芝浦工業大学(東京都港区/学長 村上雅人)工学部土木工学科の稲積真哉准教授は、複数の建設関連企業と独自に産学官連携体制を整え、構造物の解体撤去後にそのまま地盤に埋設されている既存杭に起因する諸問題の解決に取り組んでおり、このたび産学官で組織する「一般社団法人日本杭抜き協会(東京都目黒区/代表理事 稲積真哉)」を設立しました。このような、既存杭ならびに既存杭の引抜きを学術的に取り扱う法人の設置は国内初の試みです。

高度経済成長期に建設された、大量の建築物やトンネル・橋などの社会基盤構造物の高齢化が今後集中的に進む中、その解体需要はますます高まっていくと予想されています。そのなかで、現在の既存杭引抜き工(撤去工)では、引抜き杭の残置、新設杭への悪影響、周辺地盤の沈下、跡地利用の障害等、施工中・施工後ともにさまざまな地盤環境問題が顕在化しています。特に、解体・撤去後の跡地利用の際、地中における産業廃棄物の残存(既存杭やコンクリート殻)は地盤環境の悪化をもたらす非常に深刻な問題であり、さらに土地売却取引等では「隠れた瑕疵」として社会問題にまで発展するケースが多く見受けられています。

このたび設立した一般社団法人日本杭抜き協会は、これまで若干軽視される傾向にあった既存杭の存在ならびに引抜き工について、それらの技術革新を目指すにとどまらず、取り組みの必要性・重要性を学術的な見地から明らかにし、各方面に向けて公表することで他の学・協会をも含む社会へ積極的に啓発する活動も合わせて実施していきます。これにより,建設技術者としての既存杭の撤去に関する倫理感を育み、その上で講習・検定制度の構築も含めたグランドデザインを創造します。

既存杭問題とは?

建物を建てる際に地盤を補強するために打つ杭。必要な作業工程として建設現場では綿密な計算のもと、打ち込まれます。 一方で建物を解体する際、その杭を抜くということに関してこれまで技術や制度に関する研究や議論がほとんどなく、抜いたとしても、次の建物を建てるために必要なところだけを抜いたり、抜く途中で折れてしまったまま埋められて更地として土地が売られた後発覚して問題になるケースが見られています。また抜いた後の注入(埋め戻し)についても何をどのように埋めるべきかという指針がないため、抜いた後の土地に地盤の沈下や建物の傾斜などが発生する危険性もあります。
また工法としても、主に、杭にワイヤーを巻き付けて重機で引き上げる方法を採っていますが、杭が折れやすいのとワイヤーが破断してしまうという危険性があります。 建築物を建てる技法・工法は数多く研究され法的な整備もされていますが、既存杭を引き抜く方法に関してはこれまでありませんでした。しかし近年、高度経済成長期に建てた建物を取り壊して同じ場所に新たに建てるケースが多くなっており、解体跡地の利用に際し、この問題が今後ますます顕在化してくることが予想されます。

適切な杭抜きの制度構築を目指して

そのような状況の中で、稲積准教授らは、まずは広くこの現状について、業界の問題だけでなく社会全体の問題として認識をしてもらうため、情報発信や勉強会の開催を行っていきます。そして、引抜き工法の基準やガイドラインの策定にも努め、講習・検定制度を確立して国家資格とし、適切な「杭の引抜き」の実施を可能とすることを目指します。

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