水素ステーションや工場などで大気中のわずかな水素濃度を検知するセンサーとして活用

芝浦工業大学(東京都港区/学長 村上雅人)応用化学科の大石知司教授は、光エネルギーを利用することで従来よりも低温環境で、水素を検知する薄膜を柔軟性がある素材に形成できる技術を開発しました。
次世代型の燃料電池自動車などに使われるエネルギー源として注目されている水素エネルギーは、環境にやさしい反面、爆発性が高くその取り扱いが難しい問題があります。安全に扱うためには、空気中の少量の水素濃度の変化を選択的かつ簡便に検知することが必要です。本技術は、光エネルギーとセンサー原料塗布膜を組み合わせることで水素感応性薄膜を柔軟性のある素材上に簡便につくることを実現するもので、これにより、たとえば水素ステーションや工場などで大気中のわずかな水素濃度を検知するセンサーとして活用することが可能になります。またこの技術は、貼付する場所や形状を選ばないフレキシブルセンサーとしてフレキシブルエレクトロニクスの分野でも活用されることが期待されます。

背景 

二酸化炭素の排出を伴わない水素エネルギーは、クリーンエネルギーとして燃料電池自動車や宇宙用途などへの広範な応用が注目されています。一方で、反応性が高いため、大気中の濃度が4%を超えると大爆発を起こす危険性があります。従来より、水素濃度はガス漏れなどの検知を行う半導体式センサーが用いられてきましたが、わずかな濃度の変化を選択的かつ簡便に検知できる方法が少ない、センサーを形成できる素材が限られていることなどが課題となっていました。

今回の成果

水素を選択的に検知する物質である酸化タングステンの原料となる溶液をつくり、基板となる有機フィルム上に印刷・塗布します。塗布した箇所に、光エネルギーを照射することで厚さサブミクロンレベルの薄膜を低温形成することができます。光エネルギーを利用し低温形成を可能としたことで、通常は加熱処理により溶けてしまう有機フィルム上にもセンサーを形成できます。また、センサー構成の工夫により高性能化を実現しました。
形成された薄膜は、水素を検知すると濃度によって薄青色から濃青色に段階的に変化し、目視でその変化を確認するとともに定量的に検知することが可能です。また水素が無くなると元の色(無色透明)に戻る可逆性も持ち、繰り返し利用できます。

今後の展開

柔軟性を持つ素材への応用を開発し、フレキシブルエレクトロニクスの更なる発展を目指す

今回の技術は、すでに大手自動車メーカーでも商品化が進んでいる水素燃料電池自動車の普及に、大きく寄与していく可能性がある技術です。水素燃料電池自動車の普及には水素スタンドが必要不可欠ですが、爆発性が高いため低濃度の状態で水素を効率良く感知する技術が必要とされています。
今回開発された技術を利用することにより、より安全に水素エネルギーを利用し、水素補填が容易にできるスタンドをより多くの場所に設置する一助にもなります。他にも、水素エネルギーを扱う工場内の水素タンクや配管に貼付することで、水素漏れを検知し、工場内の安全性を高めることへの利用も想定されます。電気自動車よりも航続距離が長いとされている水素燃料電池自動車。この技術を企業との共同研究によって進めることにより、環境にやさしい自動車への活用が今後期待されます。

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