応用化学科の野村幹弘教授は、酸を含む水溶液を分離することのできる世界最高水準の処理能力を持つシリカ逆浸透膜を開発しました。

現在、海水の淡水化・高純度の工業用水の生産などに利用されている「逆浸透法」に用いる分離膜は、酸などの腐食性の強い液体の分離に対しては、性能を保つことができません。今回、野村教授が開発した分離膜は耐酸性であり、過酷な分離系への適用が可能となります。

一例として、化学工業製品の重要な原料の一つである酢酸の分離工程では、水と酢酸を蒸発させることにより膨大なエネルギーを要していますが、この工程上に逆浸透膜を利用した酸の分離膜を導入することで、大幅なエネルギー・コスト削減の実現が可能となります。また、ほかにも重金属を含む廃液処理用の分離膜などの応用も検討できるなど、あらたな分離技術の一手法として広く活用されることが期待できます。
野村教授は、本技術で特許を出願中であり、今後は耐酸性のさらなる向上をめざしていきます。

▼透水試験装置。金属部分が膜モジュールで、この中に分離膜が入っている。
  分離膜の全長:9cm 直径:3mm、モジュールの全長:6cm

金属膜モジュール部分
金属膜モジュール部分
透水液をガラスビンにサンプリングしている様子
透水液をガラスビンにサンプリングしている様子

これまで無機系の逆浸透膜は、ゼオライトやシリカを用いたものが開発されてきましたが、塩化ナトリウムやエタノールなど中性水溶液の分離についての報告しかされていませんでした。今回、野村教授は、フェニル基をもつ原料(ジフェニルジメトキシシラン)を約300℃で蒸発させ、化学反応によって均一の薄い膜をつくる化学蒸着法という新規の方法で、酸分離用シリカ逆浸透膜の作製に成功。原料に有機物であるフェニル基を導入したことで、細孔径の制御を行い効率的な分離を可能としました。また今回開発した膜は、酸阻止率※192%、全透過流束※2 5.7 kg m-2 h-1という、世界最高水準の処理能力を示すものとなりました。

※1酸阻止率…100%は、酸水溶液より水のみ透過している状態 ※2全透過流束…膜を透過する水量の指標

世界で生産量500万トンにものぼり、石油化学コンビナートの重要な中間生成物の一つである酢酸の製造工程においては、酢酸水溶液中にある大量の水から、酢酸のみを分離する必要があります。現在は水を蒸発させることで酢酸を分離していますが、水の蒸発熱は非常に高く、膨大なエネルギーを消費しています。

そのため、今回野村教授が開発した逆浸透分離を導入し、酢酸水溶液から水を蒸発させずに分離することができれば、酢酸の製造プロセスを根本より覆すことができ、大幅なエネルギー・コストの削減が期待できます。今後は、膜の土台となるセラミックや中間層の耐酸性をさらに向上させることをめざし、石油精製の大幅効率化をはじめ、安全な処理が求められる重金属を含む廃液処理用の分離膜などでの実用化をめざしていきます。

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