岩田 順敬 非常勤講師が日本原子力学会 計算科学技術部会で奨励賞を受賞しました。

【受賞者】岩田 順敬 非常勤講師(工学部 共通学群 数学科目)
【受賞題目】 時間依存密度汎関数法による核分裂ダイナミクスの微視的研究

有限個数からなる量子多体系がどのように分裂するかについては、理論的な扱いが難しく、いまだに量子力学的な効果まで考慮したうえでの十分な理解が得られていない。特に原子核(有限個数からなる量子多体系の例)がどのように分裂するのかということについては、核分裂がなぜ起こるかということ自体が化学元素(水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム等)同位体の不安定性に起因していることから、
1) 鉄より重い元素はどのようにして形成されたのか(重い元素はなぜ存在するのか)
2)宇宙がなぜ現在のような元素組成をとるようになったのか(宇宙はどのように進化してきたのか)
3) 元素の周期表はどこまで続くのか(113番元素は日本の理化学研究所で合成されました)
といった未解決の問題と直接的に関係している。また、核分裂機構の解明に関する研究は、こういった科学的な問題にとどまらず、原子炉の廃炉問題など、工学的にも必要性・有用性の高い研究課題である。

そこで、核分裂を量子力学に基づいた微視的理論によって研究した。近年著しく進展したスーパーコンピュータ技術を活用して、236個におよぶ陽子や中性子の運動(236本におよぶ連立偏微分方程式)を計算し、核分裂機構を研究するための一連の方法論を提案した。その運動の様子を調べて、全体として原子核が、どういった状況のもとで、どのような分裂片に分裂するのかということを明らかにし、核分裂機構に関する理論的知見を与えた。

今後は宇宙構造の解明という意味での科学研究と、長寿命放射性原子核の処理(無害化)という意味での工学研究の双方に役立ていてくための基礎研究を展開していく。核分裂機構の解明を扱った本研究は、応用の観点からの有用性を兼ね備えながらも、物質世界の構成要素である化学元素の素性(安定性)を明らかにし、それらをまとめた“元素の周期表”(より詳細なものとして“核図表”や“核データライブラリ”)を完成されるという意味での人類にとっての究極の未完事業の一つを推進していくことに貢献し得る。