2021年度事業計画

2021年度 学校法人芝浦工業大学 事業計画

学校法人 芝浦工業大学
理事長 鈴見 健夫

はじめに

 世界規模での大変革期を迎えた今、学校法人芝浦工業大学は、将来にわたり我が国の持続的発展を担う理工学系人材の育成を責務として、設置校を代表する芝浦工業大学を中心に学生・生徒のための学校経営を堅持し、建学の精神に基づく教育研究活動の展開に努めます。とりわけ、創立100周年を迎える2027年には『我が国の理工学系私学としてトップの社会的評価を得る』という中長期目標の実現をめざし、教職員一丸となり、全力で取り組む所存です。
 創立100周年を見据えた重点施策テーマは、改革路線の継続による組織運営体制の見直し・強化、学校法人の発展を持続可能とする盤石な財政基盤の確立、SGU事業の推進による教育研究改革及び学生支援、豊洲第二校舎建設諸作業の完遂、更に2019年度から本格始動した駅伝プロジェクトの推進などであり、これらの実現に向け経営資源の戦略的な選択と集中を進めます。
 昨年来、感染拡大に猛威を振るう新型コロナウイルス対応においては、学生・生徒の健康を最優先として、キャンパスライフに不安・不利益が生じないよう万全な対策を講じ、安全かつ充実した教育環境の提供に努めます。また、教職員においても時差出勤やテレワーク等の導入を促進し、安心して業務に専念できる体制を推進します。

2021年度 事業計画

1.  改革路線の継続

 理事会は、2021年度もこれまでに続き改革路線を継続し、創立100周年に向け新しい価値創造のための経営イノベーションに取り組みます。
 熾烈な大学間競争に勝ち抜き各種の目標を実現するには、迅速な意思決定と他大学に負けないスピードで改革を実行することが必須であり、それには教職員の意識改革が不可欠です。このため、事務職員の人事給与制度を、2017年4月から職能資格制度から職務資格制度に改め、人事評価結果を処遇に反映させる仕組みとしました。運用 3 年目が過ぎ、より公正な納得性ある制度とするため、2020年11月に全事務職員にエンゲージメント調査を実施した結果を踏まえ、課題を整理し、さらなる改定の検討を進めていきます。
 教育職員についても、教育職員人事評価制度検討準備委員会の答申を経て、これを具体化する専門委員会を設置し、制度設計に着手しています。FDSD活動を通じた教職員の能力向上とともに、人事給与制度の整備とその適切な運用を図り、組織の活性化を進めます。
 更に、2020年4月1日から働き方改革関連法が順次施行されたことに伴い、法令遵守と全教職員の働きやすい環境づくりをめざしています。2021年4月には附属・併設校教諭について、1年単位の変形労働制を導入します。また、人事関連の基幹システム刷新により業務効率化を図るとともに、時代に即応した重点分野への人材の集中配分を実現し、withコロナ、afterコロナの状況であっても迅速な意思決定とスピードある改革を実現すべく取り組んでいきます。

2.  盤石な財務基盤の確立


 学校法人が持続的に発展するためには盤石な財務基盤を維持し続けることが不可欠です。そのため、2021年度も経常収支差額比率10%の達成を目指した財政運営を行う事で、戦略事業に対する積極的な投資と将来の投資に備えた内部留保の充実の両立に努めます。未だコロナ禍による先行きの見通しが不透明な中、ICTを活用した教育環境の一層の整備を進めるほか、家計支持者やアルバイト収入の減少に直面している学生に対する経済的支援策を継続します。また、現在豊洲キャンパスで建設している第2校舎の竣工後を見据え、他キャンパスでの将来の大型施設整備に備えて第2号基本金への新たな組入を開始します。
 一方、寄付金収入の拡大に向けた取り組みを継続し、潜在的な寄付者に対する情報発信策や寄付者に対する返礼制度などの見直しを実施し、学校法人としての収入の多様化の実現を目指します。

3. 教育研究改革


 芝浦工業大学は『社会に学び、社会に貢献する技術者の育成』を建学の精神として設立され、有為な人材を社会に送り出すことで高い評価を得ています。その考えを現代に敷衍した『世界に学び、世界に貢献するグローバル理工学人材の育成』を教育目標とし、2027年の創立100周年にも輝き続ける大学としての地位を維持し、更に前進するため、学長のもと全学的な教職学協働による大学改革を展開しています。これらの活動と国際交流活動の確かな実績が評価され、2014年9月に文部科学省よりスーパーグローバル大学創成支援事業に選定されました。芝浦工業大学が目指すグローバル大学とは、世界水準の工学教育を教職学協働で進めることです。事業の終了年度である2024年3月までにこの目標の完遂を目指します。
 これまでと同様、教育面では「学生に何を教えたか」ではなく「学生が大学の教育で何を学んだか」すなわち学修成果を大切にします。学生視線に立つ世界水準の教育をめざし、学生が主体的に学習に取り組めるアクティブ・ラーニングの推進を図ります。その一環として、2014年度から2019年度に渡る文部科学省の教育再生加速プログラム(AP)の支援を受け,「アクティブ・ラーニングの推進」と「学修成果の可視化」に取り組み,「S」評価を得ることができました。今後は、この成果のさらなる発展を目指し,学生の学習状況の電子的な把握を通じて,より効果的な教育方法を開発・実践するデジタルトランスフォーメンションを推進します。
 研究力強化も重要な課題です。教員は研究を通じ自らを磨き、学生のよき見本とならなければなりません。世界の理工系大学では、先端研究の場で学生を鍛えることが常識です。既に豊洲キャンパスならびに大宮キャンパスに最先端研究設備を備えた共通機器センター(テクノプラザ)を開設し、研究活動の活性化を行ってきました。豊洲キャンパス第二校舎の竣工に併せて共通機器センターの拡充を予定しています。組織的な研究支援体制も構築し、教員の外部研究資金の積極的な獲得を推奨します。世界大学ランキングを意識した論文件数の増加と、世界をリードできる研究分野の構築を進めます。更に大学は地域とともに発展すべきという考えのもと、地域との連携研究も推進し、これらを総合し研究力の高い大学をめざします。
 スーパーグローバル大学として、外国人教員の戦略的採用、教職学協働による国際化とダイバーシティ(多様性の受容)の推進に積極的に取り組みます。2020年10月には、留学生増をめざし、英語のみで学位を取得できる先進国際課程を工学部に設置しました。システム理工学部に設置されている海外留学を必修とする国際プログラムと併せて、先進国際課程の全学部への展開を進めます。
 ダイバーシティには男女共同参画推進も含みます。女性がいきいきと活躍できる理工系大学の実現に向けて女性教職員及び女子学生を増やし、女性の活用を積極的に進め、より一層女性が輝くことのできる理工系大学をめざします。

4.  学生募集とキャリア教育


 大学及び附属・併設校の入試において、いずれも安定的に志願者を獲得しています。2021年度入試は、コロナ禍の影響により、受験生の「進学機会の確保」や「進路への安心感」をあたえるため、特別入試・推薦入試において入学者選抜日の増加やオンラインによる入試を実施しました。文部科学省の高大接続改革の動向をふまえ、総合的・多面的な入試のためのルーブリックを選抜評価方法として整備するとともに、すべての特別入試において英語外部試験を出願資格として課し、学生募集におけるグローバル化、ダイバーシティの推進・拡充に取り組みます。
 女子学生・生徒の拡充において、附属中学高等学校では2017年度に高校を共学化し、2021年度からは中学の共学化も進め、中高共に共学が実現します。大学においても、女子向けの推薦制度を設けましたが更なる女子学生の拡充を目標として、女子生徒に向けたPR、募集活動の強化等を図ります。
 芝浦工業大学は「就職に強い大学」との社会的評価を得ており、就職率は毎年極めて高い水準にあります。個々の学生の真に「納得できる就職」の実現に重きを置きつつ、就職率の高さと同時に就職先の質の高さも重視し、学生の性格・特性を把握のうえ本人の希望も踏まえたキャリア教育を展開することで、有名企業への就職実績も上位にランクされています。引き続き、完備された就職支援システム(オンライン環境を含む)により、学生の就職力向上のための指導に努めます。さらに、就職内定が得られさえすればよいという安易な姿勢を排し、将来に向け継続的に取り組みたいことを明確に意識させ、より高い目標を設定し志望企業にチャレンジする強い気持ちが持てるよう指導します。また、日本企業への就職を希望する留学生に対する支援にも力を入れていきます。芝浦工業大学校友会、同後援会との連携も強固なものとし、学生の就職力向上、質の高い就職実現に向け協力体制を維持強化します。

5. 学生支援の充実強化


 芝浦工業大学校友会、同後援会との連携による就職支援、課外活動支援や留学生を対象としたインターンシップなどの各種イベントを継続実施し、学生満足度調査アンケート結果をふまえた組織的な学生支援の充実強化などに努めます。また、スーパーグローバル大学として学生の海外留学への財政面を含む積極的な支援、TOEICスコアの向上による学生の英語力強化支援などを継続していきます。その他、SIT賞や課外活動奨励金、学生プロジェクトなど学生の課外活動に関する支援にも引き続き注力します。さらに、東京近郊における学生の居住環境を向上するための施策を検討します。

6. 中高大連携強化と理系女子の育成


(芝浦工業大学附属中学高等学校)
 2017年度の高校入学生に続き、2021年度からは中学校にも女子を受け入れ、中高共学化となります。その中学では大胆なカリキュラム改革を行います。通常の数学と英語の授業時間数を削減し、グローバルとITをベースとした探求授業を行います。また自律学習を促すための時間を設け、生徒の学習態度を「教わる・習う」から、「考える・学ぶ」へと変化させるような取り組みをすることで、成長を加速させます。
 また高校では、グローバルクラスの設置に向けた準備と芝浦工業大学の学科選択のためのレポート作成など、附属校にふさわしい学びを経た生徒を大学に推薦するための改革を行います。

(芝浦工業大学柏中学高等学校)
 柏中学高等学校が、2018年度に文部科学省スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に再度指定されたことを機に、これまで以上に大学との間で実施する中高大連携活動を推進します。現下のコロナ禍の状況で、ICTを駆使しながら、例えば大学主催のオンラインによる国際PBLやシンポジウムに積極的に参加し、また大学・大学院の学生などをTAとした課題探究活動やワークショップを、これまで以上にオンライン開催することを大学と連携して企画します。さらに柏中学高等学校は、芝浦工業大学の海外協定校であるベトナムFPT大学、その付属高校と2020年度はオンライン交流の機会を持ちましたが、これを足場として、相互交流を一層推進します。
 理系女子の育成については、芝浦工業大学・大学院の女子学生の協力、または社会で活躍する女性を講師に迎え、オンラインによる「リケジョ・カフェ」を開催し、中学3年生から高校生にいたる女子のキャリア教育を充実させます。

7. キャンパスや諸設備の整備


 創立100周年事業として豊洲キャンパス第二校舎建設は2019年11月に着工し、2022年度の開校に向けて工事は順調に進捗しています。あわせて豊洲キャンパス全体の利活用検討も進めます。
 開校55年を迎える大宮キャンパスでは、新たなグランドデザイン計画作成と実現に向けたロードマップの策定を行います。更に、芝浦工業大学柏中学高等学校の施設設備将来計画の検討を引き続き行います。その他、上記全体の利活用計画にあわせて、研究・教育のさらなる充実に資するべく、施設設備の整備や、老朽化した設備の更新、化学物質含む危険物などの安全管理を徹底します。また、国際学生寮や東大宮学生寮はニーズが高く、学生の生活支援のため、新たな寮の検討を継続して行います。100周年記念事業である駅伝プロジェクトの環境整備に向けて、大宮キャンパスの遊休地を活用したアスリート寮の設置に取り組みます。

8. 附属・併設学校の強化


 厳しい私立中高競争の中で選ばれる学校となるためには、学校の個性化が必要です。附属中学高等学校にはSTEAM(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics)教育と大学との接続、柏中学高等学校はSSHの実践と高い進学実績という強みがあります。両校ともこの特長をさらに強化するとともに、オンラインと対面を融合した「新しい学び方」を研究・推進し、生徒の高校学習指導要領の改訂など、日本全体の大きな教育改革に対応すべく努力します。
 附属中高では中学女子の受け入れに伴って女子トイレの増設を行い、設備環境面でも共学化をサポートします。柏中高では、教育界の急速なICT化に対応するため、教育ICT設備(Wi-Fi環境の強化など)の整備を引き続き進め、私学として魅力ある教育環境の充実を行います。
 また、教員の働き方改革を進め、働く環境や待遇の改善を行います。教員募集の点でも競争力のある、魅力ある職場づくりを行います。

9. リスクマネジメント体制の強化


 学校法人芝浦工業大学は、2011年3月に発生した東日本大震災の直後に、主に大地震などの自然災害に対する備えと、災害発生後における復旧・復興計画立案のために「危機管理室」を設置しました。以降、危機管理室では「災害危機管理基本計画書」(防火・防災業務の総合的かつ計画的な推進を目的とする)の策定、及び本法人設置各学校における「災害対策本部運営要領」(大地震等災害発生時の対応)などの策定を行ってきました。また2019年度には、リスクマネジメントにおける大きな目標であった本法人「事業継続計画(BCP)」をとりまとめ、具体的運用に至っています。
 2020年から感染拡大を続ける新型コロナウイルスへの対応においては、前年度末から感染者発生の際の連絡体制、構内の消毒措置、教育研究の休止・開始判断などの対応措置について、関係機関と協働で綿密なシミュレーションを行い、陽性者が発生しても円滑な対応を取ることができました。2021年度は、これまで積み重ねてきたノウハウ・経験に基づき、本法人としての感染症対策をマニュアルとして整備し、今後のパンデミック等に備えます。
 他方、2019年度までに整備した大地震に備えての「災害危機管理基本計画書」および「事業継続計画(BCP)」など災害対策の根幹となる計画書が作成から2年が経過しましたが、2021年度はこれらの見直しを図り、防災・減災・復旧に関して現実的かつ実効あるマネジメント体制を検討・整備していきます。

10. 地域貢献・社会貢献


 これまで進めてきた地域や自治体と連携した教育・研究・社会貢献を一層進め、地域社会、また産学官連携の中核的存在としての大学の機能を果たします。特に2021年度は、延期となっている東京オリンピック・パラリンピックの成功に向け、学校法人芝浦工業大学として設置した五輪連携委員会を中心に、関係機関との協力連携を図ります。
 また大学における公開講座は、大学の第3の機能である「社会貢献」・「地域貢献」の役割を担っています。大学が持てる専門知識を広く社会・地域に発信する「知の解放」は大学の使命であり、幅広い年代層を対象に「本学らしさ」を強調した公開講座を積極的に開講します。特に子ども向け講座については、2019年度でロボットセミナーの事業が終了したことにより、子どもの「ものづくり」に対する興味・感心をそそる講座を開発し拡充を図ります。またこれに加えて、国が推進する社会人のためのリカレント教育については、教務部門と協働して取り組むとともに、SDGsの各目標を意識した公開講座を地域社会に向けて実施します。


以上