学の先輩と後輩という立場もありまして(笑)
徳本監督は選手指導だけでなく、大学との連携、対社会や支援者の方々も視野に入れてプロジェクト全体を前進させるゼネラルマネージャー(G M)のような役割も担っています。

そうですね。箱根駅伝に出場するチームの監督は主に、選手と向き合って指導に集中する職人気質の方と、上層部との連携などのマネジメントも手掛けるG Mタイプに分かれます。私は後者で、大学にビジョンを提示し、そこに至るプロセスを自ら構築していくスタイルは、チーム運営での強みになっています。
G Mとしての見方で、芝浦工業大学独自のチームカラーをどのように描いていくイメージでしょうか。
『文武両道』という言葉に尽きるでしょう。駅伝も学業も妥協なくやっていくんだという選手の意志を尊重した理由も、それがチームの特徴であり武器になると判断したから。競技を引退した後も、学んだ知識で社会に貢献できる人を育てていくことは、我々もブレずに取り組んで、選手がその障壁を乗り越えていく過程を、広く発信していきたい。こうしたチームカラーは、将来有望な選手を獲得する求心力にもなるはずです。山川:は
はじめは勉強を練習しない言い訳に使っていた選手もいたけれど、監督が説き続けたことで、両立の意識もだいぶ浸透してきましたね。
両立を目指すと決めたのだから、少なくとも挑戦する姿勢は見せてもらう。できないと言うならば、その先の結論は言うまでもないと。
こうした姿勢も“今まで通りじゃいけないんだ”、という選手の意識づくりです。予選会などで結果も伴ってきたことで、段々と選手の納得感も高まってきたと思います。
チーム運営としては1年目から2年目への移行も大切です。予選会という山場を越えて、弱いチームはそこで気を抜いてしまうもの。本気で箱根を目指すチームは、予選会が終わった瞬間から、1年間また積み上げていく意識をもっている。そこはまだまだチームの改善点ですね。
その予選会について、改めて結果を振り返っていかがでしょうか。
主力2人を欠いたのが、実はかなり痛かった。その結果、目標15位に対して18位ですから、層の薄さが明らかになりました。また1年目は練習よりも意識改革を重視し、そこに時間を要したことは否めません。ただし来年の予選会では確実に15位以内は掴まなくてはいけない。それが2 0 2 7年の本選出場を叶えるための必須条件だと捉えています。
4年生の内山壽頼と横尾皓が抜けた後の大きな穴を、来年度どう埋めるかも肝心です。スカウトした新入生は即戦力とはいかないまでも、前任校では獲得できなかったレベルの選手を何人か見込めています。岡田:その上で現在の13年生のレベルをさらに引き上げていきます。まだ調子のブレがある選手も多いですから、基礎固めから長期的に取り組んでいく必要がありそうです。
その上で現在の13年生のレベルをさらに引き上げていきます。まだ調子のブレがある選手も多いですから、基礎固めから長期的に取り組んでいく必要がありそうです。
本選出場のために今、成すべきことは
1年目に取り組んだチームの意識改革に加えて、本選出場に向けて、チームが補うべきポイント、そのための施策をどう考えていますか。
私は前任校の専修大学でコーチを務め、箱根駅伝に2回出場しました。伝統校や強豪校にもプレッシャーがかかる状況で、勢いを増す新興大学も登場している。本選出場のハードルは、一層厳しさを増しているのが現状です。
そこで補うべき要素として浮かぶのが、ゲームチェンジャーとなれるエースの存在。他大学のエースと渡り合うためには1万メートル27分台のタイムが求められます。私たちのチームにポテンシャルのある選手がいたとしても、現時点では「27分台を目指そう」といっても選手は現実味を感じられないでしょう。それを「自分たちでもできるんだ!」というマインドに変えていくことが必要です。
そうした練習に食らいつける選手を増やすために、部員数の拡大も不可欠です。来年度に入部する選手たちは、新体制で掲げたビジョンや指導環境を理解して入ってきますから、意欲的に練習に取り組む選手が増えてくれるはずです。
そうした環境変化に伴って、選手が自己管理をしながら、主体的にトレーニングを行えるように変わっていきたい。例えば1日10本という練習メニューに対して、7本しかできなかった選手が、練習をブラッシュアップしながら継続的に9本できるようになっていく。そうした選手が増えれば、10本を走れる選手が3人しかいない状況が、3か月後に6人に変わるかもしれない。
練習意欲や継続力、トレーニングの知識、自己管理能力が求められますが、根本的にはとてもシンプルな話です。ただしこうした取り組みができる選手とできない選手、現時点では結果にもプロセスにも顕著に差が生まれています。
個々人だけでなく、チームとしての成果を成功体験として共有し、選手の意欲に変えていく。選手が練習で何をすべきかを考えやすくするため、練習方針をシンプルに言語化することを常に意識しています。
個々人だけでなく、チームとしての成果を成功体験として共有し、選手の意欲に変えていく。選手が練習で何をすべきかを考えやすくするため、練習方針をシンプルに言語化することを常に意識しています。
箱根駅伝に初出場すると、とんでもないことになる、というのを私は前任校で体験していますから。芝浦工業大学でもその体験を、というイメージがモチベーションになっています。選手たちにもその景色をぜひ味わってもらいたい。
ただし箱根駅伝への出場は決してゴールではなく、また新たなスタートになるでしょう。出場できたらより上位を目指せるように、次はシードを獲得できるようにと、高い目標に向かっていけるチームにしたいです。
私は前任校で監督として予選会の次点を2度経験していて、絶対に次こそはという想いがあります。今はこのチームでどこまで行けるのかを楽しみながら、積み重ねてきたものを証明したいと考えています。
芝浦工業大学の方々は箱根駅伝出場に向けて大きな熱意をもって取り組んでいて、私たちもこれまでにないやりがいを感じています。大学のために、大学に関わる多くの人たちのために、という強い想いのもと、駅伝部への支援に対する感謝を、2 0 2 7年の本選出場という結果で示してみせます。
芝浦工業大学で4人目の箱根ランナー誕生!!
2 0 2 6年1月2日、日に開催された第1 0 2回東京箱根間往復大学駅伝競走(略称:箱根駅伝)で、横尾皓さん(環境システム学科4年)が関東学生連合チームで復路8区(平塚〜戸塚 ・4 k m)に出走しました。横尾さんは、1時間5分28秒(区間順位14位相当)の力走を見せて本学で4人目の箱根ランナーとなりました。沿道には教職員・学生・保護者・卒業生をはじめ、多くの大学関係者が応援に駆け付け、本学として3大会ぶりの箱根ランナーの誕生に声援を送りました。
TEL:03-5859-7070 / FAX:03-5859-7071
E-mail:koho@ow.shibaura-it.ac.jp