有本 泰子 特任准教授(共通学群情報科目)が電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループ(HCG)シンポジウム2016において優秀インタラクティブ発表賞を受賞しました。

【受賞者】有本 泰子 特任准教授(共通学群情報科目)

【発表題目】クロスコーパスラベリングによる感情空間への感情カテゴリのマッピング−音声知覚および音響分析による検討−

【発表内容】
音声による感情認識などの研究では、さまざまな種類の大規模な音声データベースが必要となる。それら複数の音声データベースには、どんな感情が含まれるかを示すラベルが発話ごとに付与されている必要があるが、その感情ラベルの基準はデータベース間で互換性がなく、複数の音声データベースを併用することは困難である。

本研究では、音声から知覚される感情を、心理学の基本感情説(「喜び」や「悲しみ」などの感情カテゴリ)と感情次元説(「快—不快」や「覚醒—睡眠」などの感情次元)をベースに、その対応関係について示すとともに、感情の知覚に利用される声の音響的特徴から構成される音響特徴量空間と、感情カテゴリ・感情次元との対応関係を明らかにする。
異なる感情ラベルが付与された、一般に公開されているふたつの感情音声データベースに対し、相互に感情ラベルを付与するクロスコーパス*感情ラベリングを行った。これらのデータベースを用いて、感情カテゴリと感情次元の関係を音声知覚の観点から検証するため,感情次元で構成される感情空間上に配置される各感情カテゴリの分布の独立性を検証した。さらに、データベースに含まれる音声の音響的特徴量から、音響特徴のみで構成される次元を抽出し、それが感情ラベルとどのような関係があるかを検証した。

これらの基礎研究により得られた成果は、今後の工学的応用研究の基盤となるものである。感情という曖昧な現象を音声科学的に定義づけ、将来の研究の正解データとなるひとつの指針を見出した。この指針をベースに、研究者間で相互に利用可能な音声が伝達しうる感情の共通基盤を構築する。これにより、今まで不可能であった複数データベースの研究への使用を可能とし、音声による感情認識分野のさらなる飛躍に貢献するものである。

*コーパス・・・共通利用可能な各種・大量の音声データを収録・保管・公開し、研究・開発過程での利用および認識装置の性能評価に利用されるデータの集合を音声コーパスと呼ぶ。ここではコーパスとデータベースを同義として扱っている。