4割の車両が導入で 渋滞所要時間が10%減少

高速道路の登り坂で渋滞が発生するポイント
高速道路の登り坂で渋滞が発生するポイント

芝浦工業大学(東京都港区/学長 村上雅人)情報通信工学科の森野博章准教授は、アナログテレビで使用されていた700MHz帯の周波数を用いた車々間通信による自然渋滞解消支援手法を提案し、サグ部(緩やかな下り坂のあとに緩やかな上り坂が続く、自然渋滞頻発箇所)での平均走行速度が約10%向上することを明らかにしました。

渋滞を早期解消するアプローチとして、「渋滞吸収運転」と呼ばれる、後続車両が速度を落として渋滞車群への到着を遅らせる方法が盛んに議論されてきました。そのためには渋滞を検出してリアルタイムにドライバーへ適切な速度制限を促すことが重要です。そこで森野准教授の研究では、700MHz帯の周波数を利用した通信距離が最大1,000m程度の車々間通信により車両間で情報交換を行い渋滞の解消を支援する手法を提案しています。

  • FM多重放送等を用いる既存の方法よりも短い遅延で渋滞情報を各車両に伝搬し、速度制御を早期に開始
  • アナログテレビで使用されていた、通信距離が最大1,000mと長く障害物に強い700MHz帯の周波数を使用
  • 東北自動車道矢板IC付近で実際に測定された渋滞発生時の車両走行データを使用した交通流シミュレーションの結果、全ての車両が車々間通信可能な車載器を搭載していなくても全体の4割の車両が搭載していれば、サグ部での平均走行速度が約10%向上することを確認

背景

渋滞原因の50%以上が「交通集中」とされる高速道路において、その多くがサグ部や上り坂での無意識な速度低下などによるものです。渋滞を早期に解消する運転手法として、“スローインファストアウト”(渋滞車群先頭車両は速やかに速度回復をし、後続の車両も追従するファストアウト、渋滞車群より後方の車両は走行速度を低下させて到着させるスローイン)の考え方があります。特に後者のスローインという考え方は「渋滞吸収運転」と呼ばれ盛んに議論されてきましたが、各ドライバーが実際に今どのような運転をすれば良いか判断し、実行することは難しいとされます。
そこで、渋滞発生を検知し迅速に各ドライバーへ渋滞解消運転を促す方法として、これまで主に出会い頭の衝突危険検知や隊列走行などの用途で検討されてきた、車々間通信を用いた手法を提案しました。

渋滞解消支援手法

700MHz帯で動作する無線通信方式ARIB T-109を用いた車々間通信で、送信電力を変化させて伝搬距離の短い通信(100m程度)と伝搬距離の長い通信(最大約1,000m)の2つのモードを切り替えます。各車両は短距離通信モードを用いて定期的に自車の速度や位置情報を周囲の車両と交換。自車の低速走行状態が一定時間以上継続し、かつ前方に車両がいる場合、渋滞の初期状態であると判断して長距離通信モードにてこの情報を後方に送信します。情報を受信した後方車両は、走行速度が予め決められた値(例えば70km/h程度)より高ければ一定の減速度で減速するよう、ドライバーに促します。
東北自動車道矢板IC付近で渋滞が発生した日時に測定された車両速度および時刻のデータを用いて、汎用シミュレータScenarigeにて性能評価を行ったところ、車々間通信可能な車載器を搭載した車両が全体の20~40%と低い場合でも、サグ部所要時間を約5~10%減少させることが明らかになりました。

今後の課題

今回の研究では人が運転する車両への適用を前提として性能評価を行いましたが、各方面で研究開発が盛んに進められている自動運転に本方式を組み込むことも可能です。今後は人が運転する車両と自動運転車両が同じ道路に混在する状況で本方式が作用することをシミュレーションにて確認するとともに、各機関と連携して実証実験による検証と実用化を目指します。

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