応用化学科の吉見靖男教授は、血液中の薬剤濃度を適切に測定するための新たなモニタリング方法の基本技術を確立しました。

通常、薬剤の効力は一定の血中濃度にまで達するまで現れません。一方で、薬剤の血中濃度がある値を超えると副作用が起こりやすくなります。
したがって、必要とされている血中濃度に達しているか、もしくは過剰投与されていないかを確認するために「治療用モニタリング」が重要となります。しかし、高度な分析技術や装置を必要とするなど、簡便かつ速やかに測定できる技術が確立されていないという状況にあります。
医療工学を専門とする吉見教授は、分子インプリンティング技術を応用し試料(例えば血液)に含まれる薬剤濃度を簡単にモニタリングする基本技術を開発しました。この技術が実用化に至れば熟練した技術を用いなくても、誰でも簡単かつ速やかに血中濃度を測定でき、適切に薬剤を使用することができます。
現在、抗血液凝固薬のヘパリンで測定できることを確認しており、今後はセンサの実用化に向けて改良を進めていきます。(本研究は、科学技術振興機構研究成果最適展開支援プログラム(JST A-STEP)シーズ顕在化タイプの助成を受けて行ったものです。)なお、本技術は他の薬剤にも適用でき、生体リズムに関与するセロトニン、抗菌薬のバンコマイシンについても効果を確認しています。

治療薬モニタリングの必要性

臨床で用いられる薬剤にはそれぞれ固有の用法・用量が定められています。しかしながら、同じ量を投与しても代謝の速さが違うなど患者によって薬剤の効果の発揮度合いや速さが異なります。
そのため医療現場では、個人差を考慮しつつ適切に投与方法・投与量の管理するため血中の薬剤濃度を監視する「治療薬モニタリング」が求められていますが、血液採取後、抗体を加えて免疫反応を見るなど従来の方法は、煩雑な操作が必要とされるために、医療スタッフや患者に多大な負担をかけるという問題がありました。

開発したモニタリングセンサの特徴

吉見教授は、測定対象となる薬剤の分子の形を記憶させ、さらに電子の受け渡しをする分子も埋め込んだ新しい分子インプリント高分子(MIP)を作成しました。そこに薬剤がパズルのピースのように入り込むことで電流が通りやすい経路を確立し、ここで得られた電流から薬剤濃度を把握することを可能としました。

今後、これをセンサとして実用化することができれば、一般的な分析法で必要となる煩雑な操作を必要とせず、温度計のようにセンサを血液検体に差し込むだけで、薬剤濃度が測定できます。また、センサを針状にして体に刺したままにすれば、薬剤濃度を常にモニタリングできる可能性もあります。今後は測定可能な薬剤を広げていくとともに、企業と連携し、センサの実用化に向けて改良を重ねていきます。

血液中の薬剤濃度測定のイメージ図

(1)薬剤分子の形をMIPに記憶させる
(1)薬剤分子の形をMIPに記憶させる
(2)MIPが薬剤分子をキャッチし電流の通り道を作る
(2)MIPが薬剤分子をキャッチし電流の通り道を作る
(3)その電流を測定することで薬剤濃度を得る
(3)その電流を測定することで薬剤濃度を得る

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