9月19日、大宮キャンパスにて、資生堂・芝浦工業大学キャリアトークイベント「だから理系は面白い」が開催されました。本年度の資生堂サイエンスグラントを受賞した堀顕子准教授と佐藤香枝日本女子大学理学部准教授をはじめ、(株)資生堂リサーチセンター主任研究員の池田智子さんら6人の企業や大学で活躍する女性たちが専門分野の面白さを語り、女性技術者・研究者の卵たちにエールを送りました。

講演者・パネリスト プロフィール

堀顕子准教授

堀 顕子 准教授
(工学部共通学群化学科目)
1997年愛媛大学理学部科学科卒。九州大学理学研究科を経て、2002年名古屋大学大学院工学研究科物質科学専攻博士後期課程修了。日本学術振興会博士研究員として東京大学に勤務し、2006年より北里大学理学部助手、助教、2015年より本学工学部共通学群化学科目准教授。専門領域は結晶工学と錯体化学、研究テーマは「動的結晶を用いた分子認識材料の開発」。
  佐藤香枝 准教授
(日本女子大学理学部物質生物科学科)
1993年日本女子大学家政学部家政理学科卒。1999年東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻博士課程修了。国立がんセンター研究所リサーチレジデント、理化学研究所基礎科学特別研究員を経て、東京大学大学院工学系研究科助手・講師、2009年より日本女子大学理学部物質生物科学科准教授。専門領域は医工学、研究テーマは「マイクロデバイスによる血管モデルの構築」。
池田智子さん 池田智子さん
(株式会社資生堂リサーチセンター主任研究員)
1992年千葉大学大学院工学研究科修了。同年4月(株)資生堂入社。製品研究所に所属となり、ファンデーション・口紅の基剤開発、粉末の表面処理に関する研究などに関わる。2010年に化粧品科学技術領域の世界大会IFSCCにおいて口頭発表応用部門で最優秀賞受賞。現在は化粧品開発センターベースメーキャップグループのタスクリーダーを務める。
有本泰子特任准教授 有本泰子 特任准教授
(工学部共通学群情報科目)
1996年青山学院大学文学部英米文学科卒。2004年東京工科大学メディア学部卒、2007年同大学大学院博士課程前期課程修了、2010年同大学大学院博士課程後期課程満期退学。科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業岡ノ谷情動情報プロジェクト研究員および理化学研究所客員研究員、東京大学大学院特任研究員を経て、2015年芝浦工業大学工学部共通学群情報科目特任准教授。専門領域は音声・表情・生理反応を利用した情動コミュニケーションの研究。
村上嘉代子准教授 村上嘉代子 准教授
(工学部共通学群英語科目)
1997年武蔵大学人文学部卒。(株)イワキに5年間勤務し、2004年Saint Michael’s College(米国バーモント州)にてMA in TESL(英語教授法)の学位取得。2004年より金沢工業大学基礎英語教育センター講師。2010年より芝浦工業大学工学部共通学群英語科目助教、2013年より准教授、現在に至る。2013年北海道大学大学院博士課程修了。現在は訪日外国人観光客の口コミ分析などの研究に従事。
秋泉碧さん 秋泉 碧さん
(日本ゼオン株式会社)
2007年芝浦工業大学工学部応用化学科卒、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻修了。化学で社会に貢献したいという思いから、化学材料メーカーである日本ゼオン株式会社に入社。現在は、自動車用タイヤのゴム開発に従事し、ポリマー設計やゴムの物性評価を行っている。
 

~第一部資生堂女性研究者サイエンスグラント講演会~

第8回受賞者の堀顕子准教授(工学部共通学群)、日本女子大学理工学部の佐藤香枝准教授、株式会社資生堂リサーチセンター主任研究員 池田智子さんが講演者として登壇しました。

「学問をつくる楽しさ」がある化学。好きな研究を続け、社会に貢献する生き方を

化学は完成された学問ではないので、ただ教わるだけではなく、自分の手で自然の理を発見できる楽しさがあります。自然は思い通りにはならない分、新しい驚きと出会える。だからおもしろいんです。受賞の対象になった研究テーマ「動的結晶場を用いた分子認識材料の開発 (色と形状を変えながら有害分子を捉える結晶の開発)」は、分子を積み木細工のように並び替え、自然界にない新たな物質を生み出す研究です。はじめにフッ素をまとった分子を作ろうと考えたとき、このような結果になるとは全く予想していませんでした。化学では、実験結果が真実なので、頭に自信がなければ手を動かす、不器用ならよく考える。その人に合った方法で研究を進めて、チームのみんなで問題を解決し、社会を豊かにできるんです。

女性のキャリアの築き方について、最近のテレビドラマで、「子どものために」と頑張って仕事をしている女性たちが描かれていました。でも私が思うのは、まずあなた自身が楽しく学んで、社会に貢献する生き方を目指してみてはいかがでしょうか?ということ。そのためには、地道に20代から積み重ねていくことが重要です。(堀顕子准教授)

自分だけが知っている、誰も見たことのない世界を発見できる喜び

私のいる日本女子大学は日本で一番古い女子大学で、女子大で唯一理学部があります。第1回卒業生である丹下ウメさんは、日本ではじめて女子大生を受け入れた東北帝国大学の第1期生でもあり、入学したときは43歳でした。このことからもいつまでも向学心に溢れた方だったことがわかりますね。私は同大学理学科を卒業した後は、中学校の理科教師として働いていたんです。教師の仕事は好きだったのですが、研究しているときの「自分だけが知ってる、誰も見たことのない世界がある」という感覚が忘れられなくて、大学院で研究生活に戻りました。

その後は国立がんセンターや東大工学部で医療ナノテクノロジー分野の研究をし、今回受賞したテーマは「医療用マイクロデバイス」です。これは、切手サイズのマイクロデバイス内に生体内の血管のモデルを構築するもので、将来的には未解明だった生命の仕組みも明らかになるかもしれず、難治性疾患解明に応用していきたいと考えています。自分の論文が世界中の人に読まれていたり、世界とのつながりを感じられるところも大きなやりがいのひとつとなっています。(佐藤香枝日本女子大学理学部准教授)

失敗は成功のきっかけ。 「私にしかできない仕事」で、女性たちを笑顔に

私が千葉大学に入学した20年前は、化学科に女子学生が5人しかいないような時代でした。大学院修了後は、身近な商品を開発したくて、小さい頃から母の鏡台で見て親しんでいた資生堂へ。化粧品業界で世界で5本の指に入るグローバル企業であったこともポイントでした。資生堂初のO/W固形乳化ファンデーションを開発したときは、失敗の連続でしたが、経験がない分できないという先入観がなく、失敗を逆手にとって得られた成果は「オプチューン ウォーターインパクト」として商品化されました。失敗は成功のきっかけに過ぎないので、学生のみなさんも恐れずに失敗してほしいです。

「落ちない口紅」を開発したときも失敗続きで、転機は実験室の隅にあった誰も見向きもしない原料を使ってみたこと。堀先生のお話にもありましたが、「手を動かすこと」は本当に大切です。煮詰まったときは特にですね。マキアージュの落ちない口紅第1弾が発売されて以降、この技術の進化版が新製品として活用されています。資生堂で使われ続ける技術を開発できたことは、私の大きな自信となっています。(資生堂リサーチセンター主任研究員 池田智子さん)

~第二部 パネルディスカッション・理工系技術者・研究者として伸びていくために~

応用化学科の卒業生であり、日本ゼオン株式会社エラストマー研究所研究員の秋泉 碧さん、有本泰子准教授(工学部共通学群)、村上嘉代子准教授(工学部共通学群)が加わり、パネルディスカッションを行いました。

楽しく働ける仕事を見つけるには

佐藤さん「白衣を着て働いて、お客様に直接届けられる身近なものを開発したかったのが入社理由です。新しい発見があり、私にしかできない仕事で世界を変えることができる。実際に使って喜んでいただいている声を聞けるので、やりがいになっています」

村上先生「学生時代にいまの自分はまったく想像が付きませんでした。大学卒業後はイワキというメガネ会社で5年働いていましたが、英語教師の夢を叶えたくアメリカにあるSaint Michael’s Collegeに留学しました。そこから金沢工業大学で英語を教えることになり、産学地域連携に携わった関係で芝浦工大に。最初は思った通りじゃなくても、ずっと思い続けていると軌道修正ができるようになります。自分のなりたい将来の青写真が明確に描けると、その方向に人生も動いていくと思いますよ」

学生時代にどのような力を身に付けておくべきか

有本先生「勉強の仕方を勉強しておくこと。私は英語を専攻していましたが、それだけでは食べていけるかわからない時代だと思い、プラスアルファの技術を身に付けたくて理工系に進路変更したんです。長い人生、きっとどこかで転機があります。応用の利く技術として、勉強の仕方をしっかりと身に付けることが力になります」

堀先生「打たれ強くなってほしいです。今日ここに並んでいる女性たちも、紆余曲折の人生を歩んできたわけです。くじけずにガンガン失敗してください。あと、愚痴など何でも話せる友達を作っておくこと。つらいときはそれがずっと続くと思いがちですが、いつか必ず終わるんです。悩みを話して発散できる友達がいることは大きな支えとなります」

秋泉さん「学生時代は、芝浦会(ダンスサークル)とギターアンサンブル部に入部していて、とても視野が広がりました。何事にも興味を持って、フットワークを軽くしてほしいですね」

女性が研究者として働き、ワークライフバランスを実現するには?

池田さん「資生堂は育休が子ども1人につき3年取れ、事業所内に保育所もあり、時短勤務が選べるなど女性が働きやすい環境が整っています。結婚や出産後も仕事を続ける先輩も多く恵まれた環境ですが、企業として成果とスピードのふたつを求められます。そのため、短時間で凝縮し取捨選択を早くする判断力が必要です。

女性用の化粧品開発について、実際に製品を使っていない男性の上司を納得させるには、自分から積極的に動いていくことも大切。粉末の表面処理開発を行ったときは、上司の承認を得られなかったので、自分で調査会社に依頼して100人にアンケートを取りました。
そこで良い結果が得られたため商品化され、化粧品ランキングサイトのアットコスメで1位に。開発した粉末は現在、資生堂のほぼすべてのパウダリーファンデーションに配合されています。子どもを預けて働くなら、私にしかできないテーマで仕事をすると決めて取り組んでいて、私の強みにもなっています」

行き詰まったときに、モチベーションを保ち続けるには?

池田さん「研究はひとりでするイメージがありますが、孤独でいると深みにはまることも。チームで相談した方が多様な意見が出て、考えが広がります。実際、コミュニケーション能力の高い人の方が成果が出ている傾向がありますね」

村上先生「完璧主義は身を滅ぼすので、『こうでなきゃならない』と思いすぎないこと。だめなところがあっても今の自分を認めることも大事です」

秋泉さん「『何のため?』を考えることです。大学時代にひとり旅が好きでインドやラオスを巡ったときに、化学で生活をより良く変えられないかと思いました。そのときの感情をしっかり思い返すようにしています。あと、化学を志したきっかけは高校生のときに読んだフラーレンの新聞記事。いまでもその記事は手もとにあるので、読み返しては高校生のときのキラキラした自分を思い出しています(笑)」

閉会のあいさつで村上学長は「本当に楽しく話を聞いていました。これは、話している先生方がいきいきと楽しそうで、心から仕事が好きだということが伝わるからだと思います。芝浦工大の学生に入学の理由を聞いても、『理工学が好きだから。一生の仕事にしたいと思っている』と皆さん答えますね。これから苦しいときもあるとは思うけれど、将来に希望を持って楽しく学んでほしいです」と、イベント全体の感想を話しました。

メモをとりながら熱心に話を聞く学生の姿が目立ち、イベント終了後もパネリストに質問に行く学生の列が出来るほどでした。女子学生はもちろん、すべての学生と卒業生に対して、自らの特性を生かして「楽しんで働き続けること」の大切さと「何のために働くか」という本質的かつ示唆に富んだ言葉が行き交う場となりました。

お問い合わせ先

芝浦工業大学
男女共同参画推進室

〒337-8570 埼玉県さいたま市見沼区深作307(大宮キャンパス)

E-mail:desk-gequality@ow.shibaura-it.ac.jp